増益率の低下は、株価下落の前兆か?

「柏原延行」のMarket View 2017年12月11日

皆さま こんにちは。アセットマネジメントOneで、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めます柏原延行です。

法人企業統計(2017年7~9月期)が12月1日に財務省から発表されました。この統計は、日本株の投資判断を行う上で、最も重要なものであると私は考えています。

各種メディア等では、①全産業ベース(金融・保険業を除く)の経常利益は前年同期比で5.5%と5四半期連続の増加となったこと、②全産業ベース(同上)の設備投資は前年同期比4.2%と4四半期連続の増加となったことが、中心的に伝えられているようです。

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利益の数字は当然重要ですし、設備投資はGDPに大きな影響を与えるため、マクロ的な視点からも重要な数字となります。

5四半期連続・4四半期連続との数字から分かるように、利益や設備投資の増加率自体は堅調であると捉えるべきですが、もう少し細かい内容も見ていきたいと考えます。

経常利益は、4~6月期までの4四半期連続で2桁の増益であった伸びが、7~9月期においては1桁の伸びに留まったため、利益改善の勢いが衰えたとの捉え方もあるようです(なお、前年同期比は、前年の同時期がどのような状況であったかによって、大きく変動する可能性を持つ数字であることに注意が必要です)。

すなわち、2017年7~9月期の企業利益は、「前年同期比でプラスである(+5.5%増益)」が、「前年同期比の数字は、前期と比較して減少している(+22.6%→+5.5%へ=改善の勢いが衰えた)」との局面であると整理できます(図表1のケース②の局面)。

図表1:変化率と勢いの場合分け

出所:アセットマネジメントOneが作成
プラスからマイナスへの転換はマイナス幅拡大、マイナスからプラスへの転換はプラス幅拡大と考える

もちろん、株価は利益だけで決まるものではありませんが、利益が重要なこともまた確かであると考えるため、前回の「ケース②の局面」を探して、その局面での日経平均株価の変化率を見てみましょう(図表2)。

図表2からは、「前回、ケース①から②に転じた局面では、株価が10%超下落したこと(赤)」と、「前回のケース②以降の時期において、ケース④の期が3期間も続き、3期通算では株価の変化率がマイナスであること(緑)」が分かります(この後から、前述の5四半期連続の増益局面に転じます)。

図表2:前回ケース①から②に転じた以降の状況

出所:法人企業統計、ブルームバーグのデータを基にアセットマネジメントOneが作成
株価の変化率は、日経平均株価を利用
2015年4~6月期は、2015年3月末から2015年6月末の株価の変化率を示す。

利益改善の勢いが衰えたことから、2018年の我が国株価の動向を心配される方もいらっしゃるのではないかと拝察します。

しかし、私は、2018年の株式相場についても強気の見方をとっています。

その理由としては、将来(2017年10~12月期以降)の企業利益は、「2015年10~12月期から2016年4~6月期に3期連続で発生したケース④の局面(減益かつ減益幅拡大)」に入る可能性は低いと考えているからです。現在の世界景気は同調的な成長局面(Synchronized Growth)に入っており、あまりにも好調だった2017年1~3月期+26.6%、2017年4~6月期+22.6%という増益率は低下するものの、2018年を通しては、増益を確保できると考えます。

したがって、足元から来年初頭までは、日米金融政策の不透明感の高まりなどから、調整局面に転じる可能性に留意が必要なものの、2018年を通じては、我が国株価は上昇すると考えています。

(2017年12月8日 9:00執筆)

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柏原 延行

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柏原 延行
  • 柏原 延行
  • アセットマネジメントOne株式会社 
  • 運用本部調査グループ チーフ・グローバル・ストラテジスト

現みずほ銀行の運用担当者(外国債券など)を経て、運用会社にて、株式運用部長、企業調査部長、運用戦略部長などを歴任後、現在はアセットマネジメントOneにて、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めております。
運用会社に勤務して、はや25年を超えました。遊び心も忘れずに、皆さまのお役に立てるコラムをお届けしたいと考えます。妻、娘の3人家族です。
早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター非常勤講師、日本証券アナリスト協会検定会員。大阪大学卒業、筑波大学大学院修了。