「尊敬され、誇りを持てる会社になる」〜 LIXILの起業家CEOが放った3つのメッセージとは?

LIXILグループが中期経営計画を発表

2017年11月6日、シャワートイレなどを手掛けるLIXILグループ(5938)は、決算と同時に今後3年間の中期経営計画を発表しました。

同社が中計を発表するのは2015年9月以来となり、また、2016年から同社の社長兼CEOとなった瀬戸欣哉氏が発表するのは今回が初めてとなります。

瀬戸氏は、工具などの通販で知られるMonotaRO(3064)をゼロから立ち上げ、2000年の創業からわすか15年で時価総額約4,000億円の企業に育て上げた「起業家」です。

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ただし、MonotaROは連結従業員数が約360人の小世帯であるのに対して、LIXILは約6万人と桁違いに大きな会社です。また、歴史も長く、事業ポートフォリオも複雑です。

このため、起業家としての成功体験がストレートに活かせるとは限りません。とはいえ、今回の説明会では同社の変革(トランスフォーメーション)を考えるうえで、印象深い3つのメッセージがありました。そこからは、持続的な成長を可能にする会社を目指すという強い意気込みを感じ取ることができます。

以下、その3つのメッセージを紹介します。

差別化できれば利益率は上がる

第1は利益率に対する強いこだわりが示されたことです。今回の中計では最終年度の経営目標数値として、事業利益率(2017年実績4.9%→2021年3月期目標7.5%)、ROE(同7.9%→10%以上)、売上高(同1.79兆円→1.74兆円)など、合計5つの経営目標指標が掲げられましたが、このなかで最優先させるのは「事業利益率の改善」であるとされました。

では、なぜ売上拡大ではなく、利益率の改善が優先されるのでしょうか。

その理由として瀬戸氏は、「利益率はその会社の基礎体力を表し、持続的な成長を可能とする源泉であり武器である」とコメントしていました。

また、利益率を改善させるためには、「差別化された商品・サービス・ビジネスモデル」を持つことが最も大切であるとも付け加えました。

これらの発言からは、強い製品・サービス・ビジネスモデルを確立する前に売上拡大だけを求めては、持続的な成長は達成できないという、これまでの起業の体験に裏付けられた信念があるのを感じ取ることができます。

ちなみに瀬戸氏は、差別化された製品・サービス・ビジネスモデルを築き上げ、利益率を改善することさえできれば、その後は成長はおのずとついてくるともコメントしていました。

心から「良い会社になる」努力をする

第2は、社会にとって良い会社になるというCSR(企業の社会的な責任)的な考え方が重要だと強調されたことです。

同社では、一台数ドルのトイレをアフリカなどの最貧国に普及させる取り組みを行っていますが、その目的は「尊敬され、誇りを持てる会社」にするためとされています。

「きれいごとを言っている」とお感じの方もいるかもしれませんが、瀬戸氏は本気です。というのは、世界的に見ても、伸びている企業の多くがESG(環境・社会・ガバナンス)を重視しており、投資家もまた、そうした会社ではないと投資をしないということを、起業家としての経験や、同社の社長就任後の投資家ミーティングなどから実感しているためです。

つまり、建前だけのCSR経営ではなく、心から「良い会社」になる努力を行うことが成長企業となるための条件であると考えているのです。

住宅設備産業は魅力のある業界である

第3は、同社が事業を展開する住宅設備産業は、これからも成長する魅力ある市場であると定義されていたことです。

人口減が続く日本市場だけを見ていると衰退産業と思いがちですが、世界に目を転ずると人口は増加し、経済は成長し、結果として中流人口が増えています。また、衣・食・住のうち、衣と食が満たされると、次は品質の高い「住」が必要とされるようになります。

また、 シェアリングエコノミー化は進むものの、トイレなどは実物を所有することが依然重要な産業であり続ける可能性が高いとも考えられます。

このため、瀬戸氏は、住宅建材および⽔まわりは、世界の中流層⼈⼝の急増により大きな成⻑が⾒込める産業と捉えているのです。

もちろん、業界が伸びても同社が伸びるとは限りません。このため、ここでも上述の勝てる商品、勝てるサービス、勝てるビジネスモデルに注力することが強調されていました。

今後の注目点

中計発表後の同社の株価は2日連続して下落していたことから、残念ながらこのプレゼンテーションはあまり「マーケット受け」が良いものではなかったようです。

その理由としては、今回のプレゼンテーションが、やや概念的過ぎたことや、コスト削減策などの具体策が示されなかったことが一因と推察されます。つまり、数値重視の証券アナリストには受けが悪かったということになります。

とはいえ、企業のトランスフォーメーションには、行動指針、つまり「哲学」が必要であり、そうした観点では、今回のプレゼンテーションは合格点であったようにも思われます。

いずれにせよ、重要なのは、何度も強調された「差別化」が本当に実現されていくのかということです。そうした観点で、今後も同社の成長企業への変革を目指す取り組みに注目していきたいと思います。

和泉 美治

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和泉 美治

同志社大学文学部卒業後、エルコインターナショナル (現:京セラエルコ) に入社。英国バーミンガム大学にてMBA取得。
その後UBSフィリップスアンドドリュー証券 (現:UBS証券) に入社し、調査部にてエレクトロニクスセクターを担当。2002年より2013年までJ.P.モルガンにて産業用エレクトロニクス及び民生エレクトロニクスセクターを担当。
日本証券アナリスト協会検定会員。