新しい年が明けました。2017年は日本株も米国株も堅調に推移し、資産形成に取り組まれている方にとってはまずまずの年だったかもしれません。今回は、2018年の相場がどうなるのかについて、個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」編集部の協力も得ながら考えてみたいと思います。

世界の株式投資家が微笑んだ2017年

――2017年はどんな年だったでしょうか。

Longine編集部(以下、Longine):まずは日本株から振り返ってみましょう。TOPIXは、2017年1月4日の株価指数を100とすると、12月26日終値時点で117.5と約18%上昇しています。年間で+18%の上昇は多くの投資家にとってはまずまずではないでしょうか。

海外では、TOPIXと同じ条件で見ると、ダウ・ジョーンズ工業株価指数は+24%、S&P 500は+18%、MSCI AC Europeは+20%、MSCI Chinaは+50%となっており、中国を除いて概ね同水準の上昇となっています。グローバル株式を見る上で参考となるMSCIワールドも+18%の上昇と、これも日本株、米国株、欧州株と概ね同水準の上昇です。

――2017年に懸念されていた事項はあったのでしょうか。

Longine:皆さん既にお忘れかもしれませんが、トランプ大統領の就任で世界中が真っ暗闇になるかもしれないということで、大統領選直後は株式市場も為替市場も大荒れでした。しかし、ふたを開けてみれば、結果論ですが投資家にとっては「良い年」だったと言えます。

2018年は金融政策に注目

――では、2018年はどういった年になると考えていますか。

Longine:まず注目すべきイベントは、米国でジャネット・イエレンFRB議長の任期が2月に満了することでしょうか。次期議長にはジェローム・パウエルFRB理事が指名されていますが、特段大きな金融政策の変更はないと見ています。

であれば、米国の金融政策変更による大きな為替レートの変動はないと考えるのがメインシナリオです。とはいえ、米国が小幅でも利上げモードであれば、若干の円安スタンスというところでしょうか。

加えて、4月に黒田東彦日銀総裁が任期満了を迎えます。こちらの後任人事も注目でしょう。続投なのか、別の人物にバトンタッチするのか、投資家としては不確実性を抱えているとも言えます。

2012年終盤からスタートしたアベノミクスも5年が経ちましたが、一つの区切りとしては分かりやすいですね。その中で、ここまで黒田総裁の描いた世界は実現できていないので、その責任は取るべきという論調はあるでしょうし、一方で大きな変化を望まないという考えもあるでしょう。

――金融政策が資産運用をするうえでのリスクということでしょうか。

Longine:現時点でこれがリスクだと指摘できるものではありませんが、後任が決まっていないので、誰が日銀総裁となるのかは米国の金融政策よりも気にはなります。

不測の事態が起きた時の対応策

――その他、資産運用をするうえで気を付けておくべきポイントはあるでしょうか。

Longine:地政学的リスクは引き続き念頭に置いておかざるをえない状況は変わっていませんね。ただ、これは事前に予想することができないので、心配し過ぎても仕方ないとも言えます。

何か不測の事態が起きた際には、「安全資産に資金がシフトする」「人の移動が止まる」「巣ごもり消費に目が向く」などのポイントに注意をして資産配分する必要があります。

熱量の高いテーマ投資株

――2017年の国内外の株式市場で注目すべきポイントはあったでしょうか。

Longine:ややテーマ投資寄りの話になってしまいますが、ロボットを活用した「自動化」やAIを含んだ「半導体」というテーマに乗った企業の注目度が増しました。株価に過熱感のある銘柄もありますが、長期的なトレンドでもあるので、引き続き注目されていくでしょう。

その一方で、日本の外食や小売業で顕著なのですが、人手不足によって店舗出店が思うようにいかなかったり、人件費が上昇することで売り上げは好調なのに利益が伸びない企業も目立ちました。こうしてみると、自動化は”待ったなし”なのかもしれません。

ECと物流システムが引き続き話題になる可能性は高い

――人手不足は宅配便など運輸業でも話題になりましたね。

Longine:ECは以前からありましたが、昨年ほど注目された年はなかったかもしれません。ただ、ECの普及はさらに進むでしょうから、運輸業も運ぶ荷物の数に対して総量規制するという発想ではいずれ対応しきれなくなるでしょうね。

また、アマゾンのようにECでシェアが高くなるプレーヤーが出てくると、交渉力は運輸業者からECプレーヤーにシフトするので、このバランスをどう取っていくのかにも難しいかじ取りが必要です。

さらに、ECプレーヤーも資金面で力をつけてくれば輸送業の一部業務を内製化しようとする動きも出てくるでしょうから、今後の両プレーヤーの動きには注目しています。

地銀再編の本当の背景とは

――他の産業で気になる動きはありますか。

Longine:2018年は地方銀行(地銀)の統合予定が目白押しです。三重銀行と第三銀行の経営統合、関西アーバン銀行、みなと銀行および近畿大阪銀行の経営統合、東京都民銀行、八千代銀行、新銀行東京の3行が合併予定といったように、地銀の再編が進むことになります。

地銀再編で短期的に何が変わるというわけではないですが、今後フィンテックが進展する中で地銀が預金者から選ばれる金融機関であり続けられるかというところに注目が集まるでしょう。銀行は、当たり前ですが預金がなければ事業が続けられませんから、サービスや機能を理由とした預金流出は避けたいところでしょう。

また、決済のためだけならプリペイドカード、消費者が手軽に資金を手にするためならメルカリやキャッシュというようなサービスも出てきているので、これまで銀行業が収益源としていた消費者ローンにも異業種の競合サービスが出てきたと見るべきでしょう。フィンテックとは、つまるところ金融業と異業種の異種格闘技戦にも見えますね。

インバウンドをどう取り込むのか

――沈静化した感のあるインバウンドはどうでしょうか。

Longine:一度味をしめた小売業や旅行業が今後どういった対応をするのかがポイントです。言語の問題を含めて受け入れ体制をどう整えるのかが今後のアップサイドを決めるのではないでしょうか。

また、外国人観光客は日本全国に散らばるのではなく、特定の観光地に集中します。この流れをこれまでインバウンドで恩恵を受けていない地方に送客することができるのか、また、そうしたサービスが生まれてくるかなどにも注目しています。いずれにせよテクノロジーを十分に活用することがカギとなるでしょう。

ビットコインはどうか

――ビットコインなどの仮想通貨についてはどう考えますか。

Longine:まだ仮想通貨への評価が定まっていないので断定はできませんが、投資家の動きを見ていると、値動きの小さい為替取引よりも仮想通貨取引の熱量が高まったのが2017年だった気がします。

「ビットコインは決済通貨としてイマイチだ」という観点でメディアが取り上げるのを見ると、仮想通貨ホルダーは果たして決済でビットコインを使おうと思っているのかなと疑問に感じます。

評価が定まるのにはまだ時間がかかりそうですが、金と比較してどうかというのがポイントになろうかと思います。ただ、金にはブロックチェーン技術はないですから、その差をどう評価すべきかということです。

――ありがとうございました。

Longine:今年もどうぞよろしくお願いします。個人投資家の皆さんが資産形成に順調に取り組めるよう祈っております。

LIMO編集部