FXの自動売買(システムトレード)って儲かるの?

FX会社では最近、自動売買(システムトレード)機能を提供できることを売りにするところが増えています。自動売買(システムトレード)なら、感情に左右されず、自動的に売買ができるとも言われます。また、昼間働いているときや夜寝ている間でもチャンスを逃がさないともされます。

実際に、自動売買(システムトレード)とはどのようなものなのでしょうか。また、自動売買(システムトレード)を利用して儲けることができるのでしょうか。ここでは基本的なところから解説します。

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目次

1 自動売買(システムトレード)とは
2 自動売買とシステムトレードの違い
3 コンピュータの登場でシステムトレードが進化
4 FX取引が個人投資家に解禁されたときからシステムトレードはあった
5 「MT(メタトレーダー)」の登場で、システムトレードの利用が広がる
6 MT4活用のポイントは「EA(自動売買プログラム)」
7 「選ぶだけ」でシステムトレードができる「ミラートレーダー」
8 「ミラートレーダー」の登場で、システムトレードの普及が進む
9 大きなドローダウンや非公開性が敬遠され、システムトレードが下火に
10 「リピート系発注機能」の先駆けとなったマネースクウェア・ジャパンの「トラリピ」
11 2013年ごろからFX会社で相次いで「リピート系発注機能」に参入
12 システムトレードの活用で注意すべきポイント
13 まとめ/システムトレードは万能ではない

1 自動売買(システムトレード)とは

「自動売買(システムトレード)は儲かるのか?」という問いに答える前に、まず「自動売買(システムトレード)とは何か」という定義から考えてみましょう。

自動売買(システムトレード)を紹介する書籍やサイトなどでは、「自動売買(システムトレード)とは、コンピュータがソフトウエアなどを使って注文や決済を自動的に行うトレード」などと定義されていることがあります。自動売買(システムトレード)に対して、人間が自分の判断で売買を行うことを「裁量トレード」と呼ぶこともあります。

2 自動売買とシステムトレードの違い

ところで、ここまで自動売買とシステムトレードをほぼ同じ意味として書いてきましたが、厳密に言うと、自動売買とシステムトレードは同じではありません。

自動売買はその名のとおり、設定した条件にしたがって自動的に注文を出したり、決済をしたりすることです。というと、複雑に感じるかもしれませんが、「逆指値注文」など、さまざまな注文方法も「あらかじめ設定した条件にしたがって注文や決済を行う」という点では自動売買の一種です。

システムトレード(シストレと略す場合もあります)も、あらかじめ設定した条件にしたがってトレードを行う手法ですが、「逆指値注文」などよりもさらに複雑なルールで、特にテクニカル分析を用いて売買を行うのが一般的です。

たとえば、「短期の移動平均線が、長期の移動平均線を下から上に抜け(ゴールデンクロス)、かつ、RSIが一定の数値以下の場合は買う」といった具合です。

システムトレードはこのように、人間の感情を排して機械的にトレードを行うことを指すことが多いようです。ルールに従っていれば、手作業で売買を行う場合でも、システムトレードと呼ぶことがあります。

最近では、自動売買とシステムトレードがほぼ同義で使われていることから、以下、この記事内では単にシステムトレードと呼ぶことにします。

3 コンピュータの登場でシステムトレードが進化

「一定のルールに従って機械的に売買する」ことをシステムトレードと定義するとすれば、その歴史は長くなります。株式や商品先物相場では、100年以上も前からさまざまな売買ルールの研究が行われてきました。

ただし、システムトレードの普及において、転機になったのは、やはりコンピュータの登場です。オランダ放送協会オーケストラの第一ソロチェリストと通貨システム運用の顧問業務を兼任するという異色の経歴を持つ田中雅氏の研究によれば、コンピュータを駆使してその指示どおりに機械的に自動的に相場を取引するシステム取引が1980年代から盛んになり(システムトレードの第1世代)、1990年代にはシミュレーション手法の研究(システムトレードの第2世代)、1990年代後半から2000年以降には、人工知能を取引に適用する研究が成果を見せ始めたとされます(システムトレードの第3世代)。

田中氏は、現在はさらに「高度な統計学を応用したデータ・マイニング手法や、同じく高度な数学を駆使した特異な取引手法やリスク解除の数学的処理の新アイデア等が現実に応用されるようになった」としています(システムトレードの第4世代)。

4 FX取引が個人投資家に解禁されたときからシステムトレードはあった

日本の個人投資家にFX取引が解禁されたのは1998年です。外国為替および外国貿易管理法(外為法)が1998年4月に改正され、それまで外国為替業務は為銀や指定証券会社、ホテルの両替商など許可された者に限られていましたが、誰でも自由に行えるようになったのです。

