今年も開催されていたF1日本グランプリ大会

10月6日~8日に鈴鹿サーキットで開催されていた「2017 FIA F1世界選手権シリーズ第16戦」(以下、F1日本グランプリ)が終了しました。最終結果は、ルイス・ハミルトン(メルセデス)が優勝し、年間王者にまた一歩近づいています。

一方、地元開催で巻き返しが期待されていたマクラーレン・ホンダはフェルナンド・アロンソが11位、ストフェル・バンドーンが14位という残念な結果になりました(選手名は敬称略、以下同)。

F1の人気低下が続く日本

ところで、この結果を聞いて“えっ、F1日本グランプリが開催されていたの?”と驚いた人がいるかもしれません。また、それ以上に“あっ、そう。興味ないね”と冷めた見方をしている人も少なくないと思われます。

近年、日本におけるモータースポーツは興行的な不振が目立っていますが、その中でも、世界最高峰の自動車レースと言われているF1(フォーミュラ1)の人気凋落は著しいものがあります。

まずは、日本のF1人気の歴史を簡単に振り返ってみましょう。

25年前はテレビ局のドル箱コンテンツだったF1グランプリ

F1レースは長期にわたり日本開催が見送りとなっていましたが、フジテレビがスポンサーとなって1987年に復活します。世界的スターのアイルトン・セナやアラン・プロストなどに加え、中嶋悟や鈴木亜久里など日本人ドライバーが活躍したこともあり、F1は大ブームになりました。

90年代前半、日本グランプリのテレビ放映は高視聴率が見込めるドル箱コンテンツとなり、ピークの1991年の視聴率は20%超となっています。

その後、熱狂的なブームは一段落しますが、佐藤琢磨など日本人ドライバーの活躍、ホンダに続いてトヨタ自動車の参入などもあり、2006年には再び大人気となりました。同年10月に鈴鹿サーキットで開催されたF1日本グランプリでは、36万1千人(3日間合計、以下同)という過去最高の観客数を記録しています。

リーマンショック後に日本企業は次々と撤退

しかし、2008年秋に発生したリーマンショックで様相が一転します。F1は膨大なコスト・資金を必要とします。急激な業績悪化に見舞われたトヨタ、ホンダが相次いでF1から撤退し、関連スポンサーとなっていた他の日本企業も続々と撤収したのです。

資金力のある日本企業が撤退したため、欧州など海外のF1チームは日本人ドライバーを採用しなくなり、いつの間にか、日本人ドライバーは皆無となりました。

2016年からテレビ放送が事実上打ち切りに

そして、最大のスポンサーであるフジテレビは2012年には地上波放送を打ち切ってBS放送へと縮小し、ついには2015年でBS放送も終了となりました。2016年からはCS有料放送局による小規模な中継のみとなっています(録画ダイジェストを除く)。

つまり、事実上、F1日本グランプリのテレビ放送が消滅したことになります。放映権料の値上がりなど事情はありますが、F1グランプリはもはやドル箱コンテンツではなくなったのです。

F1日本グランプリの観客動員数は11年間で▲62%超の激減

実質的にテレビ放送がなく、事前のキャンペーンも縮小気味であるため、日本で開催されていたことを知らなかった人がいても不思議ではありません。また、今回の観客数は13万7千人となり、過去最低だった昨年(2016年)の14万5千人から約▲6%減となりました。好天に恵まれながらも2年連続で過去最低更新となったのです。

また、ピークだった2006年から11年で約▲62%の激減状態ですが、復活の兆しが見られないため、数字以上に深刻な雰囲気があります。なお、今年の決勝(8日)の入場者数は6万8千人に止まり、決勝戦としては初の7万人割れとなりました。

では、日本でのF1人気復活に向けて何が必要なのでしょうか。そもそも、F1を含めたモータースポーツ人気を復活させる必要はあるのでしょうか?

それでもF1は十分に魅力的なイベント

前述したように、F1日本グランプリへの来客数は減少の一途を辿っています。しかし、それでも、交通アクセスが決して良くない鈴鹿サーキットに1日(決勝のみ)で7万人弱が来場したことは見逃せない点です。

現在、東京ドームの野球観戦の満員が約4万6千人ですが、巨人戦でも満員にならない日は珍しくありません。テコ入れ次第では、まだまだ十分に魅力的なイベントと言えましょう。

まずは日本人ドライバーの登場が必要不可欠

人気復活のためには、兎にも角にも、日本人ドライバーの誕生が必要不可欠です。もちろん、2014年を最後に途絶えている日本人ドライバーをF1のシートに座らせるのは簡単ではありません。

日本の自動車メーカーがリーマンショック時にあっさり撤退したことから、F1の有力チームには日本企業に対する不信感が少なからずあると考えられます。日本企業の潤沢な資金支援を目的とした日本人ドライバーの採用は、非常に難しいのが実情です。

日本人ドライバーを育成する土壌を作る

そうとなれば、日本人ドライバーを育成するしかありません。もちろん、相当な時間を要するでしょうが、テレビ放映を復活させるには、これが最善の方法でしょう。そのためには、日本企業が収益の良し悪しでモータースポーツに関与するスタンスを変えるのではなく、コツコツと地道に続けることが求められます。

そして、もし、やらないならスパッと止めて掌を返したように戻ってこない、というような姿勢が求められるのではないでしょうか。また、これはフジテレビを始めとしたメディアにも言えることだと考えられます。今後もこうした動きを見守っていきましょう。

LIMO編集部