絶対収益型ファンドとは? その2:元本確保型の特徴とリスク

絶対収益型ファンドについてご紹介するシリーズ、前回の「その1」では、下方リスクプロテクション型の一種でCPPIファンドの仕組みと勝ち負けパターンをご紹介しました。

今回は預金代替的な商品との認識を持たれやすい元本確保型のうち、「外債フルヘッジ単位型」と「CB単位型」についてご説明します。業界内ではこのタイプをストレートに絶対収益型に分類する向きは一般的ではないと思いますが、投資家にとっての効用としては預金からの振り替えで恐る恐るリスク商品に乗り出すエントリー商品的な志向は類似するので、比較の対象としてここでご紹介しておきたいものです。

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B. 「元本確保型」

外債フルヘッジ型とは?

銀行劣後債やバンクローン等、高利回りの外債や企業向けローンに投資し、満期まで売買せず、基本的にはデフォルトを避けるための売却を除いては各債権の満期まで持ち切ります。さらに為替をフルヘッジし、円ベースの利回り商品として設計されています。

当初基準価額が10,000円で始まり、途中は利回り上昇等の要因で上げ下げがあり、10,000円を割り込むことはあるものの、満期時には10,000円プラス保有期間中の利回り分が返ってくる前提です。

そのため、当初募集期間のみ投資可能で、投資家全員が10,000円の持ち値で共通している単位型、かつ投資対象債権の満期に合わせてファンドの満期を設定する期限付きという設計です。

投資対象には、米国債利回りに比べて2~3%程度高い利回りの債権ということで、銀行劣後債やハイイールドバンクローン(BB~B格程度)等が選ばれています。

ざっくりとスキームを聞くと、海外の高利回り商品に円ベースで利回りが確保されて、といいことずくめですよね。投資後、想定通りうまくいけばいいのですが、満期償還時に基準価額が投資元本より下がって返ってくるケースがあるとしたらどのような要因でしょうか(途中売却は除く)?

目論見書のリスク記載は一般的、抽象的な文言が多く、具体的にイメージしづらく読み飛ばしがちなので本件スキームに絞って説明します。

a)債権のデフォルト

50銘柄に2%ずつ均等比率で投資したとします。ポートフォリオ全体の平均利回りが米国債利回りプラス2%としたら、1銘柄のデフォルトで全損(=元本回収なし)が出るとその年のポートフォリオ全体で稼いだ利ザヤがふっ飛びます。保有期間中に毎年1銘柄デフォルトが出ると、リスクフリーとされる米国債利回りしか残らないことになります。

実際はデフォルトが出る前に売却して難を逃れるのがファンドマネージャーの腕の見せ所ですし、デフォルトでも全損でなく回収は幾分できるのが通常ですが、その場合も売却による元本ロスが出ますし、売却価格がデフォルト時の回収額より大きい保証はありません。

ただ、デフォルトは1年に1件等、コンスタントに起きるよりはリーマンショック時のように起きる時には連鎖的に発生します。

b)規制リスク

デフォルトリスクと同様に債権の価格が暴落する要因に規制リスクがあります。銀行劣後債は返済順位が劣位にあるため、同じ銀行の優先社債に比べて格付けが低い分、かなり利回りが高いのですが、色々な業種の社債に分散投資するハイイールド債ファンドに比べて業種集中リスクがあります。

銀行劣後債はバーゼル委員会で定められた自己資本比率規制を充足すべく、銀行が高い金利を払って自己資本に含めてカウントできる劣後債を発行するものです。仮に規制当局やバーゼル委員会から、ある日突然「特定の種類の劣後債は自己資本に算入不可にする」という規制が出れば、複数の銘柄の価格がまとめて暴落します。

バーゼル規制は各国の銀行の資本状況により、資本算入できる項目に多少バリエーションを認めていますので、特定の国の劣後債発行状況や条件が目に余る状況になると、そういう事態がないとも言い切れません。

c)為替ヘッジコスト

信託期間が5年として、5年分一気にヘッジを満期までかけることはありません。長期でヘッジをするのはコスト高だし、解約等によりファンドの残高も日々変わるので、通常は1か月~3か月毎の期間でヘッジをロールしていきます。

拙稿『為替ヘッジの仕組みと功罪』でご説明したように、為替ヘッジコストは外貨と日本円の短期金利差を反映します。外貨金利の方が円より高い場合、円ヘッジはコストを支払うことになります。

