税務署は見ている!知らなかったでは済まされないFXと税金

FXで発生した利益は、「先物取引に係る雑所得等」として、申告分離課税の対象になります。どれぐらいの利益が出たら申告しなければならないのでしょうか。また、利益が出ずに損失となった場合はどうすればいいのでしょうか。ここではFXと税金、さらに確定申告の手順などについて紹介します。

※以下の内容は個人投資家を対象としています。また、内容には誤りがないよう留意していますが、編集部における解釈であり、確実性を保証するものではありません。また、2017年10月時点の情報であり、税制が変更される場合もあります。税金に関する詳細や最新の情報については、税理士などの専門家や所轄の税務署にご確認ください。

目次

1 FX取引で発生した利益は申告分離課税の対象になる
2 かつては「総合課税」と「申告分離課税」が並立した時代も
3 確定申告をしなければならない人とは
4 「所得」と「収入」の違いに注意
5 FXでいくら所得があったら申告しなければいけない?
6 FX取引で必要経費と認められるのはどんなもの?
7 税法上は「手数料無料」はむしろデメリット
8 未決済ポジションのスワップポイントが課税対象になることも
9 複数のFX会社の取引や他の金融商品の損益と合算できる
10 利益が出ていない年でも確定申告をすると「損益繰り越し」ができる
11 確定申告をしなかったり遅れたりしたらどうなる?
12 黙っていたらばれないの? 脱税できる?
13 マイナンバーの導入も正しく納税していれば恐れる必要なし
14 海外のFX会社の取引まではわからない?
15 慣れれば簡単。FXの確定申告
16 まとめ

1 FX取引で発生した利益は申告分離課税の対象になる

FX取引で発生した利益は、「先物取引に係る雑所得等」として、申告分離課税の対象になります。税率は一律20%(所得税15%・住民税5%)です。ただし、2013年1月1日から2037年12月31日までの25年間については、所得税額に対し2.1%の「復興特別所得税」が課され、税率は「一律20.315%」(所得税15%+復興特別所得税0.315%(15%×2.1%)+住民税5%)となります。

「あんなに苦労して、ようやく収益が出たのに、さらに約20%も税金を取られるなんて」と思うかもしれません。しかし、所得税の税率は、所得が多くなるに従って段階的に高くなる「超過累進税率」となっています。所得税の税率は、分離課税に対するものなどを除くと、以下のように5%から45%の7段階に区分されています(2015年分以降)。

課税される所得金額と税率
195万円以下:5%
195万円を超え330万円以下:10%
330万円を超え695万円以下:20%
695万円を超え900万円以下:23%
900万円を超え1,800万円以下:33%
1,800万円を超え4,000万円以下:40%
4,000万円超:45%

2015年分以降、住民税の最高税率は10%です。住民税と合わせた最高税率は55%になります。申告分離課税の課税方式なら、利益がいくら増えても料率は一律20.315%で変わりません。55%の料率に比べれば割安ですし、何よりシンプルです。

2 かつては「総合課税」と「申告分離課税」が並立した時代も

現在、「くりっく365」の取引所取引、FX会社の店頭(相対)取引など、国内のどのFX会社で取引をしても、FX取引で発生した利益は、「先物取引に係る雑所得等」として、申告分離課税の対象になります。

ただし、このような課税方式になったのは比較的最近の話です。FXが個人投資家に解禁されたのは1998年のことです。当時のFX取引で発生した利益に対する課税方式は「総合課税」で、税率は最大50%でした。このため、FX取引による所得が数億円だと納税額も大きくなります。巨額の脱税で逮捕されるといった事件がいくつも起こり注目されました。

税制において、一つの転機になったのが、2005年7月に取引所為替証拠金取引「くりっく365」が誕生したことです。大きな特徴は、取引所取引では総合課税ではなく申告分離課税の課税方式が採用されたことです。また、確定申告をすることで損失を最長3年間繰り越しすることもできました。つまり、店頭取引よりもかなり優遇されていたのです。

税率だけを見ても、累進課税なら最高約50%のところが申告分離課税だと一律20%(当時)と、かなり差がありました。このため、2009年7月に誕生した大阪証券取引所(現・日本取引所グループ)の「大証FX」とともに、取引所取引は一時、多くの投資家を集めました。

それから数年間は「総合課税」と「申告分離課税」が並立した時代でしたが、それも終息を迎えます。2012年の取引分からは店頭取引についても、取引所取引と同様に申告分離課税になったのです。

店頭取引と取引所取引の差がなくなったことから、取引所取引から多くの投資家が流出しました。取引量も急速に減少し、大阪証券取引所(当時)は2014年10月に「大証FX」を休止しました。

