「紙離れ」の中でも減らないトイレットペーパーの需要

災害時への備えはお忘れなく

ペーパーレス化が進んでも減らない「紙」

11月10日は「トイレの日」です。「いいトイレ」の語呂合せを由来として、1986年に日本トイレ協会が制定しています。そこで、今回はトイレに欠かせないトイレットペーパーについて考えてみたいと思います。

トイレットペーパーの需要は紙全体のわずか7%というニッチ市場ですが、下図のように2008年以降の年間生産の推移(出所:経済産業省)を見ると極めて堅調です。

紙全体では、スマホの普及で紙の新聞や雑誌が売れなくなったり、経費節減やクラウド化の進展で電子データ情報を共有する流れが加速していることなどにより、「紙離れ」が進んでいます。

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実際、経済産業省のデータを見ると、紙全体(新聞用紙、印刷・情報用紙、包装用紙、衛生用紙、その他紙合計)の生産量※は、リーマンショック直前の2008年に1,883万トンあったものが、2016年には1,470万トンと2割強も減少しています。

このように、業界全体では厳しい状態となっていますが、同じ紙でもトイレットペーパーの生産は意外に堅調です。その生産量は、2008年の104万トンに対して2016年は約105万トンと、わずかですがリーマンショック前の水準を上回っているのです。

※ 製紙パルプ、板紙、段ボールは含まれない

なぜトイレットペーパーの需要は減らないのか

では、なぜトイレットペーパーの生産が堅調、すなわち需要が落ちないのかを改めて考えてみたいと思います。理由は以下の3点が考えられます。

第1は、代替品がないためです。新聞や雑誌はスマホで代替することができますが、おしりを拭くためにはトイレットペーパー以外のモノはありません。シャワートイレという新たなテクノロジーが生まれましたが、それでもトイレットペーパーに完全に取って代わることにはなりませんでした。

第2は、シェア(共有)できないものだからです。最近では自動車、家などをシェアするシェアリングエコノミーが広がりを見せていますが、トイレットペーパーはそうしたトレンドとは無縁です。

第3は、節約のインセンティブが働かないためです。企業では、景気が悪くなると経費節減のためにコピー用紙の使用量を減らそうとすることがありますが、トイレットペーパーについてはそうしたことは耳にしません。というのは、節約したとしても(1回あたりの使用量を減らすなど)、その効果はさほど大きくないからです。

ちなみに、上述の年間生産量を日本の人口で割って求められるトイレットペーパーの1人当たりの年間使用量は約8キログラム(およそ50ロール、1ロール:約150g)、金額では1300円程度です。

つまり、頑張って少ない量でおしりを拭いたところで、年間で減らせる金額はわずか数百円に留まるのです。これでは、不況になっても節約志向が高まることは考えられないでしょう。

必需品だからこそ災害時の備えをお忘れなく

こうしたことから、トイレットペーパーは世の中のペーパーレス化の動きとは関係なく、今後も堅調な需要が見込まれますが、災害時に起きる可能性がある供給不足には十分に注意したいものです。

忘れてはならないのは、阪神・淡路大震災で被災者が困ったのは食糧や衣服よりもトイレ不足であったことです。また、東日本大震災時には、被災地のみならず全国的にトイレットペーパー不足が起きたことも記憶に新しいところです。

経済産業省によると、トイレットペーパー生産の約4割は静岡県で行われています。このため、万が一、東海地震などで静岡県が被災した場合は、深刻な供給不足の恐れがあるとされています。

こうしたリスクを考慮し、トイレットペーパー業界団体(日本家庭紙工業会)では、「トイレットペーパー供給継続計画」を策定し、災害の際には増産等を行うことが申し合わされていますが、それでも1か月程度の混乱は避けられないようです。

家庭でも、1か月分くらいのトイレットペーパーの備蓄を行うことは忘れないでおきたいものです。

和泉 美治

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和泉 美治

同志社大学文学部卒業後、エルコインターナショナル (現:京セラエルコ) に入社。英国バーミンガム大学にてMBA取得。
その後UBSフィリップスアンドドリュー証券 (現:UBS証券) に入社し、調査部にてエレクトロニクスセクターを担当。2002年より2013年までJ.P.モルガンにて産業用エレクトロニクス及び民生エレクトロニクスセクターを担当。
日本証券アナリスト協会検定会員。