株式市場に注目が集まる状況が続いていますが、ドルインデックスがECBドラギ総裁の会見を契機に上昇トレンド入りするなど、為替市場にも変化の芽が生じています。今週発表が予定されているFRBの次期議長人事により、ドルインデックスやドルストレート通貨がどのような値動きを見せるのかに注目です。

先週の為替市場振り返り

先週も金融市場は株式市場中心の値動きとなりました。日本市場では衆院選後も株価は上昇を続け、日経平均は22,000円台に到達。また米国市場も企業の好決算を背景に、静かな上昇を見せています。

一方、為替市場では相変わらず大きな値動きは見られないものの、変化の芽が生じています。ドル/円は先週114.3円台にまで上昇となりました。114円台半ばには7月に付けた高値が存在しており、いったん反転して週の取引は113.6円台で終えましたが、長く節目価格として意識されていた114円台に遂に到達しています。

一方、ユーロ/ドルは26日、ECB理事会後のドラギ総裁会見を契機に急落。9月下旬からレンジ相場が続いていましたが、遂に下落トレンド入りとなりました。

ドル/円の過去6カ月間の推移

ドルインデックスが急騰

そのドラギ総裁の会見を契機にドルインデックスは急騰し、翌27日も上昇は止まりませんでした。ECB理事会でテーパリング(量的金融緩和縮小)の決定を行ったものの、市場がほぼ織り込んでいた内容であり、一足先にテーパリングを開始しているドルに資金が向かった結果、ドルインデックスの大幅な上昇を招いています。

先週のドル/円の上昇、ユーロ/ドルの下落は、いずれも26日以降のドルインデックスの上昇で説明がつきますが、ドルインデックスは先週の上昇で7月以来の高値を付けています。ドルインデックスは9月上旬に底打ちし、10月は前半・中盤はレンジ相場となっていましたが、下旬は上昇トレンド入りという状況となりました。

今週の為替市場見通し

11月第1週となる今週は、3日に米雇用統計(10月)の発表、31日~1日にはFOMC開催が予定されています。ただし今回のFOMCでは政策変更はないと見られています。また、次期FRB議長人事の発表、スペイン・カタルーニャ州独立問題の推移も見守る必要があります。なお、4日にはトランプ大統領が初来日します。

トランプ政権は訪日を含むアジア訪問までに、次期FRB議長を決める方針です。次期FRB議長が金融緩和派か引き締め派かで、先週大きく上昇したドルインデックスの方向性が大きく変化する可能性があります。

また、スペイン・カタルーニャ州議会による27日の独立宣言を受けて、スペイン政府は同州の自治権停止を決定。その後、独立反対派による大規模デモが起きるなど混迷を深めています。カタルーニャ州の独立問題は中世以降の歴史的な問題に加え、スペイン内戦からフランコ独裁時代に多くの犠牲も出ている地域でもあり、問題の根は非常に深いと言えます。

新たなステージに入った同州の独立問題は、スペイン経済はもとよりユーロ圏にも暗い影を落とす可能性が高まっています。ドルインデックスが上昇トレンド入りしているなか、スペインの問題を契機としてさらにユーロが売られるような状況となれば、ユーロ/ドルはいっそう下落の可能性があります。

一方、ドル/円はようやく日経平均と相関するような値動きを見せ始めていますが、114円の壁を上方ブレイクできるのか、跳ね返されてしまうのかが見所です。このままドルインデックスの上昇が継続し、その値動きにドル/円が追随すれば、3月高値の115円台半ばが次のターゲットとして浮上することになります。

まとめ

今週の為替市場では、FRBの次期議長人事が最も注目を集めるイベントとなります。ただしユーロでは、スペインのカタルーニャ州の独立問題の行方から目を離すことができません。

値動き的にもイベント的にも大きな話題のない10月の為替市場でしたが、ドルインデックスなどに変化の芽が生じ始めています。こうした変化がどのような値動きにつながっていくのか、今後の為替市場の行方を占う上で今週は非常に重要な週と言えそうです。

石井 僚一