起業をするには、タネ銭(自己資金)が要ります。始めるビジネスの内容によって、かかる金額は違いますが、100万円から1000万円くらいを用意して起業する方がほとんどです。

そして、自己資金で足りない場合、日本政策金融公庫などの創業融資※などを利用して資金調達するのがオーソドックスなスタート方法。この場合にも、創業にかかる総額のうち、何割を自己資金として用意したかという自己資金割合が審査で重視されます。

スムーズに起業するには、会社員時代に、どれだけタネ銭づくりをやっていたかが非常に重要だといえるでしょう。今回は、タネ銭をどうやって用意するか、その方法を解説します。

※日本政策金融公庫の創業融資とその審査基準についてはこちらの記事をご参照ください。

1. コツコツ貯金する

毎月の給料の一部を貯金用の通帳に移し、貯める方法です。お金を貯めるのに時間がかかりますが、コツコツお金を貯めてきた努力は、融資審査ではとても評価されます。

コツコツ貯められる人は、コツコツと返せる人。その金銭感覚も評価されます。

2. 退職金

退職時に会社から受け取る退職金をあてにする方法です。退職金を受け取れるのは、通常、退職日以後、1週間~1カ月くらいの間です。会社の退職金規程などで確認しておきましょう。

受け取るタイミングによっては、会社設立に間に合わず、資本金に入れることができない可能性があります。その場合、いったん会社設立をした後に増資することも視野に入れましょう。

また、年齢や勤続年数など、退職するタイミングによって、退職金額が有利になることもあります。普段、あまり見ないと思いますが、退職金規程をよく確認してみましょう。

3. 株式や投資信託の売却

個人名義の株式や投資信託を売却する方法です。相場変動の影響を受けるため、起業資金が欲しい時期と売却に有利な相場とのタイミングが合わない可能性があります。

起業準備を考えた段階で、相場の良い時期に現金化しておくと良いでしょう。

4. 生命保険の解約

個人で契約している生命保険を解約して、解約返戻金を自己資金とする方法です。契約内容によっては掛けてきた保険料よりも大きく目減りすることもあるため、注意しましょう。

5. 自宅の売却

起業のために家を売却したうえで、勝負に出る方法です。売りに出してから買い手が決まり、実際に引き渡し、入金があるまで相当の時間を要します。

売らずに借入の際に担保に入れる方法もあるため、売却はどう考えても融資が無理な場合に限られると思いましょう。

6. 贈与を受ける

両親や兄弟など、身内から贈与を受けて起業資金とする方法です。自分で貯めてきたお金ではないため、やや評価は下がりますが、自己資金として認めてもらえます。

お金をもらう場合は贈与税を考慮する必要があります。贈与税の非課税枠は年間110万円です。その範囲を超える贈与を受けると課税されてしまいます。ご両親などに相談し賛同が得られるなら、計画的に贈与を受けるといいでしょう。

贈与を受ける際は、融資審査の証拠とするためにも、現金ではなく必ず振り込みで受け取りましょう。

7. 出資してもらう

新たに作る会社に対して、親族や第三者に出資してもらう方法です。この方法ですと個人で貰うわけではないので贈与税の心配もありません。親族が出資することで安定株主とも見てくれます。第三者の出資の場合は、議決権など、経営への関与についても考慮する必要があるため、よく検討しましょう。

いかがでしたでしょうか。これらの方法でなるべく多くの自己資金をつくり、創業融資を有利に進めていきましょう。

中野 裕哲