現状のように日本は金融緩和の出口が見えず低金利継続、かたや米欧は緩和の出口にあり金利上昇という局面にあると、金利差=ヘッジコストが将来上昇していくことは、単なる予想というより既定の事実として想定して投資する必要があります。

仮にポートフォリオ利回りが3.5%、うち2.5%はクレジットスプレッドという信用リスクの対価とします。そこで信託報酬が1.2%として、仮にヘッジコストが年率1.3%まで上昇すると、海外の高利回りを享受するためにリスクを取ってもスプレッド部分2.5%は丸々コストで持っていかれてしまいます。

ご自分の投資利回りを考えると、残り1.0%のために信託報酬を1.2%払うとしたら、いったい誰のための投資か?ですよね。ただ、拙稿『金利上昇期にはどんな資産に投資すればいい?』で書いたように、バンクローンの場合は短期金利連動で受取金利が上がっていくのでヘッジコストの上昇を相殺する効果が期待できます。

d)利回り希薄化

c)でのポートフォリオ利回りから信託報酬とヘッジコストを引く手法で、デフォルトがない場合の円ベース利回りはほぼ推計できます。ポートフォリオ利回りも投資開始後のファンドの月報で開示されていますが、見落としがちなのはフルに投資されている時の利回りが満期までは続かないということです。

なぜなら、1銘柄だけに投資していることはありえないので債券の満期は信託期限の前にバラバラきて、満期後は基本キャッシュ運用になり利回りがぐっと下がります。

5年満期のファンドとすれば仮に平均して残り3か月間はフルに投資されないとすれば、5年間の利回りはポート利回りが3%とすると20分の1(=3か月/60か月)程度下がることになります。この例だと0.15%ですから、日本国債10年物が稼ぐ利回りの3〜5年分くらいに値します。

ここまでご説明してきた外債フルヘッジ型をまとめますと、以下のようになります。

  • 個人投資家がアクセスしづらい資産に投資して円利回りを享受できる預金代替的投資。
  • デフォルトが数件出ると利回りは吹っ飛んで基準価額が投資元本を割ることもありうる。
  • 為替ヘッジコストは上昇を見込むことが必要。コストが利回りを超えると逆ザヤにより基準価額は減って元本割れの要因になりうる。

 CB単位型とは?

現在は世界的に株価が上昇し、CBはこの手法に組み込みづらい資産となってしまいましたが、8〜9年前に流行した投資手法です。CBとはConvertible Bondの略で転換社債とも呼ばれ、特定企業の社債ですが、一定の行使価格で株式に転換できるコールオプションが内包されています。その転換権の分、同企業の社債より利回りがかなり低く設定されています。

株価が上昇すると株の要素が強くなり株価との連動性を高めますが、株価が転換価格よりかなり低位にあると株価との連動性はほぼなくなり、ほとんど通常の社債の利回りに近くなります。社債なので満期があり、デフォルトがなければ額面で満期償還されます。

CBはCPPI とは全く異なった形で、運用手法でなく投資対象商品自体に下方リスク限定の要素が含まれています。「一時」流行った、というのは、株価が高い時に発行され、たとえば株への転換価格が500円なのに現状の株価が200円と低迷しているために転換オプションが無価値になっているようなCBが多いと、市場で買い集めて持ち切れば満期にパーで返ってくるし、万が一株価が転換価格近辺まで上昇すればアップサイドが狙えるというスキームです。

今、市場で200円で買える株に500円出して転換しても損ですが、社債として普通に買うより、転換オプションがある分、妙味があるというものです。

こちらも外貨建てCBをフルヘッジで持ち切り、満期に10,000円+アルファを狙う点では外債フルヘッジと同じです。通常の社債か、それより多少利回りが低いので前述の劣後債等に比べて利回りは出ませんが、その分、株価上昇時の楽しみがあります。

こちらもデフォルトリスクやヘッジコスト上昇リスクは外債フルヘッジと同様です。

林 俊宏

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林 俊宏

国内大手信託銀行を振り出しに、系列の投信運用会社、外資系運用会社、販売会社等で一貫して商品企画に携わる。
株、債券、リートにとどまらずバンクローン、デリバティブ、ヘッジファンド、プライベートエクイティも投資または組成経験あり。
証券アナリスト協会検定会員、ペンシルベニア大学・ウォートンスクールにてMBA取得