11月から購読料の値上げを発表

2017年10月6日、日本経済新聞社は、11月1日から日経新聞の月ぎめ購読料(税込み)を朝夕刊セットで現在の4,509円から4,900円に、朝刊のみの全日版を3,670円から4,000円に改定すると発表しました。

なお、今回の値上げは1994年2月以来、23年ぶりとなります。また、値上げ率は約9%と比較的大きなものとなっています。

この値上げの理由として、同社では以下の3点を挙げています。

  • 配達費の上昇(物流関連を中心とした人手不足の影響を受けているため)
  • カラー化、取材・編集・製作における最先端の機器・システム対応の設備投資負担の増加
  • デジタル化、グローバル化への対応などクオリティー確保のための経費増

広がる他紙との価格差

今回の値上げにより、他の全国紙との価格差はさらに拡大することになります。

日経新聞は、企業の経営者、中堅社員、ホワイトカラーをコアターゲットとしているということもあり、従来から他紙よりも高めの価格設定を行っていますが、値上げ後の朝夕刊セット価格は、一番安い東京新聞に対しては約47%(値上げ前は35%)、読売、朝日、毎日に対しては21%(同12%)割高となります(下表をご参照ください)。

つまり、今後他紙が値上げに追随しなければ、日経新聞のプレミアム感は一層高まることになります。

でも、なぜ今なのか?

配送料の上昇や印刷代、取材費用の増加といった値上げの理由に大きな違和感はないものの、なぜ今、日経だけが値上げを行うのかは気になるところです。

この背景を考える際の注目すべきニュースとして、最近、米国の経済紙「ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)」が、10月1日までに欧州とアジアで紙の新聞の発行を中止したことがあります。

中止理由は、海外での販売部数・購読者数の落ち込みや広告収入の減少ですが、それ以外に、両地域での電子版に注力することも理由として挙げられています。

ちなみに、今回の日経の価格改定では、デジタル電子版のみの月額料金4,200円は据え置かれます。このため、コスト増に対応した値上げであるとともに、WSJと同様、デジタル版への誘導を加速させる狙いもあるのではないかと推察されます。

今後の注目点

今後は、他紙も値上げを行うのか、あるいは安さをアピールして日経からシェアを奪おうとするのか、まずは注目されます。

また、上述のように、経済紙の老舗であるWSJですら紙の新聞の発行を維持できなくなっているほど、海外では”紙の新聞離れ”が進展んでいます、この動きが日本でもさらに加速していくのかも注目したいところです。

いずれにせよ、紙の新聞のリストラではなく、値上げでこうした変化に対応しようとしている日経新聞の今後の動向を引き続き注視していきたいと思います。

LIMO編集部