日本の金融リテラシーのレベルに驚愕

米国にもOECDとの比較でも劣る結果

米国との比較では大きく劣る

前回の記事では、金融リテラシーとは何かを考えてみましたが、今回は日本のその水準はどれくらいなのかをみてみます。

日本銀行の情報サービス局内に事務局を置く金融広報中央委員会は、2016年3月に全国2万5000人を対象にした金融リテラシー調査を行いました。

その結果は、金融広報委員会のホームページである「知るぽると」に収載されていますので、ぜひ確認してみてください。あわせてそこに収載されている「金融リテラシークイズ」もやってみてください。みなさんは何点とれるでしょうか?

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この調査は、18-79歳までを対象に都道府県・年齢・性別で割り付けたミニジャパンをつくり、行動経済学の知見を組み込んだ初の広範かつ大規模な調査として注目されています。またそれぞれの調査項目は国際比較できるように設定され、米国の調査との比較は少し詳細になされています。

複利、インフレ、住宅ローン、分散効果、債券価格に関する5つのクイズの正答率は、米国が57%(2012年)に対して、日本は47%(2016年)と大きく劣後していることがわかります。個別の正答率でも全て日本が低く、なかでも複利に関する設問の正解率は日本が43%と米国の75%に比べて非常に大きな開きがありました。

象徴的だったのが、「金融知識に自信がある人」の比率です。日本はわずか13%、これに対して米国は73%でした。自信がありすぎるのもどうかとは思いますが、あまりに金融知識に自信がないというのはやはり教育の不足を痛感させられます。

逆にクイズではありませんが、数値が上回っていたのは、「緊急時に金銭的備えがある人の割合」で日本55%対米国40%、「(ローンなどを)借りすぎている人の割合」は日本11%対米国42%、「生命保険に加入している人の割合」は日本70%対米国53%です。なんとも日本的な結果ではないでしょうか。

OECD比較でも低い

さらに、この調査結果のうち11項目ではOECDとの比較もされています。金融知識(正誤問題5問)、金融行動(4問)、お金に対する考え方(2問)の3つの分野でそれぞれ正答率、正しい行動・考え方を採用した比率の平均を取っていますが、日本は58%と、OECD調査14か国(日本を含まない)の平均63%を下回っています。

特にポイントの低かったところは、知識のなかでは複利と分散でしたが、OECDの平均と比較して大きく劣後しているのはインフレの定義でした。永らく続くデフレの影響がここにも出ているのかもしれません。

お金に関する行動では、「お金の運用や管理への注意」を払う比率が低く、「商品購入時の資金的余裕を確認」する行動の比率も低くなっているのが、気になるところです。

また、お金に対する考え方では、「消費よりも将来の備えを重視する」比率が低いことに驚きました。日本人は貯蓄好きといわれるので、OECD平均よりも高いはずと思い込んでいましたが、まったく逆でした。

ただ、貯蓄という言葉の持っている意味を、欧米ではSavingsとすれば、このなかには投資も含まれます。これに対して、日本で貯蓄といえば銀行にお金を預ける預金になります。日本の場合、銀行に預けておいても意味がないという判断から「どちらでもない」との回答が増えた結果かもしれません。

いずれにしても、英国やドイツとの格差が意外に大きく、ハンガリー、アイルランド、ペルーなどと比べても平均値が低い点は、かなり深刻に「我が国の金融リテラシーの低さ」を肝に銘じる必要がありそうです。

OECD調査、金融リテラシー国際比較(単位:%)

出所:金融広報中央委員会 「金融リテラシー調査」2016年

(注)知識の行には正答率、行動の行には望ましい行動の割合(行動の上記①~④の項目に対して「1あてはまる」または「2」を選択した人の割合)、考え方の行には望ましい考え方の割合(考え方の上記①②の設問に対して「4」または「5あてはまらない」を選択した人の割合)を、それぞれ記載。

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フィデリティ退職・投資教育研究所 所長 野尻 哲史

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野尻 哲史
  • 野尻 哲史
  • フィデリティ退職・投資教育研究所
  • 所長

国内外の証券会社調査部を経て、2007年より現職。アンケート調査をもとに個人投資家の資産運用に関するアドバイスや、投資教育に関する行動経済学の観点からの意見を多く発表している。
日本証券アナリスト協会検定会員、証券経済学会・生活経済学会・日本FP学会・行動経済学会会員。
著書には、『老後難民 50代夫婦の生き残り術』、『日本人の4割が老後準備資金0円』(講談社+α新書)や『貯蓄ゼロから始める安心投資で安定生活』(明治書院)などがある。
調査分析などは専用のHP、資産運用NAVIを参照