”全部ウソでした”〜急展開のロシア疑惑、トランプ弾劾はあるか?

カギは司法妨害の立証

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米ロシア疑惑で渦中にあったフリン前大統領補佐官が司法取引に応じ、米連邦捜査局(FBI)への虚偽報告を認めたことから事態が急展開しています。そこで今回は、ロシア疑惑の最新事情を時系列的にまとめ、今後の焦点を整理してみました。

フリン前補佐官との司法取引が成立、政権中枢の関与を証言へ

ロシア疑惑とは昨年の米大統領選挙でロシアとトランプ陣営との間で“共謀”があったのではないか、との嫌疑のことですが、今回のフリン氏の司法取引はこの意味でのロシア疑惑とは直接的な関係はありません。

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ただし、玉突き的に発生したFBIへの“司法妨害”を立証する上で重要な役割を演じる可能性があります。

司法取引を巡るテーマは、昨年12月のフリン氏とロシアとの接触です。実際の動きを時系列で簡単にまとめると以下のようになります。

  • 12月22日 トランプ政権移行チーム首脳がフリン氏に、イスラエル入植地に関する安保理決議の採決について、ロシアを含めた外国政府に接触するよう指示。
  • 22~23日 フリン氏は駐米ロシア大使に、決議案に反対するか採決を延期するよう要請。ロシア大使は翌日、ロシアは決議案に反対しないと回答。
  • 28日 オバマ大統領(当時)が大統領選介入への報復としてロシアへの制裁を決定。駐米ロシア大使がフリン氏に連絡を取る。
  • 29日 フリン氏は政権移行チーム首脳に連絡し、大使への対応を協議。大使に電話をし直し、ロシアに過剰反応しないよう求め、再び政権移行チーム首脳に連絡する。
  • 30日 ロシアのプーチン大統領が報復措置をとらないと発表。
  • 31日 駐米ロシア大使がフリン氏に電話でロシアの立場を伝達。フリン氏は政権移行チームに連絡。

米国では、民間人が政府の許可なく外国政府と外交交渉を行うことは違法となります。問題となっているロシア大使との接触は、トランプ政権発足前の昨年12月のことでしたので、当時はまだ民間人であったフリン氏の行動が問題視されたわけです。

トランプ政権はこれまで、フリン氏とロシアとの接触は同氏の単独行動としていましたが、実際には、ロシアとの接触は政権中枢部が主導しており、フリン氏はその伝達役に過ぎなかったようです。

FBI長官、司法長官代行の解任理由も明らかに?

今回の報道で、コミーFBI長官解任事件の理解がかなりスムーズとなりそうです。

一連の動きを時系列でまとめると以下のようになります。

  • 1月26日 イエーツ司法長官代理がフリン氏とロシア政府との接触をトランプ政権に報告。
  • 1月27日 コミーFBI長官をホワイトハウスに呼び「忠誠」を求めるも拒否される。
  • 1月30日 イエーツ司法長官代理を解任。
  • 2月9日 ワシントン・ポスト紙がフリン補佐官とロシアとの接触を報道。
  • 2月13日 フリン補佐官が辞任。
  • 2月14日 トランプ大統領、コミ―FBI長官にフリン氏の捜査を打ち切るよう要請。
  • 3月20日 コミーFBI長官、ロシアとトランプ陣営の関係を捜査していると下院で証言。
  • 5月3日 コミーFBI長官が上院で証言。トランプ政権は事前に証言内容の提出を求めるも拒否される。
  • 5月9日 コミーFBI長官を解任。
  • 5月10日 トランプ大統領とロシア外相が会談。

また、フリン氏の背後にいる黒幕がトランプ大統領の娘婿であるクシュナー大統領上級顧問であったことが、複数のメディアで指摘されています。

昨年12月22日は国連安保理決議に、米国は拒否権を行使しないとオバマ政権が決定した日でもあります。フリン氏は“クシュナー氏の指示”で駐米ロシア大使と接触し、安保理決議に反対することを要請したということです。

決議案は、イスラエルに対し、占領地への入植活動の停止を求めるものですが、クシュナー氏は敬けんなユダヤ教徒であり、イスラエルとの深い関係が指摘されています。

また、クシュナー氏が12月13日、ロシア国営の開発対外経済銀行(VEB)のトップで、プーチン大統領に近いとされるセルゲイ・ゴルゴフ氏と会談していることも疑惑を深めています。

VEBは米政府の制裁下にあり、米国人との取引が禁止されています。米国が対ロ経済制裁を解除もしくは緩和することで、クシュナー氏の不動産事業への融資の可能性が模索された疑いが持たれています。

トランプ政権は当初、フリン氏とロシアとの接触を否定していましたが、司法省がこの事実を把握していることが明るみ出ると、一転、接触を認め、フリン氏が政権に虚偽の報告をしていたことにして事態の収拾を図った模様です。

ただ、トランプ氏はフリン氏へ指示を出していたのがクシュナー氏であることを知っていた可能性が高く、クシュナー氏もしくは自身を守るためにFBI長官を見方につけようと画策したようですが、拒否されたことから解任したというのが実際の流れだったようです。

“弾劾可能”な司法妨害か否かが焦点へ

今後の焦点はトランプ大統領の司法妨害が立証され、弾劾手続きが開始されるのかどうかになりそうです。

まず、米国では大統領は起訴されない慣例がありますので、モラー特別検察官が大統領を起訴しないことが前提となります。

フリン氏がトランプ氏の指示によってロシアと接触したとしても、それだけで弾劾に持ち込むことは難しいと考えられています。そうではなく、トランプ氏がフリン氏に“虚偽の供述をするように指示”した場合、“司法妨害”として弾劾手続きに入る可能性が高まります。

司法妨害の立証の流れで注目されるのは、モラー特別検察官が司法取引を持ちかけたことです。司法取引を行うことが、司法妨害の立証の“本気度”を表しているとも受け取れるからです。

モラー特別検察官は10月30日、米大統領選挙でトランプ陣営の外交政策顧問を務めたパパドプロス氏や一時選対本部長を務めたマナフォート氏を起訴していますが、司法取引が行われた様子はありません。

FBIへの偽証罪は、通常であれば最高5年の禁錮刑が求刑されますが、フリン氏への求刑は6カ月以下となっています。フリン氏からクシュナー氏を経て、トランプ大統領の司法妨害を立証するための見返りがないのであれば、司法取引が成立するとは考えづらいでしょう。

モラー特別検察官の捜査結論を受けて、弾劾手続きを始めるかどうかの判断は議会に委ねられます。

弾劾の手続きはまず下院で始まり、下院で決議案が可決されると上院が弾劾裁判を開くことになり、罷免するかどうかが判断されます。捜査結果が弾劾に値するのかどうかがポイントになります。

フリン氏の司法取引は、大統領の弾劾に向けて最初の1歩を踏み出したといえそうです。

投信1編集部

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