資産運用のアドバイス・フィーは下がるのか

英国に学ぶ-そもそも「アドバイス」の定義とは

英国の資産運用に関するアドバイス市場の調査

前回の記事『ファイナンシャル・アドバイザーの生き残り策、英国での変化』でアドバイス・ギャップの存在に触れました。

手数料からアドバイス・フィーにシフトするなかで、資金の少ない投資家には、相対的にアドバイス・フィーが高くなることで、アドバイスを受けたくない、受けられない人が増えます。またアドバイザー自身も富裕層にシフトすることで、小口投資家が置いていかれたとも言われています。

続きを読む

これに対して、英国金融当局は、2015年8月に資産運用に関するアドバイス市場の調査に着手しました。これがファイナンシャル・アドバイス・マーケット・レビュー(Financial Advice Market Review;FAMR)と呼ばれるもので、2016年3月にはそのまとめとなる最終報告書が出されました。

その内容は、「消費者がアクセスしやすい環境」と「消費者が受け入れやすいサービス価格」を創ることを中心に28項目の提案でまとめられています。

「消費者がアクセスしやすい環境」を創り上げる施策のひとつとしてまとめられたのが、2017年3月にワーキング・グループから出された、「5つの経験則と促進策~英国消費者の金融健全度の改善に向けて」です(『消費者に響く「お金に関する経験則」とは?』を参照)。

アドバイスのコストダウン

また「消費者が受け入れやすいサービス価格」を追求する提案のもとでは、アドバイス・フィーの引き下げを図る努力が進められています。具体的には、①ロボ・アド等の廉価なアドバイス・サービスの拡大、②アドバイス・コストの引き下げ、③アドバイスの定義の明確化で無料かつ高度なガイダンスの充実、といった点に大別できそうです。

フィンテックを活用してアドバイスの自動化等を図ることやアドバイスのコスト(マーケティング、人材育成、技術開発投資、保険、法令順守のためのデータ収集、適合性確認プロセス等のコスト、法令関連コストなど)を削減することは、アドバイス・フィーを引き下げることにつながります。

オンライン上で投資一任勘定を行うロボ・アドバイザー企業が頭角を現していますし、英国金融当局は、2016年5月にフィンテックに関連するアドバイス部門を設置して、金融機関がより安価なアドバイスを提供できるようにサポートしています。

金融行為規制機構(Financial Conduct Authority; FCA)内に設置されたこの部門では、個別金融機関がフィンテック開発を進める際の規制上の要件や手続きなどを1対1でサポートし、最終的には個別サポートの結果を公開することになっています。

FAMRの報告書には「技術革新がこうしたアドバイスのコストを下げ、金融機関が消費者に対してより効率的に強固な関係を維持できるようになる」と言及しています。

アドバイスとは何か

もうひとつがアドバイスの定義です。そもそもアドバイスは料金を取る対象の「サービス」であること、その前段階の情報提供はガイダンスと呼んで区別しています。

アドバイスの定義が厳密・明確になれば、ガイダンスがしやすくなり、消費者への総合的なサービス・コストは相対的に低下するはずです。FAMRでは、「アドバイスの定義をより明確にすることによって企業が高いレベルのガイダンス(無料)を消費者に提供できるようにする」と指摘しています。

英国財務省が定めたアドバイスの新しい定義は2018年1月3日から施行され、同年にスタートする第2次金融商品市場指令(Markets in Financial Instruments Directive II; MiFID II)とも整合性がとられることになっています。

ちなみにMiFID IIで定義されている個人推奨の定義は、①推奨を含んでいる、②その推奨が金融商品の売買等に関連している、③相手に適切なもの/状況を考慮してのものである、④複数の顧客に一度に提供されたものではない、⑤投資家または潜在的な投資家(またはそれぞれの代理人)に対して行われたものである――といった条件を含んでいるものとなっています。

<<これまでの記事はこちらから>>

フィデリティ退職・投資教育研究所 所長 野尻 哲史

ニュースレター

PR

野尻 哲史
  • 野尻 哲史
  • フィデリティ退職・投資教育研究所
  • 所長

国内外の証券会社調査部を経て、2007年より現職。アンケート調査をもとに個人投資家の資産運用に関するアドバイスや、投資教育に関する行動経済学の観点からの意見を多く発表している。
日本証券アナリスト協会検定会員、証券経済学会・生活経済学会・日本FP学会・行動経済学会会員。
著書には、『老後難民 50代夫婦の生き残り術』、『日本人の4割が老後準備資金0円』(講談社+α新書)や『貯蓄ゼロから始める安心投資で安定生活』(明治書院)などがある。
調査分析などは専用のHP、資産運用NAVIを参照