「資本市場に関わる仕事をしていたこともあって、出勤時間が非常に朝早いだけではなく、夜も上司が帰宅するまで帰宅することができませんでした。労働時間が想像以上に長かったのです。福利厚生は良かったのですが、時給にするとどうなのかと」

労働時間と給与水準が見合わなかったという主張ですが、入社前に希望していた職種での「仕事のやりがい」について、A氏はどう感じていたのでしょうか。

「同期でも希望通りに配属されたケースは少なかったので希望していた職種に配属してもらったときはとてもうれしかったですね。ただ、どこでもそうかもしれませんが、新人は事務処理が多くてプレーヤーとしては認められていなかったように思います。結果としてエクセルのスキルは相当つきましたが(笑)、ビジネスパーソンとしては全く成長しませんでしたし、その焦りが常にありました」

また、A氏は離職したタイミングが入社3年目だったことにも理由があるといいます。

「配属されて3年目にもなると、当然仕事にも慣れてきますし、会社の中での部署の位置づけもわかってきます。また、3~4年目での異動は金融機関ではよくありますから、もし異動があったとして、そこが同じようにスキルを積めない環境だったらあっという間に30歳になってしまうな、という考えが頭をよぎりました。金融機関は確かに給与水準は魅力的ですが、年齢を重ねた時に労働市場で引き合いが強い職種はそれほど多くないのではないでしょうか」

A氏は年収で会社を選んだことを後悔した

実はA氏、転職先で長きにわたってトッププレーヤーとして活躍した後、現在は起業して経営者になっています。

「2社目は前職の反省を踏まえて、社外との接点の多い職種、コミュニケーションすることで自分で進めていける仕事を選択しました」とA氏。転職先は結果がはっきりわかる評価体系で、A氏にとって非常にやりがいを感じるものであり、実際に実績を評価され給与も上がったのだそうです。

ここまでの話から、A氏が本当に求めていたのは単なる「給与の高さ」ではなく、自分が成長できるフィールド、やりたいことを実現できる環境があるかどうか、そして、その成果に応じた給与がもらえるかどうかだったのではないかと推察できます。実際に「今でも新卒当時の選択には様々な反省がある」とA氏はいいます。