ゆとり教育で消えた筆記体、不都合は何ひとつないのか

”教えるゆとり教育”があってもいいのでは?

ゆとり教育で中学英語から消えた筆記体

ブロック体と呼ばれるA、B、C……。楷書体あるいは活字体とも言い、よく目にするアルファベットです。アルファベットにはブロック体のほかに、筆記体もあることは周知のとおりです。

筆記体は近頃、見かける機会がめっきり少なくなりました。学校でも教えていません。いわゆるゆとり教育の一環として15年ほど前に学習指導要領から消えたためです。

脱ゆとり教育へと方針変更された2002年にも他の項目が復活するなかで、筆記体が復活することはありませんでした。「アルファベットの活字体の大文字及び小文字」を教えればいいということになっています(学習指導要領)。

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身近なところで状況を尋ねてみると、都内の公立中学校で教えている例はまずないようです。一部の私立中学校では教えている例もありましたが、せいぜい1コマを費やした程度。その後の英語授業でも使っているという例はありませんでした。地方では一部の中学校で教えている例もありましたが、その後の授業で使っているという中学校はやはりありませんでした。

だからといって、筆記体の書ける中学生がひとりもいないわけではありません。独学で習得したアルファベットを書き、「かっこいいだろぉ」と得意げに見せてくれました。中学生、とりわけ男子には筆記体への関心の高い子どもがいるようです。

英語圏でも筆記体は使われなくなっているようだが・・・

ゆとり教育で筆記体が除外され、脱ゆとり教育でも復活しなかった正式な理由は定かではありません。巷で言われているところでは、詰め込み教育による中学生の負担を軽減するほか、ネイティブの英語圏でも、とりわけ若者層は筆記体を使わなくなっていることがあるようです。

もっとも、詳細に見ていくと、英語圏といっても主に米国で使われなくなっただけで、英国では使われているそうです。さらに英語圏でないヨーロッパやアジアなどでも筆記体は使われているようです。

また、実際に書かなくても、看板や商号などのネーミングに一種の飾り文字として使用されるのは珍しいことではありません。もし完全に筆記体を知らない人ばかりになってしまったら、海外に行ったとき、看板や商号が読めなくて困ることもあるのではないかと心配にならないでもありません。

そして、三角比。筆記体を知らない中学生にサイン、コサイン、タンジェントは、どう教えているのでしょうか。

英語で習わない筆記体を、数学で習得する中学生

直角三角形の3辺のうち2つの辺の比を表す、サイン(sin)、コサイン(cos)、タンジェント(tan)。頭文字の筆記体を使って説明された記憶のある人はかなり多いのではないでしょうか。

筆記体を知らない中学生に教えるとき、CやTは形が似ているのでいいとしても、問題はSです。ブロック体と筆記体ではかなり形が異なります。

中学生に尋ねたところ、筆記体を使って説明するのは邪道とばかり、図形理論として三角比を説明する学校もありましたが、少数派。また三角比を説明するために筆記体A~Zをあらためて教える学校、そしてS、C、Tのみを教える学校もありましたが、これも少数派でした。

大半の学校では、「(知っているものとして説明する)先生の話を聞いているうちに、こんなSやC、Tもあるんだとなんとなくわかった」というものです。子どもならでの柔軟な頭脳のなせるわざでしょう。このままでは、いずれ筆記体を知らない大人ばかりになります。そのとき、固くなった大人の頭脳ではたして、誤解を生まないでスムーズに納得できるのかどうかは疑問です。

”教えるゆとり教育”があってもいい?

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國學院大學法学部卒業。法律系出版社、弁護士事務所勤務を経て、現職に。
ビジネス法務を中心に、ビジネス全般、旅やエンタメなど広く取材・執筆に従事。
現在は埋もれていても100年後に大化け、通説となるようなネタを求めて活動中。