絶対収益型ファンドとは? その1:CPPIの特徴とリスク

異常な低金利やマイナス金利政策がここ数年続く中、「貯蓄から投資」すなわち“預金に何年も置いても全く増えないので投資に振り向けましょう”という大号令がかかっています。

これまで何度か取り上げた積立NISAはその一例です。しかし、日本人は国民性から貯蓄志向が強いのか、またリスク回避性向があるのか、”大きく儲かるより、損を避けたい”傾向が強いようです。そういう志向に対して、投信には「絶対収益型」という領域があります。

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「絶対収益型」とは?

絶対収益型って甘美な響きですよね。誤解されがちなのですが、「絶対に収益が上がる」運用戦略を指して「絶対収益」と呼ぶのではありません。

まず、日経平均などのベンチマークを指標として、それを上回るリターンを目指すのが「相対収益型」です。これに対して、絶対収益型は市場環境に関わらずプラスの収益を追求する戦略です。

相対収益型は、ベンチマークが下がってもファンドの下げがベンチマークほどでなければ結果よし、運用者は報酬に値するという考え方なので、投資家によっては納得感がないと思われる方もいるでしょう。

その意味で、「資産形成」を図りたい投資家はつまるところ相対的リターンでなく「雨の日も、風の日も」資産が増えるならプロに任せる価値あり、と思うのは当然でしょう。そのため、絶対収益型はマーケティング的に耳障りがいいのはよくわかります。

筆者は十数年、複数の運用会社で商品企画を担当していますが、どこの社でも一度は営業から「この手のファンドはないの? 作ってよ」と言われます。

実際のところ、手法としては作れなくはないものの、絶対収益型は期待に反してマイナスが出ると顧客トラブルになりがちです。

それに、運用会社の色々な技術の粋を総合的に駆使して出す商品なので、社運を賭ける覚悟がないと、ロスが出た場合、一商品の失敗によってその運用会社の運用が全部下手くそと断定されかねないレピュテーションリスクを負います。絶対収益型は基準価額がすべてを物語りますから。

絶対収益型については業界内でも定義がはっきりしない面もありますが、ベンチマークとの比較でなく、「上げ相場でも、下げ相場でも」プラスの収益を上げることを目指すタイプが典型的な定義です。

その中で、さらにアップサイドは目指すがダウンサイドリスクは避けたいという「下方プロテクション型」という分野があります。最近流行りの「CPPI型ファンド」などもその一種です。

本稿および次稿では、それらの種類と運用戦略を紹介し、その特性、および必ずしもうまい話ばかりではないという留意点をご紹介します。

A. 「下方プロテクション型」

これは下値を抑えながら上方を目指す点で、定期預金からのシフト先として投資家がリスクを受け入れやすい運用手法です。

CPPI型とは何か

CPPIとはConstant Proportion Portfolio Insuranceの略で、前回触れたブラックマンデーの元凶と噂されたポートフォリオインシュランスの手法の一つです。

当初の投資元本を100%とすると、その85%や90%をフロアと呼ばれる確保レベルに設定し、目論見書等でも確保レベルを明言します。運用手法としては、極めて単純化して言うと、当初は株式等のリスク資産とキャッシュや短期国債等のリスクフリー資産の2つの資産に投資します。

リスク資産の価格が上がるとその含み益がバッファーとなるので、リスク資産を買い増してさらなるリターンを追求します。この過程でフロアレベルを上げて100%に再設定するような仕組みのものもあります。リスク資産が上手く上がってフロアが100%にリセットされると、当初元本が確保される上にアップサイドのみ狙えるのでこの投資は勝ち組です。

逆にリスク資産が下がる時は売却し、代わりにリスクフリー資産を増やしてフロアを割ることがないように安全に運営します。保有比率はオプションの手法等で複雑な計算を駆使し、かなり細かく頻繁にヘッジ売買を行います。

既にお気づきの方がいらっしゃるかもしれませんが、実はこの手法は拙稿『バランス型ファンド、どれを選ぶ?』でご説明した「リバランス」で行う「SellHigh-BuyLow」の真逆で、高くなったら買い、下がると売るので実現損が積み重なっていきます。そのコストはフロアを確保するための「保険料」と解釈されます。ポートフォリオのインシュランス(保険)と呼ばれるゆえんです。

CPPIのワナ

CPPIが負け組投資になるのは、次のようなケースで発生します。

まず、運用当初でリスク資産が下がるとフロアに近づくため、キャッシュ比率をかなり増やします。その後、リスク資産価格が上がっても保有比率が少ないのでその後の上昇には参加できず、当初の100まで戻ることなく信託報酬が取られ続けます。挙句の果てには次に下がった時にフロアに抵触して、全額キャッシュでしばらく報酬が取られるということもあります。

最近はその展開が投資家にとって有利でないので、フロアに達したらファンドを繰上償還してしまう設計があります。キャッシュ保有に対して信託報酬をいただく期間を短めに終わらせるという趣旨で、そこは健全な工夫と見てよいでしょう。

ただ、購入時に販売手数料を支払い、早い段階で基準価額が下がって挙句は償還になると、特に償還までの期間が短い場合、販売手数料とフロアまでの損失を年率換算すると結構高い年率で損に終わったということもありえるのがこの商品です。

さらに、リーマンショックのような短期で大暴落が起きるケースでは、リスク資産の売却が間に合わずフロアを確保しきれないことがあるのは言わずもがなです。

このように、CPPIは設定後の相場展開で明暗が分かれるので「径路依存型」と呼ばれます。事前に径路が分かっていれば最初からリスク商品を買えばよいのですが。投資後の展開は運次第と割り切り、元本が減ってもフロアで止まればよいという方には悪くない選択でしょう。

もう一つ留意点を挙げるとすれば、下方が85%フロアとすれば上方も15%(+信託報酬)が狙えるようなリスク資産に投資するのかどうか、リスク資産の種類も見た方がよいでしょう。また、リスク資産の比率も当初から100%よりはかなり低いはずですので、それも考慮に入れて15%以上狙えるかなども要チェックです。

まとめ

筆者は特定の商品や運用会社を難ずる意図はありませんが、万が一、銀行保証付きCPPI が預金的なものと誤解されて投資されることがないよう、CPPIの特性を理解しておいた方が上手くいかなかった場合の納得感があるのではと、老婆心ながら本稿を書かせていただきました。

次回は B. として、「元本確保型」をご紹介します。

林 俊宏

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林 俊宏

国内大手信託銀行を振り出しに、系列の投信運用会社、外資系運用会社、販売会社等で一貫して商品企画に携わる。
株、債券、リートにとどまらずバンクローン、デリバティブ、ヘッジファンド、プライベートエクイティも投資または組成経験あり。
証券アナリスト協会検定会員、ペンシルベニア大学・ウォートンスクールにてMBA取得