2018年1月11日に行われた、株式会社ファーストリテイリング2018年8月期第1四半期決算説明会・質疑応答の内容を書き起こしでお届けします。IR資料

スピーカー:株式会社ファーストリテイリング グループ上席執行役員 CFO 岡﨑健 氏

海外ユニクロ事業の粗利率・経費率改善の手応えなど

質問者1:よろしくお願いします。ゴールドマンサックスのカワノです。

2点ありまして、1つずつということで、まず国内ユニクロの今後の原価の傾向、先ほど1Qは社内的なレートで円安だというお話があったかと思います。御社の為替予約は3年ローリングというかたちを取っていて、直近の有報(有価証券報告書)などで見ると、来期以降が104.8円や104.9円など、今年に比べて少し改善する方向だと見受けられます。為替以外にも中国の人件費なども関わってくるため、下期や来期、中国の縫製コストなども合わせて、方向性を教えていただきたいというのが1つ目です。

岡﨑健氏(以下、岡﨑):日本のユニクロの原価の状況については、以前からご説明している状況と大きく変化はありません。以前から、1年強ぐらい、原価率の高い状況が続くと申していました。当時から時間は経っていますので、1年弱くらいになってきているかとは思いますが、予約で固めているので、まだ当面は高い原価率が続くかと思います。ただ、為替の影響を除けば、原価そのものがどんどん上がっているということはありません。これについては十分コントロールしているということです。

為替予約の円安状況が改善していくと、原価率についても改善していくのではないかと思います。それはもうちょっと先の話になるかなということです。

質問者1:そうすると1年弱ぐらいにはなっていて、以降は、それほど上がっていかないという理解でよろしいですか。

岡﨑:そうですね。有報などで見ていただいて、推定していただく通りかと思います。方針を何か大きく変えたということはありません。

質問者1:2つ目、海外のユニクロ事業についてです。

国内ユニクロの場合は「計画を大幅に上回る」という表現をされています。海外の場合は、増益幅や利益率の改善がすごいことになっていても「計画を大きく上回る」に留まっています。これは単に、ただ計画をそれだけ高く見ていたからなのか……。

岡﨑:そういうことです。やはり成長の柱という位置付けで、高い計画で入ってるところはあります。国内の環境については、決して期初は楽観視はしていなかったこともあります。それに比べると国内は「大幅」に上回って、海外は上回ったということです。売上を見ていただいてもわかるように、海外ユニクロ事業の伸びが非常に大きかったことが、成長を牽引したと思います。

質問者1:海外ユニクロ事業の粗利率に関しては、値下げロスを含めて、商売をやってみないとわからないところがあると思うのですが、経費率の改善は去年から続いていると思います。そろそろ一巡してこないのか、まだまだ手応えがあるのか、これについてはいかがでしょう。

岡﨑:ずっと申し上げている通りで、経費構造改革ということで、やるべきことを明確にして中期的に取り組んでいる成果が徐々に出ているということです。しかし、やることはまだまだたくさんあり、五合目・六合目ぐらいまで来たのかどうかはわかりませんが、改善余地も多々あります。

とくに、売上に対する在庫の効率などを改善していくことで、実現できる経費率の改善というのは非常に大きいと思います。それだけではなく、かなり地道な話ですが、購買のあり方の変革などに取り組んでいますので、その成果が出ている面もあります。この切り口からやれることは多々あると思っています。

司会者:では次の質問に移ります。

有明プロジェクトの進捗と効果は?

質問者2:UBS証券のモリヤと申します。2点、よろしくお願いします。まず1点目は、海外事業の営業利益率の改善が非常に大きく進んでいて、とくに経費率の低減が大きく寄与していると思います。これは地域別に改善幅に差があるのか、この経費改革の進捗度合いは、どこが先行してどこが追いかけているのか、教えてください。とくに今回、東南アジアの利益率改善ですとか、米国の黒字化というコメントもいただいたので、このような地域に今後も期待していいのかどうか、地域毎の状況についてアップデートをお願いします。

岡﨑:今回、わりと地域に差がなく利益率の改善は進んだかと思っています。アメリカのように、そもそも発射台が低いところも、着実に利益率を改善してます。既に利益率が高まっていた中国、韓国、東南アジアについても、期待どおりの利益改善を見せています。

これは、経費構造改革で経費を削減しているからということではなくて、売上が伸びている。商売の中身、とくに在庫の持ち方とか、精度が上がってきている成果だと思います。うまく商売を拡大できた結果、利益率が高まってきているという捉え方をしていただくのがいいんじゃないかと思います。

質問者2:ありがとうございます。それから2点目は、有明プロジェクトの進捗について、どう捉えているか。国内で物流費の改善や生産性の改善が進んでいるとは思うのですが、これが有明センターの改善が進んでいることによるのかどうか、有明オフィスでのサプライチェーンの改善などが進んできているのか、アップデートをお願いします。