3 確定申告をしなければならない人とは

所得税は、個人の所得に対してかかる税金で、1年間の全ての所得から所得控除を差し引いた残りの課税所得に税率を適用し、税額を計算します。所得は、その性質によって次の10種類に分かれます。

①利子所得
②配当所得
③不動産所得
④事業所得
⑤給与所得
⑥退職所得
⑦山林所得
⑧譲渡所得
⑨一時所得
⑩雑所得

それぞれの所得について、収入や必要経費の範囲あるいは所得の計算方法などが定められています。ちなみに、国外で支払われる預金などの利子や国外にある不動産の貸付・譲渡による収益、国外の法人などに対する出資に係る収益などの所得についても、これらの所得に含まれます。

FXによる所得は「⑩雑所得」です。株を売って利益が出たときの所得は「⑧譲渡所得」です。また、FXで利益が出たかどうかにかかわらず、以下のような人は確定申告をしなければなりません。

  • 給与所得がある人で、給与の収入金額が2,000万円を超える人
  • 給与所得・退職所得以外の所得金額が20万円を超える人
  • 年間所得が38万円(基礎控除額)を越える人

など(ここに挙げた以外でも確定申告をしなければならない例があります)。

4 「所得」と「収入」の違いに注意

ここまで「所得」と「収入」という言葉を使ってきました。一見似ていますが、税法上は大きな違いがあります。まず「収入」とは、給与所得者の人であれば、給与や賞与などの合計です。自営業の人であれば売上、アパートを経営している人であれば家賃です。「所得」は収入から必要経費や所得控除額を差し引いた金額のことです。

「サラリーマンには必要経費は認められない」という人もいますが、そんなことはありません。給与所得者(正社員だけでなく、パートやアルバイトも)の人にもみなし経費とも言うべき「給与所得控除」があります。年収が180万円以下の場合、給与所得控除額は65万円です。

65万円(給与所得控除)+38万円(基礎控除)=103万円

です。つまり年間収入が103万円以下であれば税金がかかりません。また、妻の収入が103万円以下であれば、夫の所得から最大38万円の配偶者控除があります。パート勤めなどで「103万円を超えない範囲で」と話す人が多いのはここに理由があります。

※配偶者控除は2018年から見直される予定です。

5 FXでいくら所得があったら申告しなければいけない?

具体的に、FX取引でいくら所得があったら申告しなければいけないのでしょうか。まずサラリーマンなどの給与所得者(パートやアルバイトも含む)の場合、給与の収入金額が2,000万円を超える人は、FX取引の有無にかかわらず、確定申告をしなければなりません。

収入金額が2,000万円を超えない人でも、給与所得・退職所得以外の所得の合計(FXを含む)が、20万円を超える人は確定申告をしなければなりません。このとき、FXの利益が21万円の場合、1万円だけに課税されるのではなく、21万円全額に課税されます。

専業主婦や無職の人、自営業の人の場合、年間所得が38万円(基礎控除額)を超える人は確定申告をしなければなりません。このとき、FXの利益が39万円の場合は、1万円分だけ課税されます。

このほか、公的年金の受給者は「公的年金等の収入金額が400万円以下」「公的年金等に係る雑所得以外の所得が20万円以下」の場合は確定申告が不要ですが、それ以外の場合は確定申告が必要です。

6 FX取引で必要経費と認められるのはどんなもの?

所得=収入-必要経費

と説明しました。ではFX取引に認められる必要経費とはどのようなものでしょうか。具体的には以下のようなものとされます。

  • 売買手数料
  • 振込手数料
  • FX関連の書籍代
  • 新聞・雑誌代
  • メルマガの購読料
  • ケーブルテレビの経済番組の視聴料
  • FXセミナーの受講費
  • FXセミナー参加時の交通費
  • パソコン、タブレット、モニターなどの購入費
  • トレードソフトの購入料・利用料
  • インターネットプロバイダー費用
  • 筆記用具

ただし、上記に掲げたものでも、すべて(100%)が認められるわけではありません。たとえば、新聞でも、経済専門紙ならいいでしょうが、スポーツ新聞までは認められません。書籍も同様で、FXに関連したものでなければなりません。また、パソコン、タブレット端末についても、FX取引以外で使うことがあるでしょう。その場合は「FXで○割、私用で○割」と経費を分け、FX取引で使っている割合分だけを必要経費として申告することになります。

このあたりは税務署によっても解釈が分かれることがあります。不安な場合は税理士や所轄の税務署に尋ねるといいでしょう。

7 税法上は「手数料無料」はむしろデメリット

FX会社では最近、売買手数料無料のところがほとんどです。むしろ、「無料でなければ投資家に選ばれない」といった感じにもなっています。実は、売買手数料が無料であることは確定申告においてはデメリットなのです。

