10-12月期の米企業決算は+10.2%と、2四半期ぶりに2桁増益となりそうです。2018年は通年で+14.7%と2桁増益を継続し、1年後のS&P500は2925.65まで上昇する見通しですが、業績、株価ともにまだ上方修正の余地は残されているようです。

10-12月期米企業決算は2桁増益、ハリケーン被害から立ち直る

米調査会社ファクトセットによると、S&P500構成銘柄の10-12月期の利益は1月12日現在で前年同月比+10.2%となる見通しです。

ただ、予想は低めに見積もられる傾向にあり、過去5年を平均してみると実際の業績は当該期末の見通しよりも3.0%ほど高くなっています。たとえば、7-9月期の9月末の見通しは+3.1%でしたが、最終的には+6.4%に上振れています。12月末の見通しは+10.8%でしたので10-12月期の最終的な利益は+13.8%(=10.8%+3.0%)と+14%前後が期待できそうです。

期待通りの数字となれば、増益は6四半期連続となり、2四半期ぶりに2桁増益を回復することになります。7-9月期は米南部を襲ったハリケーンの影響で一時的に利益が圧迫されましたが、被害が一巡したことで再び高い水準に戻ったといえそうです。

エネルギー、素材、情報技術、公益がけん引

セクター別ではエネルギーが+135.1%と増益率で他を大きく引き離しています。素材(+28.5%)、情報技術(+16.0%)、公益(+12.3%)が続いており、この4業種が2桁増益を達成し、平均(+10.2%)を上回る見通しです。

エネルギーは原油価格が約3年ぶりの高値に上昇していることが業績の改善に結びついていますが、驚異的な増益率は前年の利益が例外的に低かったことも大きく影響しています。エネルギーを除くと利益の伸びは+7.7%と+10.2%から減速します。

通信は+1.2%と最も低い伸びとなり、資本財が+2.3%とワースト2位に甘んじています。ただし、資本財はGEの不振が大きく影響しており、GEを除くと+8.7%となり、エネルギーを除く平均を上回ります。

2018年1-3月期の見通しでは、エネルギー(+66.0%)、素材(+41.9%)、情報技術(+18.4%)、金融(+15.9%)が上位4業種、2018年通年ではエネルギー(+47.7%)、金融(+25.6%)、素材(19.1%)が上位3業種となります。

人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)の普及が見込まれることから2018年も引き続き情報技術がマーケットをけん引する見通しです。また、規制緩和の恩恵が期待できる金融も好調を維持すると予想されています。

1年後の株価は5.7%上昇、上方修正の余地残す

1年後のS&P500予想値は2925.65と11日現在の2767.56から5.7%の上昇が見込まれています。2018年1-3月期の利益は+14.1%、2018年通年では+14.7%と今後も2桁増益が予想されていることが堅調な株価を支えているようです。

ただ、減税法案成立(12月22日)前の2018年の利益見通しは+11.8%でしたので、その後の3週間で3%も上方修正されています。最終的には10%前後の上方修正が見込まれており、2018年通年での利益は+20%以上となる可能性もありそうです。

セクター別の株価見通しでは不動産(+12.5%)と情報技術(+10.4%)で大きな上昇が見込まれており、情報技術(+8.1%)、生活必需品(+7.4%)、ヘルスケア(+7.3%)の5業種がS&P500(+5.7%)を上回る見通しです。

一方、金融(+5.2%)はほぼ平均並み、通信(+3.4%)、一般消費財(+3.4)、素材(+3.0)は平均を下回る伸びが見込まれており、資本財(+1.9%)とエネルギー(0.0%)は小幅な伸びにとどまりそうです。

2017年のS&P500は通年で19.4%上昇しましたが、情報技術は37.2%上昇とセクター別で最大の伸びとなり、全体を押し上げました。情報技術の時価総額は全体の4分の1を占め、ウェイトが最も大きいセクターですので、このセクターの好不調が全体のバロメータともいえそうです。

”リパトリ”による株価の押し上げも

また、税制改革により海外子会社からの配当金が非課税となったことで、海外に蓄積していた利益(海外留保利益)が米国内へ還流(リパトリ)しやすくなり、還流した資金が自社株買いに向かうことが期待されています。

ブッシュ(息子)政権下の2005年に実施されたリパトリ減税の際には自社株の買戻しが膨らみました。当時の海外留保利益は6000億ドルでそのうち3000億ドルが還流し、おおよそ80%が自社株買いに利用されたと推計されています。

現在、海外留保資金は2兆5000億ドルと推計されており、前回同様50%が還流し、80%が自社株買いに利用された場合、企業利益を4%程度押し上げると試算されており、株価の押し上げ要因となりそうです。

ただし、2005年の減税が1年限りの時限立法だったのに対し、今回の措置は恒久的な政策であることから、どのタイミングで資金が還流するかについてはアナリストの間でも見方が分かれています。

月末に最初の山場、2018年の見通し引き上げに注目

米国では12日から本格的な決算シーズンが始まっています。先陣を切ったJPモルガン・チェースの利益が予想を上回ったことから、株式市場全体に好影響を与えました。

JPモルガンの決算では、税制改革にともなう一時的なマイナス要因が当期利益を押し下げましたが、減税により将来利益が押し上げられるとの見通しを示したことが好感されています。

今週は大手金融機関からの発表が予定されており、16日にシティ・グループ、17日にバンク・オブ・アメリカとゴールドマン・サックス、18日にモルガン・スタンレーと続きます。

その後を見ると、月末の31日から2月1日にかけて注目企業が集中しており最初の山場となりそうです。31日にはフェイスブックとマイクロソフト、2月1日にはアップルとアルファベット(グーグル)が予定されています。

今回の決算発表では、会社側が減税の業績への影響を明らかにすることで、2018年の業績見通しの引き上げが進むのではないか、という点が注目されています。

LIMO編集部