岡﨑:有明改革は、非常に中長期の視点で進めている全社の改革で、広範な変革を含んでおり、動き方・働き方といったソフト面の改革と、システムの刷新や倉庫の持ち方などのハード面の改革があって、これらを掛け算で進めています。過去1年、1年半ぐらいについては、資金面の改革を進めつつでしたが、こちらが大きく変わったというよりは、働き方のほうが着実に変化という手応えを感じているところです。

もう少し具体的に言うと、1つは、マーチャンダイジングとマーケティング、それからR&Dなどの、部署連動での働き方。このような部署が1つの場所でワンチームとして仕事をすることによって、商売制度の向上などに非常に効果があったと思います。ここに生産や物流のチームが加わることで、商売の計画と物流計画が連動していなかったり生産計画がうまく連動していないことで売れるはずのものが作れなかった、といった問題が解消されてきているという大きな手応えを感じています。

海外についても、これまでもグローバルヘッドクォーターを掲げてはいたのですが、東京に本部がある手前、日本の需要を見ながらグローバルヘッドクォーター機能を果たしてきたということがありました。どうしても視点が日本中心。日本でうまくいったことを海外に広げるとか、どうしても日本の状況を受けてグローバルのあり方を考える、そういう計画がどうしてもあったと思います。しかしここ1年ぐらいは、あえて日本をone of themとして、国の1つであると引いて見ることができるよう組織を分けたり、働き方を変えたり、考え方を変えたりしてきました。このあたりの成果は、かなり出てきたかなと思っています。

今ではもう、経営執行チームと、日本だけではない各国の経営陣が、毎週の商売をレビューするというサイクルで仕事が回るようになってきています。この傾向をどんどん強めていくことで、各国の商売制度を、もっともっと高めていけるという手応えもあります。

このソフト面の働き方改革の成果というのは、今上期の業績にどれだけ反映されているかという定量化が難しいうえ、環境に救われている面もありますが、着実に出ているとは思います。これに、システムの刷新や倉庫の持ち方を変えるといった改革が完成すると、よりシステマティックに、大きなスケールで実現していけるかと思います。そのような意味でいうと、まだまだ、やりたいことに比べて二合目、三合目なんですが、手応えは得ています。この方針に間違いないという確信を、ますます持っている状況です。

質問者2:ありがとうございます。

司会者:では次の質問に移ります。

中国での有明プロジェクトの効果

質問者3:ご説明ありがとうございました。野村証券のアオキです。

2点あります。1つは今のお答えのフォローアップです。冒頭のご説明のなかで、国内ユニクロは、冬物の需要が非常に強かったなかで在庫をしっかり持てたというコメントがありました。これは有明プロジェクトの成果が表れたものと考えてもよろしいですか?

岡﨑:なにが有明プロジェクトかは難しいところがあります。売れるものの在庫をしっかり持つのは当たり前ですが、その精度、あるいは、ある程度リスクをコントロールしながらしっかりポジションをとることの精度が、確実に上がってきていると思います。

質問者3:わかりました。2点目です。同じようなことが中国でも言えるのでしょうか。

岡﨑:グローバルに推進していますので、同じような取り組みを進めているということです。

質問者3:中国でも売れ筋の在庫をしっかり持てた成果が出ているということですね。

岡﨑:はい。韓国などもそうだと思います。

質問者3:わかりました。ありがとうございます。以上です。

司会者:では次にご質問ある方いらっしゃいますでしょうか。

デジタル戦略の進捗は?

質問者4:JPモルガン証券のムラタと申します。よろしくお願いいたします。

追加的に、御社が進めているデジタル戦略の進捗と課題について、具体的にいくつかコメントいただければと思います。

とくに関心があるのが、デジタルフラッグシップ店舗です。「ジーユー」などが一部で実施している施策を、なるべく早くジーユー全店舗に拡げ、ユニクロにも拡大していきたいというようなお話を、柳井社長がしていたので。費用効果の面での手応えなど。

それから、ECの物流も混乱からだいぶ回復したようなので、どのあたりが回復して大丈夫か。

さらに、一時キャパオーバーでWebサイトが止まったといったことがあったので、そのあたりも含めて進捗と課題をいくつか教えていただければと思います。

岡﨑:デジタルを使ったジーユーの店舗は、非常にうまくいっていると思います。けれども、表面から見えるようなデジタル機器のようなものを展開していくことがデジタル化だとは思っていません。

デジタル、とくにモバイルを使って買い物をしていただく、そのような買い物がしやすい店舗をつくることが1つの目的で、ジーユーはそれに向けての1つのパイロットをやっているということです。ジーユーのあの店だけではなく、ほかで考えていることも含め、全店に展開していくものは何であるべきなのか、ということを見定めている感じです。

したがって、見えてきたことはどんどんやっていくのですが、ジーユーのあのお店が広がっていく、ユニクロもあのようになっていく、ということではありません。

それからEコマースは、とくに去年、物流とITの両面で、非常に大きな問題がありました。それにより、お客さまにご迷惑をおかけしたということはそのとおりです。

今年についても、ご存じのとおり、感謝祭では想定を上回るスピードでアクセスが一気に集中した結果、システムのパフォーマンスが大きく落ちました。お買い物をしづらい環境になったので、状況を立て直すまでいったん閉店するという、非常にご迷惑をおかけする事態になりました。これはある意味で、我々の想定を超える需要があったということを確認したということです。