多くのFX会社では、売買手数料は無料と言っても、スプレッドから利益を得ています。投資家にとっては手数料分がスプレッドに移動しただけで、全体としてコストが減っているわけではありません。

このとき、スプレッドだけを抽出して必要経費として所得から控除できればいいのですが、それはできません。スプレッドは刻々と変わりますし、FX会社も「この取引におけるスプレッドは○円○銭で、純粋な収益は○円○銭です」と出してくれません。これが、売買手数料であればはっきりと計上できますし、FX会社も年末にその金額を出してくれます。もちろん、税務署にも経費として認められます。

その点では、スプレッドにコストを含めてしまって形だけ「手数料無料」にするよりは、スプレッドを狭くしてその分を手数料にしてくれるほうが、投資家にとってはトータルで見れば有利なのです。米国などではそのようなFX会社もあるようですが、日本では「無料」が主流になってしまいました。

8 未決済ポジションのスワップポイントが課税対象になることも

確定申告はその名のとおり、1年間(個人の場合1月1日~12月31日まで)の所得と税額を確定させて申告することです。では年をまたいで未決済のポジションを持っていた場合はどうなるでしょうか。FX会社により以下のような違いがあります。

(1)ポジション損益もスワップポイントも決済しなければ確定しないFX会社
(2)ポジション損益は決済しないと確定しないが、スワップポイントは毎日確定するFX会社
(3)ポジション損益もスワップポイントも毎日確定するFX会社

(1)のFX会社の場合、年末をまたいだ取引の損益やスワップポイントは「年間損益報告書(年間取引報告書などと呼ばれることもあります)」に記載されません。このため、決済していないポジションの評価損益やスワップポイントは課税対象になりません。

(2)のFX会社の場合、スワップポイントだけが毎日口座に振り込まれてきます。損益報告書にも記載されているので課税対象になります。

(3)のFX会社では、保有しているポジションを毎日いったん決済し、翌日以降のポジションに乗り換えます(ロールオーバーと言います)。毎日の決済額は損益報告書に記載されているので、課税対象になります。

(1)~(3)まで、スタイルは異なりますが、「いつ課税されるか」という時期が異なるだけです。「今日、あと1,000円利益が乗ると今年の所得が20万円を超えてしまう」といった場合以外は、さほど神経質になる必要はないでしょう。

9 複数のFX会社の取引や他の金融商品の損益と合算できる

確定申告をすることによって、特定のFX会社だけでなく、複数のFX会社の取引を合算し、損益通算をすることができます。たとえば、2社のFX会社で取引をしている場合、一方のFX会社で年間10万円の利益、もう一方のFX会社で年間5万円の損失だった場合、年間の収入はその合計の5万円となります。

店頭FXだけでなく、「くりっく365」の取引所取引とも合算できます。また、FXだけでなく、「金」「原油」などの商品先物取引、「日経225」「TOPIX」、のような株価指数先物取引、CFD取引、バイナリーオプションなどとも損益を通算することができます。

10 利益が出ていない年でも確定申告をすると「損益繰り越し」ができる

FX取引では一定の所得があった場合は確定申告をしなければなりません。その年の所得が少なかったり、損失に終わったりしたときの確定申告は義務づけられていませんが、それでも確定申告をしておくとメリットがあります。それは発生した損失を繰り越すことができることです。

FX取引では前述したように、複数のFX会社の取引や他の金融商品の取引と損益通算ができます。それでも損失が残っている場合は翌年以降3年間にわたりFX取引や他の金融商品の取引で発生した利益から損失額を控除することができます。

たとえば、2017年にFX取引で100万円の損失となった場合、これを3年間繰り越せるので、2018年にFX取引(または他の金融商品)で40万円の利益、2019年に30万円の利益、2020年に30万円の利益が出たとしても、どの年も課税されません。

ただし、繰越控除を受けるためには、損失が出た年から毎年、継続して確定申告をする必要があります。確定申告を行わなかった年の損失については繰越控除の適用は受けられないので注意しましょう。

11 確定申告をしなかったり遅れたりしたらどうなる?

確定申告をする義務があるのに確定申告をしなかった場合はどうなるでしょうか。意図的に(脱税するつもりで)確定申告をしなかった場合は、厳しい罰則があります。無申告加算税のほか、延滞税も課せられます。悪質な場合は懲役刑もあり得ます。

意図的ではなくても、確定申告の申告期限を過ぎてしまった場合はどうなるでしょうか。確定申告の期限は、1月1日から12月31日までの1年間の所得を合算し、それに対する税額を計算した後、翌年の2月16日から3月15日の間に申告・納税します。

確定申告は期限が過ぎた後でもできます。ただし、その場合でも、無申告加算税のほか、延滞税が課せられる場合があります。ただし、税務署から言われる前に自主的に申告を行った場合は、これらの罰則がなかったり低かったりするようです。

12 黙っていたらばれないの? 脱税できる?

