この記事のポイント

  • 日経平均株価は、9月8日以降の2カ月で約3,660円も上昇した反動でスピード調整入り。ただ、実質成長率の7四半期連続プラスや好調な企業業績などのファンダメンタルズが支え。
  • 国内では、輸入物価上昇率が加速する一方、工作機械受注が急増。生産性向上を目指す内外の設備投資需要は拡大持続へ。押し目を好機ととらえ、主力銘柄を一覧した。

名目GDPも経常利益総額も史上最高額を更新

 日経平均は、9月8日からの約2カ月で3,660円以上も上昇した反動もあり、スピード調整入りしました。11月2日付「波乱の11月? 目前に迫る3大リスクをチェック」で解説した通り、米税制改革への期待が後退したことを契機に米国株価は下落。日米市場とも高値圏で推移していたことで、利益確定売りがかさみやすく、リスクオフ(リスク回避)の円高も日経平均の下落要因となりました。

 ただ、内外ファンダメンタルズ(景気や業績)の堅調が株価の下支えとなっています。内閣府が15日に発表した、7~9月期の実質GDP(国内総生産)成長率(速報値/前期比年率)は、+1.4%と7四半期連続でプラス成長を記録。設備投資や外需の好調がリード役となっています。

 なお、名目GDP(年率換算)は約546兆円と過去最高を記録。財務省発表の全産業経常利益額(12カ月累計/6月期)も約80.2兆円と最高益を更新。9月期も増益基調の持続が見込まれています(図表1)。

図表1:名目GDPと経常利益が史上最高額を更新

出所:内閣府、財務省、Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2017年9月期)

企業物価はインフレの兆し?「生産効率向上」需要が拡大

 まず、国内で「脱デフレ」と「設備投資増加」の兆しが鮮明となっている状況に注目したいと思います。

 日本経済については、来年も緩和的な金融環境が続く中、海外経済の堅調と政府の大型経済対策の効果で、景気や業績は拡大基調をたどると見込んでいます。こうした中、日本銀行が13日に発表した国内企業物価指数(10月分)は前年同月比+3.4%と市場予想を上回りました。伸び率としては(消費税増税による影響時を除けば)2008年10月(同+4.5%)以来9年ぶりとなる高い伸びです。世界経済の堅調を受けた銅など非鉄金属や原油相場の上昇が主な要因です。

 ただ、仕入れコストの上昇に加え、有効求人倍率の上昇(1.52倍は約43年ぶり高水準)を背景とした来年以降の賃金上昇を視野に入れると、企業が「利益圧縮」を避けるためには「生産性向上」が不可欠となります。

 一方、日本工作機械工業会が13日に発表した工作機械受注累計額(10月速報値)は、前年同月比+49.9%と膨らんでいます(図表2)。

 このうち、内需は同+37.2%、外需は同+59.8%となっています。国内景気拡大が、高度成長期の「いざなぎ景気」を超え、戦後2番目の長さ(58カ月連続)に突入する一方、米国や中国などの外需も拡大。企業は、コスト上昇を吸収するべく、設備投資やIT(情報技術)化を進めることで「生産性革命」を実現する必要に迫られそうです。

図表2:企業物価の伸びが加速し、工作機械受注も増加

出所:内閣府、日本工作機械工業会、Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成

設備投資関連は「生産性革命」の主役を担うと見込まれる

 強気相場の中で、短期的な株価下落やスピード調整(日柄調整)があっても不思議ではなく、むしろ健全な相場展開には不可欠な値動きと考えます。

 そこで、当面も相場に押し目が続く場合、注目したい業種や銘柄を参考例として下記します。

 米景気が緩やかに拡大する中、トランプ政権は依然として「米国第一主義」を前面に掲げ、貿易不均衡の是正、国内製造業の強化、雇用の増加を目標に掲げています。

 こうした中、米系企業だけでなく(米国に進出している)外資系企業は生産計画の見直しを迫られ、米国での生産設備拡大や増設を発表してきました。

 また中国では、スマートフォン市場の拡大などを背景とする半導体業界やIT化が進む自動車業界向けなどで設備投資意欲が旺盛となっています。国内の設備投資意欲が向上していることに加え、米国、中国、欧州での設備投資需要が回復基調にあることで、日本の「お家芸」とも言えるFA(ファクトリーオートメーション:工場内の生産自動化)や産業用ロボット関連の製品・技術・サービスを供給できる電気機器や機械に対する需要拡大が期待されています。日米欧企業の余剰資金(内部留保を含む)は総計で約700兆円(Moody’s Investors Service、日銀法人企業統計など)におよぶとされ、設備投資拡大に向かう待機資金は豊富とみられます。

 こうした設備投資拡充(生産性革命)から恩恵を受けそうな「設備投資関連株」(時価総額で上位10社:参考銘柄群)の平均株価パフォーマンスを検証すると、TOPIX(市場平均)を大きく凌駕していることがわかります(図表3)。

 また、設備投資関連株の業績予想を見ると、2016年の不振を経て、2017年は大幅な好転が見込まれています(図表4)。

 こうした銘柄には、世界的な競争力を保持するグローバル企業が多くあり、外国人投資家も注目度を高めそうです。

図表3:設備投資関連(参考10銘柄)の優勢

注:設備投資関連10銘柄平均=各銘柄の株価を、2016年7月1日を100として平均して指数化したもの
出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2017年11月16日)

 

図表4:設備投資関連(参考10銘柄)の一覧

注:予想増減益率は予想EPS(1株当たり利益)の前年比伸び率、予想EPSはBloomberg集計による市場予想平均
注:上記は時価総額の上位10銘柄に関する参考情報であり、特定銘柄への投資を推奨するものではありません。
出所:Bloombergのデータより、楽天証券経済研究所作成(2017年11月16日)

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