すでに燃料電池バスが運行しているのをご存じですか?

トヨタが東京モーターショー2017で発表したコンセプトモデル「SORA」

筆者撮影(以下同)

東京モーターショー2017で、トヨタがFCバスのコンセプトモデルである「SORA」を発表した。

FCバスというと聞き慣れない言葉だが、FCV(Fuel Cell Vehicle=燃料電池自動車)のバスと考えればいい。ちなみに、FCVとは燃料電池自動車のこと。水素を燃料とし、空気中の酸素と化学反応させることで電気を作り、モーターでタイヤを駆動させる。排出するのは蒸気や水だけという究極のエコカーだ。

ボディ上部にFUEL CELL BUSと表示し、燃料電池バスだということをアピール。

 

リアのルーフにはLEDの電飾が施され、光が変化していく。

 

「SORA」の定員は79人で、座席22人+立席56人+乗務員1人となる。パワートレインとなるモーターの最高出力は154PS×2、最大トルクは34.2kgf・m×2。

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また、外部給電システムを搭載しており、最高出力9kW、供給電力量235kWhほどの高出力で大容量の電源を供給できる。これは災害時に電源としての利用が可能で、電気を生み出せる燃料電池車の強みだ。都内を走るバスの1日の走行距離は150km程度で、それにあわせて「SORA」の航続距離は1回の充填で200kmに決定している。

従来の路線バスとは大きく異なる立体的な造形をしており、特にリアまわりに特徴があり、一目でFCバスだというのがわかる。窓の開閉はなく、そのためボディサイドはかぎりなくフラットになり、とてもスマートな印象を受ける。

展示車両にはホイール部分にカバーが被せられているが、走行時は外されてタイヤが見えるようになる。「SORA」はコンセプトモデルだが、2018年には都内を中心に、東京オリンピックに向け累積で100台以上が導入される予定だ。

リアエンブレムの下には給電用のプラグもあり、災害時には体育館などに繋げば5日間くらいは電気を供給できる。

 

水素はボディサイドにある充填リッドから充填する。タンク内容積は600リッター。

日本が誇る燃料電池車は失敗だったのか?

燃料電池車は、国内ではトヨタとホンダで販売実績がある(リースを含めると日産も)。トヨタ「MIRAI」の一充填における走行距離は約650km、ホンダ「CLARITY FUEL CELL」は約750kmを実現しており、エンジン車との差はほとんどない。ちなみに、電気自動車の日産「リーフ」は約400km。

国内の長距離ドライブでガス欠ならぬ、水素欠になることはまずないだろう。問題は水素を充填する水素ステーションの数で、増えてきたとはいえ、ガソリンスタンドに比べたら圧倒的に少ないのだ。

最近は電気自動車が話題になっているが、これはフランスに続き、イギリスが2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止すると発表したことが大きい。さらにボルボは2019年以降の新モデルに関してはすべて電気自動車とし、BMW傘下のMINIも2019年には電気自動車を生産すると発表している。

電気自動車の販売台数トップの中国も、こういった一連の欧州の流れを汲んで、ガソリン車とディーゼル車の販売禁止を検討している。

次世代のクリーン自動車の需要が急激に高まった結果、燃料電池車と違い、簡単に作れる電気自動車が注目されたに過ぎない感じを受ける。

2011年の震災以降、多くの原発が停止し、LNG(液化天然ガス)、石炭、石油などの化石燃料を燃やすことで発電しているのだが、電気自動車はこの電気を使うことになる。火力発電所では多くの温室効果ガスを発生させ、年々電力コストも上がってきている。

こういった背景を考えると燃料電池車が究極のエコカーと言われるのも納得できる。もちろん水素を作るのにも電気を使うのだが……。

電気自動車(EV)が話題だが、ルートが決まっているバスには燃料電池が最適

電気自動車の製造は、自動車メーカーだけでなく、自動車部品サプライヤーや家電業界、IT業界からの参入が期待されている。ただ、電気自動車のバッテリーは、基本的に金属からできているため重量がかさむ。そのため超小型モビリティには向いているのだが、バスや大型の商用車となると、その分バッテリーも巨大で重くなってしまう。

質量エネルギー効率でいうと水素が一番高く、長距離走行も高速走行も得意なのが燃料電池車の特徴。電気自動車は、燃料電池車やガソリンエジン車に比べて簡単に作れるものの、商用での運用となるとまだまだ課題が多いのも事実なのだ。

いいことづくしの燃料電池車だが、いまいち普及しないのはインフラ整備が遅れているから。これをクリアするには、商用運用で実績を積むのも一つの策だろう。

実は、今回のコンセプトモデルとは違うモデルだが、すでに都内にはFCバスが2台運行している。

路線は東京駅丸の内南口~東京ビッグサイトまでで、どうしても乗ってみたいという方は、都バス運行情報サービスのサイト内にある、車両検索/ラッピングバス検索→商品/企画名選択→FCバスで、現在の運行状況を確認できる。動力は電動モーターではあるが、燃料は水素というFCバスにぜひ乗ってみてほしい。

鈴木 博之

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鈴木 博之

出版社で雑誌の編集者を経験したのちフリーランスとして活動。
現在は自動車雑誌をメインに、オウンドメディアやニュース配信サイトでの記事執筆も行っている、マルチ編集・ライター。