来年の民泊新法施行による全国的な民泊解禁を控え、京都市がいち早く独自条例制定の検討を開始しました。民泊対応先進自治体とも言うべき京都市の動きに注目が集まる理由は何なのでしょうか。

民泊新法では自治体の条例で運用面の制度設計が可能

京都市は来年施行予定の民泊新法(住宅宿泊事業法)に関し、9月20日に有識者の意見を聞く第1回検討会議を開催し、条例の制定に向けた検討を始めています。

民泊新法では、民泊物件の営業は年間180日以内と定められています。しかしながら、違法民泊物件の増加などで地域住民の懸念も生じていることから、各地域の事情を考慮した営業日数や設置地域制限など、運用の詳細は各自治体の条例で定めることができる内容となっています。

よって、民泊新法で定められている年間営業日数を下回る条例制定も可能であり、民泊物件の稼働は自治体の条例に大きく左右されることになります。

外国人観光客の増加に悲鳴を上げる京都の市民インフラ

昨今の外国人観光客の増加は、世界屈指の観光都市である京都でも顕著です。市内に点在する観光地へはバス移動が中心となる京都では、バスの混雑が慢性化し、市民の足でもあるバスが満員で乗車できない事態が発生。渋滞も悪化するなど市民インフラへの影響が大きくなっています。

さらに、宿泊施設の不足が指摘されていた京都市では、外国人観光客の増加で違法民泊物件が急増し、地域住民との間で騒音やゴミ出しをめぐるトラブルも頻発しています。

こうした状況を受け、京都市はいち早く民泊への対応を開始。特に京都市の違法民泊物件に対する厳しい姿勢は、民泊業界ではよく知られるようになっています。しかし、京都市の推計で、2016年度の違法民泊物件宿泊者数が年間の修学旅行者数に匹敵するなど、いたちごっこの感は否めません。

民泊対応先進自治体・京都市の条例案がモデルケースに?

急増する違法民泊物件や市民からの苦情を背景に、京都市は他の自治体に先駆けて民泊対応部署を設けるなど、民泊対応の先進的自治体としての取り組みが注目されています。そのため、京都市で制定される民泊新法対応の条例は、他自治体のモデルケースとなりそうです。

既に民泊新法施行を前に、全国の旅館ホテル組合は各自治体に対し、条例での営業日数の短縮や住居専用地域での民泊施設の除外等を求めています。そのため、自治体の裁量が広く認められている民泊新法で京都市がどのような条例制定を行うのか、関係者が固唾を飲んで見守っていると言えるでしょう。

観光地を抱える自治体を中心に難しい判断を迫られる

増加が著しい外国人観光客に対し、国内の宿泊施設の絶対数は不足しています。ただ、これまで違法民泊でトラブルが発生するなど、地域住民の民泊に対するイメージは決して良いものだけとは言えません。

民間企業の間でも、来年の民泊新法施行に向けて楽天グループなどが民泊サービスへの参入を表明する動きがあります。ただし、各自治体で制定される条例の内容によっては、民泊がほとんど機能しない地域の発生も想定されます。

地域活性化の観点では訪日外国人観光客を呼び込みたい行政側ですが、一方で、地域住民や既存の宿泊事業者への配慮も必要不可欠です。観光地を抱える自治体は今後どのような条例案を制定するのか、難しい判断を迫られることになりそうです。

石井 僚一