はじめに

「経団連」という言葉は、新聞の経済面を読めば、ほとんど毎日のように目にする言葉です。

最近では、「経団連会長、東レ不正問題“心からおわび、信頼回復に全力”」(11月28日、日本経済新聞)、「経団連会長に日立・中西氏=年明け内定へ調整」(11月16日、時事ドットコムニュース)、「月給3%の賃上げ検討を 経団連、会員企業に要請 来春闘の方針案」(11月28日、産経ニュース)といった記事がありました。

また、就活生にとって最も関心が高い新卒の面接解禁日などの採用スケジュールを決めているのも経団連です。

ただし、その成り立ちや組織の役割を正しく説明できる方はあまり多くないかもしれません。そこで今回は、就活生にもわかりやすく経団連について解説したいと思います。

経団連とはどのような組織なのか?

経団連の正式名称は、「一般社団法人 日本経済団体連合会」です。英語名は「Japan Business Federation」ですが、海外でも有名なので、“Keidanren”でも通じます。

その組織は、日本の代表的な企業1,350社、製造業やサービス業等の主要な業種別全国団体109団体、地方別経済団体47団体などから構成されています(2017年4月1日時点)。

経団連の使命は「総合経済団体として、企業と企業を支える個人や地域の活力を引き出し、我が国経済の自律的な発展と国民生活の向上に寄与することにある」というものです。

また、この使命を果たすため、「経済界が直面する内外の広範な重要課題について、経済界の意見を取りまとめ、着実かつ迅速な実現を働きかける」とされています。

平たく言えば、政府や社会に対して政策提言を行うシンクタンクの役割と、提言だけではなく、業界の利害をまとめて実際に働きかける役割を担った組織、つまり業界団体ということになります。

同様な組織は海外にもあり、そのような活動は「ロビー活動」、それを行う団体は「ロビイスト」と呼ばれています。

なお、民間企業から成る業界団体は経団連以外にもあります。日本各地にある商工会議所を会員として組織された中小企業が中心の「日本商工会議所」(日商)、経営者が個人的に参加する「公益社団法人経済同友会」は、経団連と合わせて「経済三団体」と呼ばれています。

2010年からは、経団連を脱退したインターネット関連企業を中心に、「一般社団法人 新経済連盟」(新経連)という業界団体も組織されています。

経団連はいつできたのか

現在の経団連は、15年前の2002年5月に経済団体連合会と日本経営者団体連盟(日経連)が統合して発足しました。

ただし、その母体である経済団体連合会は戦後1年目の1946年8月に、また、日経連はその2年後の1948年4月に発足しており、実は約70年という長い歴史を有しています。

なお、この両者が統合された理由は、加盟企業がほとんど重複していたことや、労使間の先鋭的な対立の終息に伴い労働問題を専門的に扱っていた日経連が独立組織として存在する理由がなくなってきたことが背景にありました。

経団連の会長になるための条件は?

経団連会長は日本の経済界のトップの立場であるため、「財界総理」とも呼ばれるほど重い存在です。このため、なりたいと思っても簡単にはそのポジションを得ることはできません。

その条件は、明文化され公表されているわけではありませんが、これまでの経緯などから、金融やサービスではなく製造業出身者であること、三井、三菱、住友といった旧財閥企業出身者ではないことが条件であると一般的には見られてきました。

ただし、2010年には第3代経団連会長として住友化学(4005)出身の米倉弘昌氏が会長に就任したため、旧財閥という“しばり”は、最近ではなくなってきたと見るべきかもしれません。

ちなみに、現在の経団連会長は東レ(3402)出身の榊原定征氏(74歳)、また、次期会長に内定したと報じられているのは日立製作所(6501)会長の中西宏明氏(71歳)ですが、ともに製造業出身です。

経団連はなぜ必要なのか、そのメリットとは

では、なぜ経団連という組織が必要なのか。そのことを考えるために、経団連の現在の取り組みを見てみましょう。

2017年11月8日に発表された「当面の解題に関する考え方」というニュースリリースでは、現在の経団連が以下の課題に取り組んでいることが示されています。

  • 消費喚起(プレミアムフライデーの推進など)
  • Society 5.0の実現(IoT、AI、ロボット等の活用)
  • 多様な人材の活躍推進と働き方改革
  • 地球温暖化対策
  • 国家的イベントの成功(2020年東京オリンピック・パラリンピック、2025年日本万国博覧会誘致)
  • 世界各国との経済協力の推進

いずれも、会員企業がビジネスを進めるうえで重要な課題であるとともに、企業1社で実現していくことは困難なものです。つまり経団連は、このような課題について、組織として政治や社会に働きかけることで実現を図ろうとしているということになります。

また、このことが経団連の会員になるメリットであると考えられます。

デメリットはないのか

一方、デメリットも全くないとは言えません。最大の問題点は、ロビー活動にのめり込みすぎると本業のビジネスがおろそかになってしまうことです。

というのは、経団連の活動をサポートするために、企業は「お金」だけではなく、スタッフなどの「人的資源」も提供することが避けられないためです。

また、経団連の活動は政治的な影響も持つために、政府との関係が近くなりすぎたり、あるいは疎遠になり過ぎたりすることが考えられます。そのどちらであれ、ビジネスへの影響が現れてしまう可能性があることにも注意が必要でしょう。

海外のグローバル企業でもロビー活動は活発に行われています。このため、海外のグローバル企業との競争に立ち向かうために、経団連を活用して「官民一体」でビジネスを進めることを“癒着”と批判するのは、いささかナイーブな考え方でしょう。

とはいえ、一方で、適度な”間合い”を保ち続けることも重要であるということになります。

まとめ

このように、経団連は現実のビジネスと政治に密接な関係を持ち、日本の経済界のなかで重要な役割を担う組織です。

このため、これから企業に就職を目指す就活生や、企業で出世を目指すビジネスマンは、今、経団連が何を考えて行動しているのかを、ホームページなどを見ることにより定期的にウォッチしておくことをおすすめします。

また、個人投資家の方は日本の産業界の動向を知ることで投資アイデアを見つけることもできますので、経団連の存在を肯定する、否定するにかかわらず、活動状況をフォローされると良いと思います。

LIMO編集部