絶対収益型ファンドとは? その3:ロングショート型、グローバルマクロ型を知る

広義の絶対収益型ファンドのカテゴリーの中で、前2稿ではCPPI型外債フルヘッジ単位型をご紹介しました。これらは商品設計あるいは一定の運用ルールによって、いわば運用の巧拙そのものより「仕組み」によって下方リスクを抑えたり、元本確保性をスキームで提供するものです。

本稿では、「上げ相場でも下げ相場でも収益を上げることを追求」する絶対収益追求型の本流と言えるロングショート型とグローバルマクロ型についてご紹介します。

続きを読む

C. 「ロングショート型」「グローバルマクロ型」

CPPI型や外債ヘッジ型は下げ相場では損を避けて元本を守ることが主眼で、そこでのリターンを求めないため、通年で見ると上げ局面がないとほとんどリターンが出ません。それに対し、ロングショート型やグローバルマクロ型では下げ相場も収益機会として積極的に利用する点が異なります。

ロングショート型とは?

主に株式等の単一資産クラスで行う運用戦略です。投資対象資産としては株式(現物あるいは先物)とキャッシュや短期国債の場合(ロング&キャッシュ戦略)、あるいは株式(現物あるいは先物)と株式先物の場合(ロング&ショート戦略)があります。

ロング&キャッシュでは、運用マネージャーは株式相場が上がると読めば株式を上限100%買い持ち(ロング)にして、下がると思えば売却してキャッシュにします。株式ロングの比率は100%~0%まで変化します。

要はベンチマークにとらわれない、かつ儲かりそうな時だけ投資してリスクを取らない時には投資しない、という個人投資家のような運用手法です。格言にある「休むも相場」を地で行くような戦略ですね。

ただし、キャッシュ100%まで認めているからといってもCPPIのようにフロアで下値を確保できるわけでなく、キャッシュにする前に株式ロングの時に下落によって負けてしまうことはありますので下方リスク回避とはなりません。

運用者がリスクを取るべきでないと判断してキャッシュで待避している期間があまりに長いと信託報酬のみ取られ続けるので、投資家としては運用者が不労所得を狙ってかまけないように最低でもポートフォリオ残高の30%ロング等、運用上の縛りを設ける場合もあります。

この場合は下げ相場では損が出るので「ロングバイアス」と呼びます。参考指数を当該株式指数にした場合、キャッシュのみにしていると、参考指数が下げ一辺倒だと指数に大勝ちするので、運用者が優秀と言ってよいのか、単に判断しなかったのかと皮肉な結果も見られます。

CPPIとリスクの取り方は似ていて、下げ相場では相場から下りる、上げ相場ではリスクを増やす点は同じに見えます。しかし、CPPIではファンド設定時期からの基準価額の水準により、一定の式やルールでリスク資産の比率を決めていくのに対し、ロング&キャッシュではマネージャーの相場観によります。

ロング&ショートでは、キャッシュ化して「相場から下りる」手法と異なり、先物で売りポジション(ショート)を入れてロングの比率を下げます。

現物株を大量に売却すると売買手数料等の執行コストがかかるので、現物ポートフォリオは動かさないで先物ショート(空売り)でリスクを取る比率を機動的に変えていく方が効率的です。また、他に現物で預かり残高の130%ロングポジションを取り、先物で30%ショートにして相殺後のネットで100%ロングにする130-30と呼ばれる手法もあります。

こちらもロング比率の判断は、いろいろなマーケットシグナルやマネージャーの相場観によります。

補足説明をしますと「先物でショートを取る」とは株式指数先物を売りから入り、後に下がったところで買い戻す手法です。先に高く売ってから相場が下がり、後で安く買い戻せば利益が出ますが、ショートポジションを持つと逆に相場が上昇すると損失が出ます。