我々の対応能力がECの需要をまだ下回っているというか、対応しきれていないということなので、想定を根本から立て直してITの処理キャパシティも拡大しています。もっと拡張性の高い、いつでも機動的にもっと拡張して、自動的に対応できるような仕組みに移行もしてきております。この前提をしっかり考え直さなければいけないと思っています。

物流についても同じです。去年のような生産性の低さや、立ち上がりのドタバタなどは完全になくなってきたと思います。一方で、感謝祭や年末年始は、やはりピークがものすごく高いですから、翌日配送を希望されるお客さまに、翌日配送する通常の対応できません。

リードタイムをあらかじめ伸ばした設定で注文をいただき、それにお応えするという、我々としてはやや不本意な対応で乗り切っている状況です。物流の生産性は上がってきていますが、キャパシティ自体をもっと拡大していかないと、Eコマースの需要に対して十分に応えていけないと考えているところです。

質問者4:ちなみに、ITについて、御社は継続的・積極的に、かなり投資していると思います。想定よりもはるかに、ECの発注が多かったのでしょうか。

岡﨑:去年の感謝祭においてはそうです。順次、増強はしています。今年はこの程度だろう、来年はこの程度だろうと考えながらやっているのですが、今年は足元から大きく想定を超えるぐらいの需要がありました。投資はしているのですが、もっと加速しなければいけないし、完成スピードを速めていかなければいけないと思っています。

質問者4:わかりました。ありがとうございました。

司会者:お時間の関係上、次の質問者の方を最後のご質問とさせていただきます。挙手をお願いいたします。

積み上がっているキャッシュの使い道は?

質問者5:第一證券のカザハヤでございます。いつもありがとうございます。

2点お願いします。1点目ですが、この春・夏の国内ユニクロの価格戦略は、なにか変わることがあるのか確認をさせてください。

岡﨑:価格については、当面変更する予定はありません。当然上げることはあり得ないと思います。大きく問題が出れば商品によっては変えることもあるかもしれませんが、一品一品かなり精査をして、お買い求めやすい価格設定になってきていると思いますので、全体の価格戦略を大きく変えることは考えていません。

質問者5:ありがとうございます。2点目なんですが、プレゼンのお話をうかがっていますと、経費構造改革については5合目、6合目というよりも1、2合目というコメントであるとか、商売の中身がよくなっているというお話をうかがっています。

どんどん体質が強化されているので、業績予想をすると、キャッシュ・フローがものすごく増大していくかたちになると思います。

単純に還元を増やす、増やさないではなく、ここから生み出されさらに増大していくキャッシュを、CFOとしてどのように使っていくお気持ちがあるのか、現状のキャッシュの使い方も含めて、コメントいただければというのが2点目です。お願いいたします。

岡﨑:大きく2つの視点から、まだまだキャッシュをこの程度、持っていてもいいと思っています。

1つは、これからデジタル化をどんどん進めていくなかで、グローバルに展開していかななければならない、グループ全体に展開していかなければならないという状況です。システム投資や物流関連の投資といったものは、とにかく積極的にやっていく。それから、技術の環境が変わったときには、積極的にスクラップアンドビルドもできるような余裕がなければいけないと思います。

その観点から、我々の考えているビジョンからすると、このキャッシュは今しばらく十分に持っておくべきだと考えています。

2点目について、やはりリスクがどんどん高まってきている。世の中の環境変化が激しいので、売上の不測な下振れや、結果として不測の粗利の悪化など、そういうことが常に起こりうると思います。なにがあってもまったく問題なく商売を継続していけるように、十分なキャピタルは持っておくべきだと思います。

ただ、そういうことも考えた上で、余剰が出るようであれば、当然資本政策を考えていかなければならないと思います。そういう順番で整理しながら考えていきたいと思います。

今は、トップラインを伸ばすオポチュニティがたくさんあると思いますので、キャピタルをうまく使って、より企業価値を上げていくという意味で、投資家のみなさんにとっても非常に期待していただいていいのではないかと考えているということです。

質問者5:1点確認ですが、そうしますと現状では、CFOとしては、これぐらいのキャッシュのポジションがあれば十分だという考え方よりも、できるだけキャッシュのポジションを増やしていきながら、再投資を拡大させていきたいという考えをお持ちだということでよろしいですか。

岡﨑:そうですね。むやみやたらに積み上げたいとか蓄えたいと思っているわけではありませんが、今のキャッシュを使って、さらに成長を加速していくようなオポチュニティは中長期で見れば十分にあると考えています。

質問者5:ありがとうございました。

司会者:では、ご質問が尽きないこととは思いますが、お時間の関係上、以上をもちまして説明会を終了とさせていただきます。本日はありがとうございました。

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