ちなみに、1998年はまさにマイクロソフトがパソコン(PC)用のOSであるWindows 98を発売した年です。一部の個人投資家の間では「PCを使ってシステムトレードをしたい」という声が生まれていました。ただし、実際にそれができたのはプログラミングなどに詳しい一部の投資家だけでした。

当時は表計算ソフトのExcel(エクセル)のマクロやVBAなどのプログラミング言語を使って自動売買ツールを自作する人もいました(現在も、自作のツールを使っている人は珍しくありません)。

5 「MT(メタトレーダー)」の登場で、システムトレードの利用が広がる

FX取引が個人に解禁された当初は、一部の投資家の利用だけに限られていたシステムトレードが、一般の投資家にも広がったきっかけになったのが、「メタトレーダー(Meta Trader)」というツールの登場です。

開発元であるメタクオーツ・ソフトウエア社(MetaQuotes Software)はもともとロシアの企業で、現在はキプロス共和国に移転しています。同社は2000年からオンライントレードツールの開発を始め、2003年に「メタトレーダー(MetaTrader)3」をリリースしました。バージョン3から始まっているのは、それまでのツールの機能を引き継いでいたからだそうです。

同社が2005年にバージョン4にあたる「メタトレーダー4(MT4)」をリリースすると、プログラミングなどに詳しくない人でも簡単に操作できることや、多彩なチャートを取引に活用できることなどが人気となり、世界中の個人投資家に一気に広まりました。現在、FX取引ツールとしては世界トップクラスのシェアだとされます。

一方で、日本のFX会社でMT4を利用できるところはさほど多くありませんでした。どちらかといえば中小のFX会社が独自のサービスとして提供していました。ただ、2016年には大手ネット証券の一角である楽天証券が、MT4を利用できる口座、「楽天MT4」をスタートさせ注目されています。

6 MT4活用のポイントは「EA(自動売買プログラム)」

MT4を利用するには、MT4対応のFX会社で口座を開設し、MT4をインストールします。システムトレードのポイントになるのが、EA(Expert Advisor)と呼ばれる自動売買プログラムです。

FX会社の中にはいくつかのEAも提供するところがありますが、その数は限られています。インターネット上には世界中で開発されたさまざまなEAが販売されています。日本で開発されたものもあります。これらを購入しMT4にインストールすることにより、システムトレードができるようになります。自分でオリジナルのEAを作ることもできます。

MT4を利用してシステムトレードを行う場合、大きな注意点があります。それは24時間自動売買を行うには、24時間PCを起動しておかなければならないことです。PCの電源を切ったり、MT4をシャットダウンしたりしてしまうと、注文や決済は行われません。

そのためにMT4でシステムトレードを行う人の多くが「VPS(Virtual Private Server)」と呼ばれるサービスを利用しています。これは、自宅のPCにMT4をインストールする代わりに、ネットワーク上の仮想PCにMT4をインストールし、実行するものです。VPSを利用すれば、自宅のPCを24時間起動しておく必要はありません。また、自宅外からでもリモートアクセスで取引ができます。

7 「選ぶだけ」でシステムトレードができる「ミラートレーダー」

MT4はプログラミングの知識がない人でも自動売買プログラムが利用できるという画期的なツールです。といっても、実際に取引で利用するにはソフトウエアをインストールし、さらにEAを取り込む必要があり「誰もが簡単に」と言えるほどではありません。さらに、自動売買プログラムを走らせるために、24時間PCを起動しておいたり、VPSなどを利用したりする必要があります。

そこで、これらの課題を解決するような新しいツールが注目されるようになりました。「ミラートレーダー」です。ミラートレーダーはイスラエルのトレーデンシー社が開発したツールです。「ストラテジー」と呼ばれる自動売買プログラムをツールに組み込んで利用するところはMT4とほぼ同様ですが、大きな特長は、EAを自分で探して購入しなければならないMT4とは異なり、ミラートレーダーでは、トレーデンシー社の審査に合格した「ストラテジープロバイダー」と呼ばれるプロフェッショナルが作成した数百種類ものストラテジーがあらかじめ用意されていることです。

個人投資家はこの中から選択するだけでシステムトレードが開始できます。さらに、ツールはFX会社の取引システムに組み込まれているので、自宅のPCにインストールする必要がありません。つまり、自宅のPCを24時間起動しておく必要はありません。

8 「ミラートレーダー」の登場で、システムトレードの普及が進む

トレーデンシー社がミラートレーダーの概念を発表したのは2005年なので、MT4の発売とほぼ同時期です。ただし、日本のFX会社でミラートレーダーが導入されたのは、2011年末のインヴァスト証券が最初です。インヴァスト証券は以後、ミラートレーダーをはじめとするシステムトレードに力を入れ口座数を伸ばしています。

