先週はドル/円が節目価格の114円台で反落。新ためて114円台の壁の堅さを認識させられる結果となりました。一方、米国では法人減税を織り込む形で株価が上昇しており、トランプ政権と法人減税の1年先送りを主張している共和党上院との交渉の行方が注目されます。

先週の為替市場振り返り

先週の為替市場は引き続き落ち着いた値動きでした。イベント的にはトランプ大統領のアジア訪問がありましたが、北朝鮮が具体的な動きを見せず、為替市場を大きく動かす要因とはなっていません。

個別の通貨ペアを見ると、ドル/円は節目の114円台に到達し、上方ブレイクで115円台突入の期待感が高まりました。しかし結果は、6日の114.7円台を天井に反落。114円台の壁が予想以上に固いことが改めて認識される週となりました。

ユーロ/ドルは9月から継続していた下落がいったん反発し、週足で陽線を形成。大きな陽線ではないため単なる戻しの可能性はありますが、今年8月まで続いた上昇トレンドの再開に向けた値動きが始まるのか、注意を要する状況となっています。

ドル/円の過去6カ月間の推移

サウジで政変、原油価格(WTI)が57ドルに

過去50ドル付近に到達すると下落を繰り返していた原油価格(WTI)ですが、10月以来50ドルを超える状況が続いていました。そんな中、中東最大の産油国サウジアラビアで政変が発生。政変による地政学リスク上昇のため、原油価格も57ドル台にまで上昇しました。

多くの政府関係者や王族が一斉逮捕される中、投資家として知られるアルワリード王子の拘束も伝わっており、今後オイルマネーを通じた金融市場への影響が懸念されます。

今週の為替市場の見通し

今週、定例イベントとしては15日に米国で10月米消費者物価指数および小売売上高の発表を控えています。ただし、目下のところ、ファンダメンタル要因としての最大の注目点はアメリカの税制改革案の行方です。

法人税の大幅減税を公約していたトランプ大統領ですが、下院共和党から35%から20%への即時引き下げ案が提出されたことにより、法案成立が大きく進むかに見えました。ところが、先週提出された共和党上院案は、減税は2019年実施という1年先送りの内容でした。

今週はトランプ大統領がアジア訪問から帰国し、減税に向けた調整が進むことになりますが、どのような形での着地となるのか予断を許しません。共和党上院には財政規律派が多数存在しているため、2018年からの減税開始は楽観視できるとは言えない状況です。

米国株式市場は減税を織り込む形で上昇している面もあるため、トランプ政権による法人減税が本当に実現するのか、今週以降の調整は金融市場に対し大きな影響を与える可能性があります。

個別通貨ペアでは、114円超えのチャレンジにいったん失敗したドル/円が再び115円台を目指す値動きとなるのか、それとも現在のレンジ相場の下限付近である110円を目指すことになるのかが注目点です。

なお、週足チャートを見ると、2月以降キレイに110円付近~114円付近でレンジ相場を形成しています。そろそろ年末も近づきますが、2017年のドル/円はレンジ相場の年となる可能性が高まりつつあります。

一方、ユーロ/ドルは先週陽線となって再び上昇を開始する可能性を示唆しています。9月につけた高値1.200ドルを目指す値動きとなるのか、単なる戻しで再び下落の方向となるのかに注目です。

先週上昇したとはいえ、10月のドラギECB総裁発言で下落した後に形成されたレンジ相場内に留まっており、レンジブレイクに備える必要もあります。

まとめ

11月中旬に入り、そろそろ年末を意識した値動きが生じることになりますが、既に為替市場は値動き停滞の状態に入っており、このまま2017年を終えてしまう可能性もあります。

とはいえ、トランプ政権による税制改革案の行方が金融市場に対し、大きな影響を与える可能性もあります。米国の法人減税がどう着地するのか、特に上院の動向に注意しつつ、今後の為替市場をフォローしたいと思います。

石井 僚一