数万人規模の東証一部上場企業から、10人にも満たないベンチャー企業に転職――身近にそういった人がいたら、他人事とはいえ「ずいぶん思い切った行動をしたな」と思ったり「お給料はどうなるんだ」という人もいるのではないでしょうか。

大企業からベンチャー企業に転職して感じた3つの違い(仕事・人間関係編)」でも紹介したAさん(40代・女性)に、お金に関する話も聞いてみました。

関西の大企業に勤めていたころ

Aさんは関西の私立大学を卒業後、地元では名の知られた東証一部上場企業にいわゆる総合職として入社。30代で別の東証一部上場企業に転職しています。「年収1000万円以上の人も結構いたのではないでしょうか」とAさん。

周囲には「お受験」を経てお子さんを私立小学校に通わせている人も多く「ゆとりがあるなあと感じていました」と話します。

その一方で、独身の人にはお金をすべて趣味や飲み代に使い貯金ゼロだと言っている人もいたそうです。「そのうちの一人に最近お会いしたら『もらうお金が増えたので使い切れなくなって貯まってきた』と話していてのけぞりました。もちろんこういう人ばかりではないですけれど」

Aさん自身も独身。「一人なので正直なところ家計もそれほど気にしたことがなく、給与から天引きされる社内預金以外には貯蓄や投資などもしておらず、資産形成の必要もあまり意識していなかった」といいます。

ベンチャーへの転職で年収ダウン

今回の転職でAさんの年収は「転職直前に比べると2割以上ダウンした」といいます。

「数年後には前の職場のときより稼いでやる!という気持ちもあったので年収ダウンもさほど気にしませんでしたが、これは私が独身だからかもしれません。もし一家の大黒柱でお子さんの教育費がかさむ時期などであれば、ためらう人も多いでしょうね」

ただ「転職前は昇進して給料が上がっても税金も増えてあまり余裕は感じなかった」ともAさんは話します。「実は今回の転職は、税金をはっきり意識するきっかけにもなりました。正直これまではまったく気にしてこなかったのですが、節税できるものはしたほうがいいなと」

東京への転居で家賃が大幅アップ

一方「年収ダウンより正直痛い」とAさんが話すのは転職に伴う家賃の変化です。Aさんは今回のベンチャー企業への転職で関西から東京に転居。その結果、家賃が大幅に上がってしまったのです。

「関西では駅徒歩5分、職場までドアツードアで30分の場所に住んでいたのですが、そんな物件は東京では目が飛び出るほどの値段。今は最寄り駅から徒歩で20分かかる物件に住んでいます。不動産屋さんに『通勤する人には正直おすすめしない』と言われたのですが、環境や設備重視で。家賃は3割増しです…。知人でフリーランスになって東京に出てきた人がいるのですが、その人も『部屋が狭くなったのに家賃は高くなった』とこぼしていましたね。これはベンチャーへの転職だからというわけではなく、東京に引っ越してきた人の多くが感じていることだと思いますが」

Aさんは次回の更新時期までに「安く」「駅から近い」物件に引っ越そうと賃貸物件サイトをチェックする毎日なのだそうです。

「お金に働いてもらう」ことに俄然興味を持った

年収ダウンに加えて家賃アップというダブルパンチ状態のAさんですが、その危機感からお金に対する考え方にも大きな変化があったといいます。

「これまでは天引で楽だからというような理由で利率の低い社内預金を続けていました。そこそこ貯められはしましたが、これからを考えたときに定期預金で『殖える』ことはないなと。正直今が人生で一番『お金』に興味を持っているし『お金に働いてもらう方法』も真剣に考えています」とAさん。転職後に始めたのはiDeCo、ふるさと納税、投信つみたて、NISAなど様々だといいます。

「まだ初心者ですが、思った以上に手ごたえがあります。もし新卒の時からこうした資産形成的なものをはじめていたら、きっとものすごく違ったんでしょうね!でも後悔してもはじまらないし、今からでもやるしかない。もしかしたらあと50年生きるかもしれないわけですし…。最近は仮想通貨も勉強を始めました」

まとめにかえて

いかがでしたか。転職による年収ダウンは一時的なものだと思い切って転職したとAさんはいいますが「実際のところ何年も続くと結構厳しいかも」というのが正直な感想のようです。ただ、そのことがきっかけで投資や資産形成に対する意識も大きく変わったようです。資産形成のきっかけはこうした「危機感」からはじまるものなのかもしれません。

LIMO編集部