ミラートレーダーの登場により、システムトレードの普及が一気に進みました。人気を集めた要因の一つは、強力なストラテジーです。たとえば2013年の話題を集めたのが「ThirdBrainFX(サードブレインFX)」というストラテジーです。

インヴァスト証券によれば、2011年8月から2013年6月の約2年間において、「サードブレインFX」は20,000Pipsを超える実績をたたき出し、2年弱の運用で資金は当初の約7.6倍にも増えたそうです。

「サードブレインFX」以外にも、ミラートレーダーには年間で2倍、3倍と増えるようなストラテジーがいくつもあり、これを利用したいと考える投資家を集めました。また、ミラートレーダー以外にも、ストラテジーを選択するタイプ(選択型)のシステムトレード機能を提供するFX会社も増えました。

9 大きなドローダウンや非公開性が敬遠され、システムトレードが下火に

2013年ごろまでは選択型のシステムトレードの人気が高まり、「このままFXはシステムトレード化が進み、近い将来、FXの仕組みなど知らない投資がほとんどになるのではないか」とも言われていました。

しかし、それは長く続きませんでした。大きな理由は、一口で言えば、「選んだストラテジーがなかなか継続的に勝てない」からです。たとえば、一時は無敵とも思われた「サードブレインFX」も、2013年7月以降は低迷し、最大ドローダウン(下落率)を更新するようになってしまいました。多くの投資家が「一つのストラテジーがずっと勝ち続けることはできない」ことや、「過去の実績を過信してはいけない」ことを痛感させられました。

ただ、そうなると「では、どのストラテジーを選ぶべきか」がますます難しくなります。というのは、多くのFX会社では、ストラテジーのアルゴリズムやソースコードは公開されていません。つまりブラックボックスです。「わからないまま負けていく」のではたまったものではありませんので、システムトレードそのものが敬遠されるようになりました。利用者が減少するのにともない、MT4やミラートレーダー、さらに独自の選択型のシステムトレードのサービスを終了させるFX会社が相次ぎました。

10 「リピート系発注機能」の先駆けとなったマネースクウェア・ジャパンの「トラリピ」

「サードブレインFX」のドローダウンなど、ストラテジー選択型の課題が見え始めた2013年ごろに、新たなシステムトレードの潮流が起こってきました。「リピート系発注機能」です。

「リピート系発注機能」の先駆けとなったのが、マネースクウェア・ジャパンの「トラリピ」です。同社によれば、「トラリピ」とは「トラップリピートイフダン」の略で、「イフダン(新規と決済を同時に発注する注文)に、リピート(注文をくり返す機能)とトラップ(一度にまとめて発注できる仕組み)を搭載した当社独自の注文」とのこと。

「イフダン(If done:「IFD」と略されることもあります)」は、その名のとおり、「新規注文が約定した『ならば』、決済注文も同時に有効になる」という注文方法です。

たとえば、今、米ドル/円が1ドル=112円とします。ここで、短期的には下落するものの、その後は上昇すると考えた場合、「1ドル=110円になったら買い。その後、1ドル=115円になったら売り(決済)」というような注文を一度に出すことができます。

イフダン注文と組み合わせてよく使われる注文方法に「OCO注文」があります。OCO(オーシーオー)は「One Cancels the Other」の略で、指値注文と逆指値注文を同時に出すことができ、一方が約定したらもう一方が自動的にキャンセルされる注文方法です。イフダン注文とOCOを組み合わせた、「IFD-OCO(イフダンオーシーオー)注文」と呼ばれる注文方法もあります。

11 2013年ごろからFX会社で相次いで「リピート系発注機能」に参入

マネースクウェア・ジャパンが「トラリピ」をリリースしたのが2007年12月です。2013年ごろまではさほど話題にもなっていなかったのですが、2013年ごろから次第に、トラリピをはじめとするリピート系発注機能が注目されるようになりました。

リピート系発注とは簡単に言えば、「1ドル=○円のときに買って×円になったら売る」といった「イフダン注文」を繰り返すだけです。これをシステムトレードと呼べるのかと言われれば疑問もあります。便利な注文方法の一つに過ぎないと言われればそうでしょう。

それにもかかわらずリピート系発注機能が注目されるようになった背景としては、前述したように、MT4やミラートレーダーなどのシステムトレードツールが今一つわかりにくかったことに比べ、リピート系発注機能がシンプルで理解しやすかったことにあります。

リピート系発注ならば今、どれだけの注文が走っていて、どれだけ儲けているか(どれだけ損しているか)は一目瞭然です。今後価格が上昇または下落した場合のシミュレーションも簡単にできます。ブラックボックス的なところはありません。

