生産性を数字で表すと?

生産性という言葉をよく耳にするようになりました。

労働力人口の減少によって、労働力不足が進んでいく中で、より少ない人手で多くの仕事をこなすことが求められています。AIの活用などとも関連づけられて議論されることもあります。また、生産性とは、業務を効率化するなどといった話の中で漠然と使われることもありますが、数値化することもできます。

生産性は、労働者一人あたりが稼いだ利益の金額で表せます。生産性を上げるということは、同じ利益をより少ない人数で稼ぎ出す、同じ人数でより多くの利益を稼ぎ出す、もしくは、より多くの利益をより少ない人数で稼ぎ出すということをいいます。

生産性を決める「付加価値」とは?

生産性でいうところの利益とは、「付加価値」を意味します。

よく、「付加価値を付けた商品を作ろう」といった言葉が使われますが、この意味での付加価値とは、顧客満足度など定性的なものを意味することが通常です。

しかし、生産性を議論するときに使う付加価値という言葉は、数字で表す定量的なものです。具体的には、以下の数字が付加価値と呼ばれるものです。

付加価値=営業利益 +(1.人件費+2.減価償却費+3.不動産・動産賃料+4.租税公課)

営業利益は、売上から売上原価、販売管理費を引いたものです。別の視点で見れば、売上から、上記4つ以外の売上原価、販売管理費を引いたものが付加価値ということになります。

上記4つ以外の販売管理費は、社外調達費用と呼ばれます。

たとえば、雇用している従業員以外の請負などに対する外注費や、交通費、備品代や水道光熱費など。これらは自社で作り出した価値ではなく、他社が作り出したモノやサービスを利用しているものです。

一方、上記4つの費用は、基本的に社内で生産活動を行う上での経費です。

人件費はまさにそのものですし、減価償却費は社内で活用する固定資産に対するコスト、賃料は業務を行うための場所などの利用料、租税公課は事業活動を行う上で負担すべき義務的な費用です。

そして、この付加価値を、従業員数で割った数字が生産性です。

生産性=付加価値 ÷ 従業員数

生産性を上げるためには?

生産性を上げるためには、付加価値を上げるか、従業員数を減らす必要があります。今後の労働力人口の減少の中、従業員数は自然に減少していくことが予想されます。実際に、中小企業を中心に、人手不足が深刻化しているケースも見られます。

それでは分母が小さくなるから、生産性は上がるのかといえばそうともいえません。特に飲食店など労働集約的な業種によっては、人手不足は売上の減少、ひいては営業利益の減少にもつながります。このことは付加価値の低下につながります。

今後、生産性を上げていくには、従業員数の減少を念頭に、いかに少ない人数で利益を上げていくかということを、業種問わず考えていく必要があります。

一方で、このことは従業員の手仕事が減ることも意味します。生産性を上げる過程では、新たな設備やソフトウェアの導入などを進めつつ、従業員の不安も解消することが必要になってくるでしょう。

渋田 貴正