セブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン&アイ)とアスクルは、2017年10月12日に、両社が協同して開始する新業態の生鮮 EC「IY フレッシュ」を 2017年11月28日よりサービススタートすることを発表している。そして本日、IYフレッシュのサービス開始を迎えた。

米国ではEコマース大手のアマゾンが「アマゾン フレッシュ」を展開するなど競争は激化をしている。日本を代表する小売り大手とネット通販大手の連合でアマゾンにどう対抗していくのかには注目したい。

IY フレッシュとは

セブン&アイの商品をアスクルが提供する細やかな配送で新鮮なまま毎日の食卓へ届けるというサービス。IY フレッシュは、家事や仕事・育児に毎日忙しい都市部の 30代~40代の女性をメインターゲットにしている。スマホで毎日の生鮮品の買い物を実現する新たな都市型の生鮮 ECを目指す。

前日23時までの注文で翌日の夕食に間に合う

ロハコの1時間単位指定配送「Happy On Time」を活用し、14時までのご注文で翌日9時~翌々日22時に、14時以降23時までの注文で翌日 16時~翌々日22時に商品が届く仕組み(9 時から22時の間で、1時間単位の指定が可能)。「お届け予定時刻」は30分単位で事前に通知され、到着10分前には直前の通知もある。生鮮食品も確実に受け取ることができることとなる。

配送手数料はLOHACO商品とまとめて4,500円以上で無料

IYフレッシュ商品は、ロハコの商品とまとめて注文・決済できる。ロハコの商品とまとめて 4,500 円(税込) 以上の注文で配送手数料は無料。月額利用料や会員費などもかからない。4,500円(税込)未満の注文の場合は配送手数料350円(税込)が必要となる。

アスクルとは

もともとは1993年3月に事務用品、事務用器具メーカーのプラス株式会社のアスクル事業部としてスタート。1997年にオフィス関連用品の翌日配送サービスを目的としてアスクル株式会社へ。同じくしてインターネットによる受注を開始。

2000年11月にJASDAQに上場し、また2004年には東証1部へ上場した。

同社はB2Bを中心のネット通販会社としてスタートしたが、B2C向け事業も次期の収益ドライバーとすべく拡大中だ。自社リソースだけではなく、ヤフーとの協業でその成長スピードのアップを図っている。

2017年5月期決算では、連結売上高3,359億円のうち、2,919億円は「BtoB事業」で全体の売上高の87%を占める。またロハコは390億円で全体の12%。ただし、火災の影響がなければさらに売上高は伸びていたものと思われる。

一方、収益に関しては2017年5月期では連結で88億円。そのうちBtoB事業では140億円と営業利益率は4.7%。つまり、ロハコではまだ売上高の成長を追求する中で赤字という状況。同時期のロハコの営業赤字は46億円である。

アスクルの商機とは

今後のアスクルの狙いとしてはロハコの売上高成長を求めながらも、物流拠点において売上高のクリティカルマスを達成し、赤字を黒字化することであろう。

ただ、先にも触れたようにロハコの売上高は2017年5月時点で390億円に達したばかりである。ロハコを扱う拠点の回復までにはまだ時間を要するであろうが、ロハコは個人向け事業であり、今後長期的にリアル店舗をもつ小売店からの市場シェアをとってくる可能性を考えれば、売上高の成長余地は依然大きい。まさに米国ではそうした動きが顕著となってきており、日本にもその流れが来る可能性は高い。

生鮮ECの行く末とは

米アマゾンなどが個人向けでは様々な商品の取り扱いと機動的な配送を行っている中で、同社、ヤフー及びセブン&アイという各カテゴリの日本を代表するプレーヤーが協業したとしても、競争環境は厳しいことは変わりがない。

ただし、今後もEC市場は伸びていくであろうし、特に生鮮ECなどは依然未開拓の市場という印象さえある。どの企業及びグループが勝者となるかを決定づけるにはまだ早く、引き続き注目していきたい。

青山 諭志