テイラー氏は、1990年代前半までは事実上のルールベースによる政策運営が実施され、うまく機能していたと述べています。それが、2003年から2005年にかけて、暗黙のルールが無視されて、裁量的な金融政策がとられた結果、政策金利は適正な水準ではなく著しく低い水準にとどまることになったと指摘しています。

同氏は、この超低金利政策が未曾有のバブルを発生させ、大不況を引き起こしたと考えており、責任の所在はFRBにあるにもかかわらず、まったくの知らん顔なのが気に入らないようです。二度とこのような失態を招かないために、FRBはしかっりと議会によって監視されるべきだ、というのがテイラー氏の主張です。

FRBの監督を強化することが目的であり、テイラー・ルールの導入はその手段に過ぎないといえそうです。

テイラー・ルールは手段であって目的ではない、改革の一環

次期FRB議長を巡っては、テイラー氏なら利上げペースが加速しドル高・円安、パウエル氏なら利上げペースは緩やかでドル安・円高、といったところで議論が終わってしまうことが多いのですが、実はどちらが議長になっても利上げペースに大きな違いはないのかもしれません。

また、この両名は正副議長となる可能性もありますので、二者択一で考えるのも適切ではなさそうです。

トランプ大統領が指名したクオールズ副議長がテイラー・ルールを支持しているほか、共和党が上院で多数を占めていることを踏まえると、FRB理事の大半がテイラー・ルールの支持に回ることが見込まれます。

イエレン議長が退任した場合には、トランプ大統領は7人の理事のうちあと4人を指名できるからです。したがって、誰が議長になろうともテイラー・ルール導入の議論が進展していくことになりそうです。

ただし、テイラー・ルールは一般に伝えられているような機械的な金融政策とは異なり、導入されたとしても利上げペースが加速するとは限らないようです。

テイラー・ルールの導入は金融政策の大転換ではありますが、FRBの監督強化とセットで考える必要があり、FRB改革の一環と位置づけられるでしょう。

LIMO編集部