結論から言えば、答えは「ノー」です。必ずばれます。なぜなら、投資家一人ひとりの取引損益などはすべて、税務署に報告されているからです。

2008年度所得税法改正に伴い、支払調書制度の整備が行われ、店頭外国為替証拠金取引を取扱う金融商品取引業者(FX会社)は、2009年1月1日より、投資家の取引損益などを記載した「支払調書」を税務署に提出することが義務付けられました。ほとんどのFX会社では、1カ月ごとに投資家の取引損益、スワップ損益を「支払調書」に記載の税務署へ提出しています。

支払調書には投資家の名前や住所が記載されています。また、証券会社などでは、国内外の株式・債券、利子・配当金、投資信託、先物取引、オプション取引、カバードワラントなどの取引の損益を支払調書として税務署に提出しています。つまり、「全部見られている」と考えたほうがいいでしょう

13 マイナンバーの導入も正しく納税していれば恐れる必要なし

2016年分以降、確定申告を行う際には、マイナンバーの記載や本人確認書類の提示又は写しの添付が必要となりました。マイナンバーが導入されることで個人の資産がガラス張りになり、課税強化につながるとも言われました。ただ、サラリーマンはもともと収入が丸裸で源泉徴収されています。きちんと納税していればマイナンバー導入を怖がる必要はありません。

ただし、配偶者や親、子どもなどの口座を名義だけ借りて開設し、非課税の範囲内で取引をするといったことはできなくなるので注意しましょう。配偶者や子ども名義の銀行口座にお金を移すといったことも、相続税の脱税と見なされることがあります。

14 海外のFX会社の取引まではわからない?

支払調書制度がなかったり国内のマイナンバー制度が及ばない海外のFX会社を利用すれば、課税は逃れられるでしょうか。これも、なかなかなか難しいところです。というのは、FX会社の取引内容は隠せても、お金の流れは隠せないからです。

巨額のお金を日本に送金しようとすると、日本の税務当局に報告されます。折しも、パナマ文書やマネーロンダリングの問題から、世界各国の税務当局間で口座情報を共有する仕組みが構築されようとしています。ここでは、各国の金融機関が保有している個人や法人の氏名、住所、納税者番号、口座残高、利子・配当の受取額などまでがすべて報告されます。国外に財産を隠すといったことが困難になりそうです。

ちなみに海外のFX会社で得た所得は、申告分離課税ではなく、総合課税となります。また、他の金融商品との損益の合算や損失の繰り越しもできません。

15 慣れれば簡単。FXの確定申告

FXで一定の収入を得た場合は無申告にならないよう、また、損失となった場合でもそれを繰り越せるよう、毎年きちんと確定申告をするようにしましょう。

確定申告の準備としてはまず、前述したように自分が確定申告しなければならないのかをまず確認します。所得が一定の範囲内であれば確定申告は不要です。ただし、損失になりそれを繰り越したい場合は確定申告を毎年行う必要があります。

確定申告を行う前に、利用しているFX会社すべての年間損益や手数料を調べます。FX会社のほとんどで、インターネット上で「年間損益報告書(年間取引報告書などと呼ばれることもあります)」をダウンロードできます。FX会社によっては紙に打ち出して郵送してくれるところもあります。

そのほか、FX取引に使った経費をまとめておきます。領収書や銀行引き落とし、クレジットカードの明細などを集めて主要な品目(勘定科目)ごとに合計を出しておくといいでしょう。

確定申告書を作成する場合には、紙の書類に手書きで書き込む方法と、国税庁のWeb上で確定申告書を作成する方法があります。Webサイトでは、収入、経費などの額のほか、必要事項を入力するだけで、自動的に納税額も算出した申告書を作成してくれます。さらに「e-Tax(電子申告)」を利用すれば、ネットでそのまま申告できるため、申告書を郵送したり税務署に提出しに行く必要もなく便利です。

16 まとめ

税金についてあまり考えたことがないかもしれませんが、FX取引で安定した収益を得られるようになれば必ず直面する問題です。ここで紹介したように、毎年きちんと申告していれば、あとから「しまった」ということにはなりません。

「勝ち組トレーダー」になるためにも、今からしっかりと準備しておきましょう。今負けている人でも、損失の繰り越しから始めるといいでしょう。

投信1編集部

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