先週は次期FRB議長の指名が発表され、金融市場は概ね穏健派であるパウエル理事の議長指名を好感。株価は日米とも引き続き堅調に推移する中、為替の値動きは緩慢なものになりました。しかし、ドル/円が114円に到達するなど節目価格到達の通貨ペアも見られる点が注目されます。

先週の為替市場振り返り

先週は3日に米雇用統計の発表もありましたが、話題としては次期FRB議長指名が注目を集めました。トランプ大統領は事前予想に挙がっていた穏健派のジェローム・パウエル現理事の指名を発表し、金融市場はこれを概ね好感しています。

個別通貨ペアを見ると、ドル/円は31日に113円を一時的に割れたものの、それが底となりその後は上昇に転じました。翌1日には114円台を回復し、そのまま114円台で値動きが止まり週の取引を終えています。

ユーロ/ドルは先々週のドラギECB総裁会見後の急落から回復はならず、小動きの展開でレンジ相場を形成しました。しかし3日の米雇用統計発表後に下落し、ドラギ総裁会見後の安値付近で週の取引を終了。次の値動きに向けエネルギーを蓄積する週となりました。

ドル/円の過去1年間の推移

日米ともに株価が堅調に推移

日米ともに企業決算発表が続いていますが、各企業の業績は好調です。特に、日本企業には業績を上方修正する銘柄が多く、年初来高値更新も続出しています。

総選挙後の株価を心配する声も多かったものの、日経平均は上昇を続け3日には22,539円と約21年振りに22,500円台を回復。日経平均は1996年の橋本内閣当時の水準となりました。また、東証1部の売買代金は連日3兆円台を超えており、1〜2兆円台が継続していたこれまでの相場環境と比べ力強さを感じます。

こうした株価上昇の一方、ドル/円はそれまでの節目価格の114円台で頭を押さえられており、それほど円安は進んでいません。株高・円安という株価とドル/円の相関が崩れるような値動きが継続していると言えます。

今週の為替市場見通し

今週は5日にトランプ大統領が来日し、その後は韓国・中国などを訪問。このアジア歴訪の最中に北朝鮮がミサイル発射や核実験など新たな動きを見せるのかに注目が集まります。

その他では、トランプ政権による税制改革法案の行方が注目を浴びつつあります。先週、法人税を35→20%まで一気に下げる法案を共和党が提出。トランプ政権と共和党の足並みが揃うことになり、米国の株価上昇はこうした税制改革への期待感が大きな要因ともなりました。

今後、共和党が過半数を握る下院では同法案成立の可能性は高いと考えられますが、問題は上院です。定数100のうち共和党は52議席ですが、上院の有力者とトランプ政権の関係が良好とは言えず造反の可能性もあるため、法案成立が確実視できるような状況ではありません。税制改革案については上院の議論の行方を注視する必要があります。

個別通貨ペアでは、節目価格である114円台に位置しているドル/円の行方が注目されます。日経平均が22,500円台にまで上昇する一方、ドル/円は5月・7月にも超えられなかった114円台の天井に阻まれ足踏みしている状態です。

ドル/円が114円台の節目価格を上方ブレイクするのか、これまと同様に反転するのか、今週の見所と言えます。

また、ユーロ/ドルは先々週のドラギ総裁会見後に下落した底値付近で先週の取引を終えており、今週は下方ブレイクして新たな底値を探る値動きとなるかに注目です。先週はそれほど大きな値動きがなかったため、新たな底値を探る際は大きな下落となる可能性もあります。

まとめ

良好な企業決算を背景に株価は日米ともに上昇が継続する一方で、為替は緩慢な値動きとなっています。ただし、ドル/円が114円台に乗るなど、値動きに変化が生じるポイントに到達しつつあります。

今週も為替市場は株式市場に比べ値動きが少ない展開となる可能性がありますが、ドル/円など節目価格に位置している通貨ペアも存在するため、節目価格到達を契機とする値動きに注目したいと思います。

石井 僚一