日本を代表する証券の街、兜町の再開発が動き出しています。その兜町に先立って再開発が始まった大阪の証券街・北浜は、マンションやホテルが増えて様変わりし、現在は美食の街として存在感を増しつつあるという状況です。

証券会社が立ち並んでいたかつての面影が消えつつある兜町は、再開発後も相場の街としての雰囲気を残すことができるのでしょうか。

地下鉄茅場町駅近辺のビル再開発が順次開始

兜町の玄関口とも言うべき地下鉄茅場町駅に近い複数のビルを解体し、高層ビルを建築する計画の第一弾は、来年2018年に着工し2020年に完成予定となっています。

近年、兜町では証券会社の脱出が進んでいます。地場証券会社が根強く営業を続けていますが、大手証券はほとんどが大手町周辺に本社機能を移転。日本橋のたもとの軍艦ビルでお馴染みの野村証券も、その日本橋本社と大手町本社の2本社体制となっています。

そうした中、茅場町駅周辺のビル再開発は、証券の街として浮沈を繰り返してきた兜町に新しい時代の幕開けをもたらすのかもしれません。

一足先に再開発が進んだ大阪・北浜

一方、大阪で証券街として発展したのが北浜です。

しかしながら証券取引のIT化による省力化、大阪経済の地盤沈下、証券業界の再編などにより、北浜は証券の街としては既に過去の存在と言っても過言ではありません。

かつて野村証券が本社を置いた建物は大阪シティ信用金庫の本店となっており、大和証券旧北浜支店は分譲マンションとなっています。

また、証券マン御用達だった百貨店の三越も既に高層マンションに変わるなど、北浜は訪れるたびにマンションが増えています(ちなみに、三越の梅田進出の悲願がその後伊勢丹の梅田進出につながりましたが、阪急百貨店に軽くいなされての撤退劇に終わっています)。

さらに、折からの大阪における訪日外国人観光客ブームもあり、現在はホテルの進出も目につきます。大阪証券取引所(現・大阪取引所)が建て替えられた2004年から10年以上の歳月が流れた今、北浜はかつての証券の街の姿を失ってしまいました。

美食の街となりつつある北浜

証券街の風情は今は昔となりましたが、近年の景気回復と外国人観光客殺到を背景に、意外や意外、北浜は美食の街として知られるようになっています。

北浜はすぐ北側が川岸という立地もあり、レストラン出店には抜群の雰囲気を持つエリアとして以前より知られていました。そうした立地条件もあって、北浜の北側を中心に飲食店の出店が進み、今や行列の絶えない店も存在。大阪取引所の地下飲食街も美食の街の一角を形成しています。

これまで金融機関跡地のマンション化の話題が多かった北浜では、久しく聞くことがなかった新しい展開と言えるでしょう。

兜町独自の雰囲気を残すことができるのか?

東京証券取引所にほど近い兜神社は高速道路とビルの谷間にある

西の証券街、北浜にかつての面影はあまり見当たりませんが、これから再開発が始まる兜町は、現在も残っている独特の雰囲気を残すことができるのでしょうか。

兜町は日本橋や大手町まで徒歩圏内であり、梅田や難波から離れた北浜とは異なる立地です。再開発が進んだ日本橋エリア同様、兜町も再開発の結果、最先端のビルが立ち並ぶ普通の東京の街になってしまうのでしょうか。

相場の街の空気を今もどことなく残している兜町界隈。再開発の後もこうした街の個性や雰囲気が残ることに期待したいと思います。

石井 僚一