折しも、2013年~2015年ごろには、FX会社各社が相次いでリピート系発注サービスに参入するようになりました。外為オンラインは2014年10月に「iサイクル注文」の提供を始めています。リピート系発注サービスは「トラリピ」や「iサイクル注文」以外にも、アイネット証券の「ループイフダン」、インヴァスト証券の「トライオートFX」、FXブロードネットの「トラッキングレコード」、ジャパンネット銀行の「連続IFDOCO注文」、マネックス証券の「オートトレール」、YJFX!の「リピートトレール」など、各社が続々とリリースしています。ただし、それぞれ機能は若干異なります。

12 システムトレードの活用で注意すべきポイント

さて、ここまで自動売買やシステムトレードの歴史、種類などについて紹介してきました。「けっきょくのところ、システムトレードで儲かるの? 儲からないの?」という疑問もあるでしょう。その活用においていくつか注意すべきポイントを述べておきます。

選んだEAやストラテジーが勝ち続けることはない

EAやストラテジーの一覧を見ると、年間収益率200%以上というものも珍しくありません。ただしこの数字を鵜呑みにしてはいけません。まず、この数値自体が、実際のトレードのものでなく、バックテストのシミュレーションのものという場合があります。シミュレーションの場合は、好成績が出るようにパラメーターを調整していることがあります。今年の結果はよくても来年はどうかはわかりません。

また、結果が実際のトレードのものであっても、将来の勝率が約束されているものではありません。「サードブレインFX」のように、あるときから突然勝てなくなることもあります。

EAやストラテジーは定期的に見直しを

EAやストラテジーが永遠に勝ちづけることはないとなると、相場環境の変化に合わせて定期的にEAやストラテジーを入れ替えることが必要になります。入れ替えの時期にも悩むところですが、大きく「レンジ相場に強いEAやストラテジー」「トレンド相場に強いEAやストラテジー」と意識するだけでも検討の余地はあります。

最近、FX会社によっては、その入れ替え自体も自動で行ってくれるサービスが登場しています。インヴァスト証券の「フルオート」は、あらかじめ設定した条件にしたがってストラテジーの入れ替えを自動で行うサービスです。直近で好調なパフォーマンスを発揮しているストラテジーを選び続けるといったこともできるそうです。

楽天証券の「楽天RoboX(ロボックス)」は、人工知能(AI)を使って、投資家の投資スタイルを判断し、「楽天MT4」のプラットフォーム上で、複数の売買ストラテジーをポートフォリオの形で組み合わせて提案するものです。

システムトレードは長期戦、最大ドローダウンに注意

MT4のEAやストラテジー選択系、さらにはリピート系発注機能など、システムトレードにはさまざまな手法があります。ただし、共通することがあります。それは、システムトレードは短期で成果を出すのが難しいことです。

システムトレードのセオリーは長期投資です。中には成果が出るまで1年程度の時間がかかるストラテジーもあります。長期戦になるときに注意しなければならないのは、予想と反対側に動いたときにどこまで我慢するか、すなわち最大ドローダウン(下落)をどこまで見るかです。

ドローダウンを近くに設定すると、いわゆる損切り貧乏になります。かといって、大きく設定するとリスクも大きくなります。このあたりの判断が難しいところです。

リピート系発注機能のストップロスの設定について

投資家の中には、「トラリピ」などリピート系発注機能を利用する際に、最大ドローダウンを設定しない、すなわち、塩漬けにする人もいます。潤沢に資金があれば、それも一つの方法かもしれません。

ただ、相場が何年も上昇したり、下落したりが続くこともあります。その場合、何年も含み損を抱えたままということになります。であれば、いっそ損切りしてしまったほうが、資金が有効に活用できるという考え方もあります。このあたりも含めて、システムトレードは資金管理をどうするかも重要になります。

見えない手数料で割高になることも

MT4のEAは有料なものもありますが、多くのFX会社ではシステムトレードのストラテジーや「リピート系発注機能」を無料で提供しています。実際には、多くのFX会社では「MT4口座」「シストレ口座」などを設け、スプレッドが高くなっています。つまり、見えない手数料が取られているわけです。ときには割高になることもあるので注意が必要です。

13 まとめ/システムトレードは万能ではない

ここまでシステムトレードの仕組みや、いくつかの主要なサービスの使い方などを紹介してきました。ただし、繰り返しになりますが、どんなツールやストラテジーも万能ではなく、長期間勝ち続けることは難しいのです。

ツールやストラテジーは、あなたが監督を務めるチームの選手のようなものです。成果が出せないなら、スタメンから外すことも大切です。それぞれの強みなどを理解した上で、タイミングよく使い分けるようにするといいでしょう。

投信1編集部

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投信1編集部

投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。