高すぎて株が買えない企業って? 株式売買単位引き下げの意義と課題

東証が株式市場活性化のために示すべき次なる指針とは

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10月からNECの株価は3,000円台に

今まで100円台だった株価が、なぜが突然1,000円台へ。最近、このようなことが多いのにお気づきでしょうか。たとえばNEC(6701)の場合、9月までは300円をやや下回る水準だった株価が、10月に入ってからは3,000円台で推移しています。

うっかりすると株価が10倍に上昇したと誤解してしまいそうですが、実際は、10株を1株に併合する株式併合が行われたことが理由です。

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同時に、同社は売買単位を1,000株から100株へと変更しています。この結果、1回の取引で買える金額はいずれも30万円前後で、株式併合前と変わらないことになります(1,000株×300円=30万円、100株×3,000円=30万円)。

では、なぜNECは株式併合を行ったのでしょうか。その理由は、仮に売買単位を100株に変更した一方で株式併合を行わなかったとすると、最低3万円前後(100株×300円=3万円)で買えるようになることが一因と推察されます。

1回あたりの最低取引金額が少額であることは、限られた資金でより多くの銘柄に分散投資をしたい個人投資家にとってはありがたい話です。しかし、会社側にとっては、事務作業が煩雑になり過ぎてしまうマイナス面もあります。つまり、”安く買えすぎてしまう”のを避けるためにNECは売買単位の変更と株式併合を同時に行ったと考えられます。

なお、このようなことを実施したのはNECだけではありません。東証によると、2017年10月1日を効力発生日として売買単位の変更と株式併合を同時に実施した企業は357社に達しています。一方、同日の時点で、売買単位は変更したものの株式併合は実施しなかった企業は32社と、大半の企業がNECと同じことを行っていたことになります。

上場企業の94%が売買単位(単元株式数)を100株に

こうした動きが起きているのは、東証が、現在1,000株と100株の2種類ある売買単位を、2018年10月1日までに100株だけに一本化する方針を2015年12月に決定したことによります。また、9月末に売買単位の変更が多かったのは、一本化の期限まで残すこと1年となったため駆け込み的に実施した企業が多かったためと見られます。

この結果、2017年10月2日時点で、売買単位が100株の上場企業は全体の93.8%(3,322社)、現状も1,000株単位としているのは6.2%(219社)となっています。

売買単位の変更は株式市場の活性化をもたらすのか

東証が売買単位を100株に統一するのは、投資家の利便性の向上が目的とされています。具体的には、複数の売買単位が併存することによる誤発注の防止や、売買単位の低下でより幅広い投資家が株式を購入できるようになることなどを目指しています。

また、年間の非課税投資枠が120万円である一般NISA(少額投資非課税制度)を、株式投資でより使いやすくするという狙いもあると考えられます。

実際、東証によると「100株単位への移行に際して株式併合を行わなかった上場会社について、売買単位変更日(単元株式数の変更日)の属する事業年度の末日の個人株主数を前事業年度の末日の個人株主数と比較した場合、平均して67%増加しており、増加率の中央値は36%であった」とのことです。

このように、個人投資家の株主数の増加という目論見に対しては、一定の効果は現れているようです。ただし、株式の保有金額で見ると個人投資家のウエイトは低下しているという気になるデータもあります。

2017年6月に発表された「2016年度株式分布状況調査」(日本取引所グループ)の結果によると、保有金額の絶対額は上昇していたものの、信託銀行や外国法人等の上昇には追い付けなかったため、個人投資家の株式保有比率は前年度比マイナス0.4ポイントの17.1%となり、過去最低を更新してます。

では、今後さらに個人投資家の存在感を高めるためには、どのような施策が求められるのでしょうか。その1つのアイデアとしては、売買単位の引き下げだけではなく、これまでも東証が求めていた「望ましい投資単位の水準(5万円~50万円)」についても、より強く上場企業に意識させる指針を示すことが重要であると考えられます(注)

注:現時点で東証は、売買単位の引き下げを優先するようにという指針を示しています。

”望ましい投資単位”の水準を上回っている企業の例としては、キーエンス(6861)、任天堂(7974)、ファーストリテイリング(9983)などの優良企業があげられます。

いずれも既に売買単位を100株に引き下げていますが、最低投資金額はキーエンスで約600万円、任天堂で約440万円、ファーストリテイリングで約350万円と高額であり、分散投資を行いたい投資家には、かなり高いハードルです。

個人投資家層を拡大していくためには、売買単位の引き下げに加え、東証がこうした企業に対し「株式分割」を行って一株あたりの株価を引き下げるよう求めていくことが、個人投資家の存在感を高め、日本の株式市場を活性化させていくために必要とされているのかもしれません。皆さんはいかがお考えでしょうか?

投信1編集部

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