なぜ今メガバンクは大規模リストラを模索するのか。銀行が生き残るための策とは?

メガバンク等がテクノロジーを活用して構造改革-業務効率化に取り組み、人員の再配分などを図ろうとしています。その背景には何があるのでしょうか。今回は『銀行はこれからどうなるのか』等の著書があるテクノロジーアナリストの泉田良輔氏に話を伺いました。

メガバンクが大規模な構造改革を計画する背景とは

――なぜメガバンクは収益が出ているにもかかわらず構造改革を進めようとしているのでしょうか。

泉田:銀行の本業の収益を表す資金利益を過去10年程度のスパンで見ると、メガバンクグループでは拡大しているグループもあれば、若干減少しているグループもあります。後者の場合、経営者の危機意識には強いものがあるでしょう。

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実際、貸し出しを伸ばせない、利鞘が改善しない、(預金等を獲得しても)運用する先で十分な利回りが得られないなど、銀行経営者からすれば三重苦ともいえる状況です。

アベノミクスの評価は様々ですが、景気が良いといわれる中、現在の体制で収益を伸ばす絵が描けないということであれば、株主などの目を意識してコストを削減する施策を検討するのが経営者の仕事といえます。

加えて、FinTech(フィンテック)という言葉も最近頻繁に使われるようになってきましたが、テクノロジーを活用することで業務効率を改善させようという狙いもあるのでしょう。

もっとも、金融機関は以前から大規模なICT(情報通信技術)投資をしてきていますので、金融業界はITベンダーからすれば主要産業であり、いい顧客であったはずです。今後はどういった分野に投資をしていくのか、注目しています。

銀行の競合はもはや銀行ではない-テクノロジーがもたらした脅威とは

――銀行はテクノロジーを活用すれば安泰なのでしょうか。

泉田:話は少しそれるかもしれませんが、フィンテックが注目されている背景を改めて考える必要があります。

リーマンショック以降、グローバルで特に顕著となったのが低金利です。資産形成をするために銀行に預金を預けておくという選択肢の魅力は薄れました。

先進国を中心に世界経済が低成長となり、低金利となったのはご承知の通りですし、インフレもマイルドになりました。そのため、金利がつかなくても利便性で優れていればプリペイドにチャージしますし、ポイントを貯めておいても価値は毀損しにくくなっています。

たとえば、ECでアマゾンのサービスを使われる方は分かると思いますが、買い物をした額に応じてポイントがつきます。また、毎月アマゾンで買い物する分だけを事前にチャージしておけばポイントがもらえます。

一方、給与を銀行口座に預け、必要な分だけ都度引き出すという使い方をしていても利子はほとんどつきません。ましてや、ATMでの引き出しには手数料がかかることもあります。

こうして考えると、特にお金をどこに預けておくかという観点では、アマゾンも銀行の競合であるといえます。銀行がICTに積極的に投資をしていくという姿勢が見えてはいますが、同様に積極的なICT投資をしているグローバルのネット企業と伍していけるのか、競争優位性は何なのかを考えないといけないでしょう。

中国では、アリペイやWeChatといったスマホのアプリ上で決済や資産運用などが行われています。つまり、将来どのようなプレーヤーが銀行の競合になるのか、想像力を働かせる必要があるのです。

銀行の未来の4つのタイプ

――銀行が生き残るために必要な手段とは何でしょうか。

泉田:私は今後の銀行の姿を大きく4つに分けています。

1つは「モバイル型」で個人ユーザーに対して決済、資産形成、貸出のプラットフォームとなりうる姿。2つ目に「クラウド型」の法人貸出プラットフォーム。3つ目は「プライベートバンク型」で富裕層の資産運用ソリューションを提供するあり方。最後に「投資銀行型」として経営コンサルティングと資金調達をサポートする役割です。

最近は特に「機械 vs. 人間」という構図が描かれますが、人間が付加価値を出せるのは「プライベートバンク型」と「投資銀行型」です。

仮に、将来人間の仕事がその2つの領域に集約されるとしたら、今の銀行員全員がそうしたスキルやネットワークを持つ人材というわけにはいかないでしょう。その際、現在の人的リソースの配分は正しかったのかという振り返りがあるのではないでしょうか。

銀行はメディアになる!?

――銀行はどのような姿になるのでしょうか。

泉田:現在銀行は主要都市の一等地に店舗を構えていますが、これまで以上にICTを活用することでよりスマートに運営することは可能です。ユーザーからしてみれば、店舗よりもスマホのアプリやウェブサイトの方が接点として重要という人も多くなっていくと思われます。

そうすると、銀行といってもリアルな店舗が第一にイメージされるのではなく、ネット上のメディアやアプリとして捉えられるようになる可能性はあります。

その時に重要なのは、ユーザーとの接点の回数や密度です。繰り返しになりますが、WeChatを例に挙げたように、コミュニケーションツールの側が金融の機能を持つようになれば、接点では明らかにコミュニケーションツールの方に分があります。よって、頻度の小さな決済機能はそちらに飲み込まれる可能性があるでしょう。

――ありがとうございました。

投信1編集部

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