中国経済、構造改革が進む中のリスクは何か

「新常態」における課題とは?

政策効果で経済成長は堅調

2015年から2016年の初めにかけて、中国経済は国内消費や設備投資が低下しました。加えて、第2次産業で過剰生産能力の問題や、不動産の供給過剰感といった要因が顕在化し、景気底割れが懸念される局面もありました。2016年初めに、上海株式市場で大幅な株価下落が起きたことは記憶されていらっしゃると思います。

しかし、2017年に入ってからは1〜9月で6.9%の成長を記録し、現状では、当初の政府目標である年間目標6.5%成長を達成することがほぼ確実な情勢となっています。

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IMFも2017年初めこそ中国経済成長の同年見通しを6.2%まで低下するとしていましたが、現在は6.7%に上方修正しています。2015年末からの2年間で、中国経済の状況は随分と変わっているといえます。

これは、2016年初めに景気底割れ懸念の中、発動された規制緩和や金融面での支援など政府の景気刺激策が効果を発揮してきたことが背景にあります。現状は、政策効果がありすぎて想定よりも上ぶれたといってもいいほどかもしれません。

政策発動の背景としては、習近平政権の二期目入りを控え、権力基盤の獲得のために、国内向けには中国経済を下支えする必要に迫られたのだと筆者は考えています。

政治的には、今年10月には、「共産党大会」と中国共産党のトップ約200人の中央委員らが集う「第1次中央委員会全体会議(一中全会)」が開催され、第二期習近平体制が発足しました。習近平の権力基盤が強化されたことで、今後は、再び構造改革を優先した経済運営の姿勢が鮮明になる可能性が高まります。

「新常態」移行における課題は?

構造改革とは、5カ年計画にも明記してあるとおり、「新常態」への移行です。

「新常態」とは、内需主導型の経済への移行を意味しています。かつての「改革開放」の時代に、安価な労働力とその膨大な数を武器に第2次産業を中心として高い成長を遂げた「世界の工場」モデルではなく、国内に形成された富を背景とした内需により経済をまわしていくということです。

しかし、これには、まだ越えるべきハードルは多いと言わざるを得ません。また、中国経済の成長率は、緩やかに下がっていくことが予想されます。

中国政府は、近年、素材産業や重化学工業での供給過剰の削減に取り組んできました。過大な投資や過剰な設備を抑制し、生産設備稼働率が回復傾向にあるほか、生産者物価上昇率もプラスに転じるなど一定の成果は見えてきています。そして、前述の通り、2017年の経済成長率から見る限り中国経済は堅調だと言うことができます。

しかし、長期的には、過剰生産能力の解消や中国内不動産市場の安定に加えて、高い借り入れ水準のバランスシートを見ると、中国経済がこれらの諸課題を解決して、内需主導型の安定軌道に乗ったと判断するのは、まだ早計と言えます。足元のリスクは小さくなったと言えますが、まだまだ、まだら模様の状況は継続しそうです。

Nippon Wealth Limited 長谷川 建一

ニュースレター

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長谷川 建一
  • 長谷川 建一
  • ニッポン・ウェルス・リミテッド・リストリクティド・ライセンス・バンク
  • 取締役兼CIO (Chief Investment Officer)

京都大学卒、MBA(神戸大学)。 シティバンクグループ日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、2000年にシティバンク日本のリテール部門で商品開発や市場営業部門のヘッドに就任。2002年にシティグループ・プライベートバンクのマーケティング部門ヘッドに就任。
2004年末、東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)に移り、リテール部門マーケティング責任者として活躍。2009年からは国際部門でアジア・リテール戦略を担い、2010年は香港にてBTMUウエルスマネージメント事業の立ち上げに従事。
2013年よりNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(ニッポン・ウェルス・リミテッド・リストリクティド・ライセンス・バンク)にてCOOに就き、2017年3月よりCIOを務める。