今週からいよいよ師走を迎える中、来年の株価予想もちらほらと聞こえ始めています。そこで今回は、強気派の代表としてゴールドマン、弱気派の代表としてバンガードを取り上げ、双方の意見を中心に2018年の米株式市場の見通しをまとめてみました。

GS、”根拠ある熱狂”を主張し株価予想を大幅に上方修正

ゴールドマンサックス(GS)は先週、2018年末のS&P500の予想をこれまでの2500から2850へと大きく引き上げました。S&P500は27日現在、2600前後を推移しています。

また、2019年に3000、2020年には3100まで上昇するとし、“根拠ある熱狂”であることから、今後3年間にわたり株価は上昇を続けると太鼓判を押しています。

“根拠”は3つあり、まず米国と世界経済はともにトレンドを上回る成長が見込まれること、次に金利は緩やかに上昇しているものの絶対値での水準は過去に比べると圧倒的に低いこと、そして法人税の引き下げで企業利益が高まることを挙げています。

GSは米法人税が現在の35%から20%へ引き下げられた場合、企業利益は2018年に14%、2019年以降は5%押し上げられると試算しています。現在の株価は歴史的に見て割高であることは認めながらも、企業利益が高まることから“根拠がない”わけではないと主張しています。

ところで、グリーンスパン米連邦準備制度理事会(FRB)議長(当時)は1996年に、強気相場が続く株式市場に対し“根拠なき熱狂”と警告しましたが、結局株価の上昇は2000年まで続きました。

GSはこの事実を引き合いに出し、ドットコム・バブルと比べるのであれば、2020年のS&P500は5300まで上昇する必要があり、“根拠がない”レベルというのは現在の2倍以上に相当する数字だと指摘しています。

強気な見方をしているのはGSばかりではありません。UBSは2018年末のS&P500を2900とGSを上回る強気な数字を出しています。さらに驚くべきことに、この数字は減税を考慮していないベースラインとなっています。GSは、もし法人税減税が失敗した場合にはS&P500は2450まで下落すると予想しています。

UBSは減税が実施されればS&P500は3300まで上昇する余地があるとしており、GSが3年後の2020年に見込む水準すらも軽く上回る見通しとなっています。

ただし、UBSはリスクシナリオとしてFRBの利上げによる景気減速を挙げており、このシナリオでは2200まで下落するリスクがあるとしています。

VG、1年以内に10%以上下落する確率は70%

来年の株価見通しに楽観的なムードが広がる中、バンガード(VG)は27日、米株価が1年以内に調整(10%以上の下落)に見舞われる確率は70%であるとし、厳しい見方を示しました。

VGは1960年以降のデータに基づき、米株式市場で1年以内に10%以上の下落が起こる確率を40%と推定しています。現在は株価のバリュエーションが高いことに加え、イールドカーブがフラット化していることなどから、リスクは過去60年の平均と比べ30%高い水準にあり、2010年から続く強気相場が来年も続くと考えるのは合理的ではないと指摘しています。

また、10年債と2年債の利回り格差が金融危機以降で最小となっていること、さらにジャンクボンドと米国債との利回り格差が金融危機前の水準に戻っていることを踏まえ、今後5年間、米株式市場は試練の時を迎えるとも述べています。

具体的には、今後5年間の株価のリターンは4%から6%にとどまることになり、金融危機以降で最も低い数字を予想しています。

とはいえ、投資家に市場から逃げ出すよう警告をしているわけではなく、急落への備えが必要と説いています。

まず、米国以外へと分散投資することで、リスクはゼロにはならないものの、60%まで低下させることができるとしています。また、米国以外の先進国は米国に比べると割高感が低いことから、今後5年のリターンは5%から7%と若干改善するとも指摘しています。

しかし、新興国を含む世界各国の株価は米株と歩調を合わせて上昇していますので、下落するときも同じことが起こるだろうとも指摘。したがって、債券をポートフォリオに含めることが非常に有効であり、投資適格債の調整リスクは20%と株式に比べると格段に低いとの見方を示しています。

VGと同様、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(BAML)も2018年に強気相場が終焉すると予想しています。

BAMLによると、2018年8月22日を過ぎると強気市場が過去最長となること、7年連続で株式が債券をアウトパフォームするのは1929年以来となることを踏まえ、S&P500は2018年前半に2863でピークを付け、その後は反落する見通しとなっています。

また、10年債利回りは2.75%まで上昇すると予想し、金利の上昇で企業は格下げのリスクに直面するとも指摘。加えて、最近の投資家はパッシブ運用からアクティブ運用へと運用スタイルを乗り換えており、これは相場の上昇が終わるサインであるとも述べています。

“想定外”だった2017年、2018年に微笑むのは?

今から1年ほど前、GSは2017年末のS&P500を2300と予想し、結果的に大ハズレとなりました。こうした経緯もあり、今回のGSの超強気への転換は市場関係者からも興味深い動きとして関心を集めているようです。

ブルームバーグ(BB)が27日までに集計した9人のストラテジストの2018年の予想は2800となっており、強気見通しはGSに限った話ではありません。

ただし、BBが2017年の初めに集計した18人のストラテジストの中で、S&P500の最も強気な予想は2500でしたので、2017年の上昇は文字通り“想定外”でした。強気見通しが並ぶ背後には、弱気過ぎた今年の反省が見え隠れしているのかもしれません。

とはいえ、2017年の年初の段階で既にバリュエーションの高さが指摘されており、割高感はさらに高まっていますので、VGやBAMLのように警戒感を強めることはある意味当然ともいえるでしょう。

いずれにしても、2018年の米株式市場がどちらにころぶのか、予断を持たずに各社の予想内容をよく吟味して投資に役立てたいものです。

LIMO編集部