日本のトイレが世界最先端な理由-TOTOに見る技術と工夫

海外ではブランド戦略に注力

TK Kurikawa / Shutterstock.com

皆さんが海外旅行から帰ってきてほっとする瞬間の一つは、便座が暖かくて、きれいなトイレを利用する時ではないでしょうか。「ウォッシュレット(温水洗浄便座)があるのは当たり前」と考える人も多いかもしれません。しかし、先進国における温水洗浄便座の普及では日本がダントツです。

日本のトイレ事情-ウォシュレットは商品名?

2017年3月内閣府消費動向調査によれば、日本の家庭における温水洗浄便座の普及率(2人以上の世帯)は約80%に達しています。

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1990年代初めの普及率は20%程度でしたので、約30年を経て、約80%という非常に高い水準にまで到達しています。今では、「温水洗浄便座は付いていて当たり前、ないとがっかり」というくらい、温水洗浄便座付きのトイレは日本文化の一部になったといえるでしょう。

さて、一般的に使われている「ウォッシュレット」という呼び名ですが、実はシェア1位のTOTOの登録商標です。他のメーカーの似ている商品もウォッシュレットと呼ばれるほどの知名度の高さになっています。

東京都は2020年に向けて公共施設にあるトイレの洋式化を急いでおり、2017年度は37億円強の予算を予定しています。高齢化社会、海外旅行者の急増、オリンピック・パラリンピックの開催などが理由です。そして、これにより温水洗浄便座を扱うトイレメーカーは特需が期待できるといえましょう。

TOTOの歴史

ここからは、日本の温水洗浄便座の主要プレーヤーであるTOTOについて見ていきましょう。TOTOは1917年に東洋陶器として始まり、2017年に創立100周年を迎えました。

社名の通り、元をたどれば陶器メーカーで、森村グループの一員として発展してきました。同じルーツを持つ会社には、陶磁器のノリタケ、洋食器の大倉陶園、セラミック技術で有名な日本特殊陶業や日本碍子(ガイシ)があります。

TOTOの強みとは何か

では、TOTOが現在のようにウォシュレットで業界における主要な地位を確立した背景は何でしょうか。それを3つにまとめると、第1に研究開発への姿勢、第2に積極的な設備投資、第3に独自技術に対するこだわり、といえそうです。

1. 研究開発

2016年度の研究開発費は総額194億円です。営業利益額が486億円ですので、かなりの金額です。研究開発を重ねることによる、確かな技術力に裏付けされた商品に強みがあるといえそうです。

その成果として、TOTO独自のクリーン技術である除菌水や「セフィオンテクト」、また節水につながる水の流し方と量に工夫を凝らした「トルネード洗浄」や「フラッシュタンク式」などを採用した製品が登場しています。

2. 設備投資

TOTOの2018-2022年度中期経営計画「TOTO WILL2022」では、総額2,500億円の設備投資を予定しています。これには海外生産やサービスのネットワークの拡充も含まれてます。

現地の要求に見合う商品を現地生産して、アフターサービスをきちんと行うことで、TOTOファンを増やしていきたいと考えているからです。

3. 独自技術とこだわり

さて、TOTOの技術が生きている商品の特徴は、どのようなものなのでしょうか。1つずつ見ていくことにしましょう。

1. 節水と節電

15年前は、トイレで1回水を流すには約15リットルの水が必要だといわれていました。ところが、現在のTOTOのネオレストでは3.8リットルで同じ仕事をこなすとされています。節水は環境にやさしいだけではなく、試算では年間約15,000円も安くなるそうです。また、タイマー機能により、節電、省エネにも貢献しています。

2. きれい除菌水

水を電気分解し、洗剤を使わなくてもトイレがきれいになります。便器、ノズル、においをきれいにして、時間がたつと元の水に戻る優れモノです。

3. セフィオンテクト

陶器の表面をナノレベルで仕上げ、汚れが付きにくくするTOTOの独自技術です。二層の構造で新品の輝きを守る耐久性と、陶器表面に水がなじむ親水性があります。

TOTOの生産現場を見学された方はご存じかと思いますが、陶器を製造して仕上げるのに全自動化は難しいものがあります。そこには匠の技が必要です。製造工程そのものが競争優位性に繋がり、簡単にはまねができないということです。

TOTOの生産現場では日本のものづくりが大切にされていて、それを海外工場にていねいに広めていき、現地生産を日本のレベルに引き上げながら、一方で海外工場の原価低減と効率化を進めるという努力があります。これが、TOTOの増収増益の源泉力であり、持続性のある底力です。

4. トルネード洗浄

トルネードとは竜巻のことで、「トルネード洗浄」とは洗浄をトルネード、つまり渦を巻きながら流していく方法です。汚れがたまりやすい後方に勢いよく水が流れるので、従来方式に比べて少ない水ですむのもメリットです。

TOTOの海外戦略

TOTOは海外進出にも積極的です。現在は米国や中国、東南アジア諸国などに生産・販売拠点があります。海外での戦略は、現地の企業と一般的な商品で競争するのではなく、TOTOブランドを高付加価値ブランドと位置づけ、高級メーカーとして販売しています。

たとえば、米国ではニューヨークの高級ブランド街の5番街(Fifth Avenue)にショールームをオープンしたり、西海岸ではシリコンバレーの企業がTOTOのトイレに入れ替えたり、ヨーロッパの最高級クラスのホテルが導入したりとブランド力を磨いている段階です。

海外における一番の稼ぎ頭は現時点では中国です。中国におけるTOTOのブランド力は強く、とてもイメージの良い、品質の高い製品として受け入れられてます。

現在、中国、香港、台湾からの観光客が訪日観光客の半分以上を占めています。そうしたこともあり、日本で経験した後に自国でTOTO製品を購入する人も増えているそうです。

TOTOの2018-2022年度中期経営計画には「世界中にTOTOファンを増やしていく!」とあります。そして「日本を世界のショールームに」と続きます。まさに、訪日観光客が増えることで、この効果が発揮されるといえます。

トイレはなかなか広告を打って売れる商品ではないという背景があるのかもしれませんが、使用して、その良さを実感してもらうのが一番の近道だという戦略でしょう。

まとめにかえて

いかがでしたでしょうか。たかがトイレ、されどトイレ。なかなか奥深いですよね。毎日使っているものでも、生産者や会社の思いが分かると、また違った感動があるのではないでしょうか。日本のトイレの素晴らしさが、海外に広がっていくと良いですね。

投信1編集部

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