日米同盟をどう見るか〜トランプ大統領アジア歴訪後の極東情勢に備えるために

先般、トランプ米大統領が就任後初めて来日した。同大統領のアジア歴訪はいかなる意味を持つのか、そしてその後に何があり得るのかは多くの国民の関心事であろう。

同盟国とはいえ国益が衝突する国際政治の世界では、公表ベースの情報の他に、より重要な案件について首脳間で議論されたと見るのが自然である。とりわけ両国に関わる案件が軍事や安全保障に関わる場合には、敵(対象国や対象の組織)を利するようなガラス張りの議論などあり得ないのである。

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今回は基礎編として、以下に日米同盟の見方をまとめる。

アメリカの視点

アメリカ合衆国は日本という国をどう見ているか。朝鮮半島をはじめとする東アジアの情勢が極めて流動的かつ緊迫している今日、我々が米国の戦略的な視点を窺い知ることは、日本の方向性を探る時に欠いてはならない視点である。

まず、日本列島が有する地政学的な価値は、我々が思う以上に大きい。ここに住む人々はご先祖様に感謝しなければならない。とても裕福な家庭、資産家の家に生まれたようなものである。他国がどんなに頑張っても、こればかりは真似をすることができない。しかし、前近代的な百年前の手段・手法、即ち力で現状を変えようと躍起になっている国もある。だから油断は禁物なのである。

大陸から日本列島を見ると、弓の弧のように明らかに大陸を扼した形になっている。とりわけロシアにとっては、極東最大の軍港であるウラジオストクから太平洋への出口(チョーク・ポイント)を日本列島が抑えている。ロシアの艦船が大洋に出るためには、宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡のいずれかを通過しなければならない。この構図は日露戦争の頃から何ら変わってないのである。

目を転じてもうひとつの大国・中国の場合、南の方は少し開いているが大部は日本列島が塞いでいる。このことが持つ軍事的な意味・意義は半端ではない。この国が言う第1列島線、第2列島線の根源はここにある。かつて旧ロシアが不凍港を渇望したのと同じである。

次に、ここ(日本)に生息する人間の民度はどうか。かつて白人に刃をむいて勝利を収めた、世界で最初の有色人種の国であり国民である。日清戦争、日露戦争で勝利を収め、第1次世界大戦で漁夫の利を得て徐々に戦略的思考を欠いた日本は、大国アメリカに挑んだが、結果はご存知の通り。

しかし、この戦争で完膚なきまでに打ちのめされた日本は、廃墟の中から立ち上がって世界有数の経済大国にのし上がった。これらはいずれも、日本人が世界的に高い民度を有していることを示している。

その日本が、現在保有しているのは各種のインフラ(米軍基地及び基地従業員を含む)、金融資産、技術力などなど。少なくとも現在の国際情勢下において、とりわけ中国の台頭が著しい今日、アメリカがこれら一切合切をチャラにするメリットは見当たらない。

ただし、アメリカが「強いアメリカ」という、誇りと矜持を維持している限りという条件付きである。旧聞に属するが、どなたかが言ったような「2位じゃダメなんですか」と、アメリカの思考がシュリンクしていくと情勢は大きく変わる。

日本の視点

まずは、空想で国家・国民を護ることはできない。憲法9条で日本の平和が維持できるのであれば、こんな安上がりの防衛力はない。あなたの家のドアに「カギはかけておりません」と貼り紙をしたらどうなるか。それは「いつでもどうぞ」と理解される。

そうは言いつつ、家の中で四六時中拳銃をもって構えておれば、プロの盗人は入らないかもしれない。それでもリスクは伴う。国防とは隙間のない対策(護り)を講じること。これに尽きる。もちろん、軍事的な措置だけを指すものではない。したがって総合安全保障という。

先に述べた米国の視点(日本を手放すメリットはない)をよしとしても、当事者である我々日本人は決して安心してはいけない。そんなものは何ら担保にならない。同盟関係は、基本的にウィン-ウィンで成り立っている。お互いに助け合うのが、同盟の基本的な考え方である。

よく言われる「我々に共通の政治形態(民主主義)と経済(自由主義経済)」は建前に過ぎない。理念としては通じるが、この美しい言葉を額面通りに受け取ってはいけない。国際政治はそれほど優しくはない、ということである。

同盟国アメリカが日本を、「米国の青年の血を流す価値のない国」と判断すれば同盟関係は一夜にして消滅する。最も重要なことは、同盟といえども、自らを守る意志のない国は誰も助けてくれないということである。それが世界の常識である。

したがって、日本には同盟を維持するために、同盟をより強固なものとするための不断の努力が求められる。それは単純に、米国追従とかアメリカに従属とか、軽い言葉で定義されるものではない。当然のことながら、「不断の努力」には追従・従属国家にならないための国の在り方も含まれる。

と言うと、すぐに防衛費を2倍にすべきだ、やれ核を持て、空母を持てなどと騒ぐ輩がいるが、ことはそれほど単純な話ではない。ただ、我々が注目すべきこと、留意すべきことは両国の世論である。政治家が民に選ばれた立場である以上、票には勝てないのである。

日本人の多くは、アメリカ人は陽気でフレンドリーで、世界一が好きで純粋な国民と思っているだろう。東日本大震災の時も、アメリカはいち早く三陸沖に駆けつけてトモダチ作戦をやってくれた。そのとおりである。だが一方で、彼らは戦略的に思考している。単なる陽気なおじさん(おばさん)ではないのだ。そこを忘れると、足をすくわれることになりかねない。

かつての日本と同じ轍を踏まないために

もし仮に日本がアングロサクソン、とりわけ米国と手を切る(同盟を破棄する、あるいは破棄を余儀なくされる)事態に至ったならば、この国は果たしてどこに向かうのだろうか?

再度強調するが、同盟は相互に利益がある場合にのみ成立する。自衛隊が建設の時代、成長している時代には「思いやり予算」と基地の提供だけでよかったかもしれない。事実我々は、それで平和の配当を得てきた。しかしこれからは、それではよしとしない時代に入る。いや、既に入っていることを認識しなければならない。

かつて我が国は、イギリスと同盟を結んでいた。細部については次回以降に譲るが、我々は日英同盟の破棄(消滅)を余儀なくされて、極めて大きな代償を払うことになった。国がなくなりそうになったのである。そうさせたのは、現在日本の重要なパートナーであるアメリカなのだ。我々は歴史に学ばなければいけない。同じ轍を踏んではいけない。

トランプ大統領と安倍首相の間で、いかなる合意が得られたのか。おいおい我々にも漏れ聞こえてくるだろう。水面下の結果次第では、事態の急変があるかもしれない。

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