現物株式や債券でも売りから入る手法はありますが、株式や債券を借りてきて売り持つので品借り料がかかるため、先物の方が簡単でコストも安くなります。

いずれにしろ、ショートは信用力や事務インフラを持たない個人投資家には取れない手法なので、ファンドを利用するのが簡便です。ただ、こういった運用戦略のファンドは各種規制の関係から、設計自由度の高いヘッジファンドとして外国籍等で販売されることが多く、一般投資家にとって身近に豊富に提供されているわけではありません。

グローバルマクロ型とは

これは正に絶対収益型中の絶対収益型と言える手法で、主に機関投資家や超富裕層向けのヘッジファンドとして提供されます。

ロングショートが単一資産で行われるのに対し、グローバルマクロは、GTAA戦略のアセットアロケーションファンドのように国内、海外(先進国、新興国)の株式、債券(先進国、新興国、国債、社債)等に投資します。しかし、すべての資産を買い持ちで分散してリスクリターンの向上を目指す手法ではありません。

すべての資産が同時に上がる相場局面というのは稀ですから、むしろ負の相関性がある、すなわち逆の動きをする資産を組み合わせれば両方で収益を追求できます。たとえば、景気が上昇局面にあると読めば株式はロングにし、同時期に金利上昇で価格が下落する債券はショートして、両方の資産で収益を追求する欲張りな手法です。

実際は前述と同様の景気上昇局面で、債券の中でも金利上昇でやられる国債はショート、景気上昇でスプレッドが収縮する(=債券価格の上昇要因)ハイイールド社債をロングにする組み合わせ等、縦横無尽な取引を行います。

通常、一般投資家向けの公募投信では単に原証券に付随してくるだけの為替リスクも、グローバルマクロでは独立した投資対象として積極的に収益源にします。たとえば米国債を買ってもさらに買い持ちとなっているドルを売ってブラジルレアルに持ち替えてレアルのリスクを取ったりします(為替オーバーレイ取引)。

この例では国債という1つの資産で2種類のリスクを貪欲に取ります。為替取引は必ずどちらかの通貨を買って他方を売る取引なので、どちらかの通貨は必ずショートになり、この運用戦略には使いやすい投資対象ツールなのです。

上記を聞くと下げでも上げでも収益を上げられるのでとても魅力的なのですが、相場観を見誤ると色々な資産で一斉に損失を被るので運用マネージャーの才覚に大きく依存する手法です。また先物やその他のデリバティブを活用して投資元本の数倍のリスクを取る(レバレッジ)戦略などもあり、大勝ちもあれば逆もありえます。

さらに、ヘッジファンドの世界では絶対収益型は一定の期待パフォーマンスを超過したら成功報酬を超過分の20%取られたりするのでコストも高くなりがちです。

まとめ

若干難しい話が続きましたが、絶対収益型のシリーズはこれで終わりにします。

読者の皆さんにご認識いただきたいのは、預金から投資に向かう投資家は、入門ニーズとしては元本確保、下方リスク回避、いつでも収益を追求し資産形成できる商品を求めがちですが、そうした商品はむしろ通常の(ベンチマークに対する)相対収益型等に比べて複雑な手法を駆使するので投資のリテラシーが必要であり、皮肉にも初心者に向かない傾向が高いということです。

運用会社、販売会社もなるだけ理解しやすく説明する努力を凝らしていると思いますが、耳ざわりの良い結果だけ求めてよく理解せずに投資するのは危険なので、事前にしっかり知識を得ることをおすすめします。また、本稿がリテラシー向上の一助になれば幸いです。

林 俊宏

ニュースレター

PR

林 俊宏

国内大手信託銀行を振り出しに、系列の投信運用会社、外資系運用会社、販売会社等で一貫して商品企画に携わる。
株、債券、リートにとどまらずバンクローン、デリバティブ、ヘッジファンド、プライベートエクイティも投資または組成経験あり。
証券アナリスト協会検定会員、ペンシルベニア大学・ウォートンスクールにてMBA取得