ムーディーズがインドの格付けを引き上げ

モディ政権の改革は一段と進展へ

Frederic Legrand - COMEO / Shutterstock.com

先日2017年11月16日に、ムーディーズは、インドの債券発行体格付け(自国通貨建て、外貨建て共に)をBaa3からBaa2へ格上げしました。見通しは、安定的(ステーブル)としています。

格上げの3つの要因:GST、高額紙幣廃止、不良債権処理

ムーディーズによる今回のインド格上げの理由は、モディ政権が実施してきた構造改革が実を結びつつあることを評価し、今後も高い経済成長を予想できると判断したということでしょう。

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格上げの主な要因を以下に解説します。

モディ政権は、2014年の政権誕生以来、様々な経済改革の施策を打ってきています。それらの施策の中でも最も注目されていたのが、全国レベルでのGST(物品サービス税)の導入です

GST導入はインドの生産性改善に効果が大きいと予想されています。これまでは州ごとに適用税率が異なっていたことから、国内であっても州をまたがった取引や納税の手続きは煩雑で、商取引や物流の阻害要因となっていました。それを一元化できたことによる効果は、来年度以降大きく期待できます。

また、脱税や不正な取引の退治を旗印に昨年導入された高額紙幣廃止は、足元の経済成長率を鈍化させましたが、この政策の真の目的は、インドの経済をデジタル経済化することにあります。

施策の目的がインド社会に周知されるようになり、インフラ導入が急速に進展したり、電子決済の普及が進んだりするなど、成果も上がり始めていることで、与党の支持率は上昇に転じ、与党への国民の支持も回復しています。

3つ目の要因は、インド政府が10月24日に国営銀行などに、今後2年間で約2兆1100億ルピー(約3兆6000億円)を資本増強のために投入すると発表したことです。

かねてからインドの金融システムは、銀行部門が不安定で、成長を続けるインド経済の慢性的な不安要因といわれてきました。しかし、今回の資本増強の実現により、インドの銀行が抱える不良債権の処理が進み、金融面での不安が払拭されることが期待されます。

今後の注目点は?

一方で、インドの財政赤字は、今年、既に政府が目安としていた対GDP比3.2%に達した模様で、歳出削減を実行し、財政赤字を抑制できるかは気掛かりです。思い切った歳出削減か、国有資産売却の加速が実行に移される必要があります。これは今後の注目点です。

今回のムーディーズによる格上げの発表は、市場参加者にとっては、インドの経済成長の足取りや財務指標の改善を確認してからという予想が多かったことからすると、いい意味でのサプライズとなる格上げです。

なお、他の2社、スタンダード&プアーズ、フィッチは、インドの長期債格付け(自国通貨建て、外貨建て共に)をBBB- (Baa3に相当)、見通しは安定的(ステーブル)と据え置いており、2社の対応にも注目が集まるでしょう。

Nippon Wealth Limited 長谷川 建一

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長谷川 建一
  • 長谷川 建一
  • ニッポン・ウェルス・リミテッド・リストリクティド・ライセンス・バンク
  • 取締役兼CIO (Chief Investment Officer)

京都大学卒、MBA(神戸大学)。 シティバンクグループ日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、2000年にシティバンク日本のリテール部門で商品開発や市場営業部門のヘッドに就任。2002年にシティグループ・プライベートバンクのマーケティング部門ヘッドに就任。
2004年末、東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)に移り、リテール部門マーケティング責任者として活躍。2009年からは国際部門でアジア・リテール戦略を担い、2010年は香港にてBTMUウエルスマネージメント事業の立ち上げに従事。
2013年よりNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(ニッポン・ウェルス・リミテッド・リストリクティド・ライセンス・バンク)にてCOOに就き、2017年3月よりCIOを務める。