複数のNISA制度が混在することの功罪

NISAの統合と恒久化の検討を

3つのNISA制度の混在

2018年からつみたてNISA(少額投資非課税制度)がスタートしました。これは5年であった一般NISAの非課税期間を20年までに延長したことが最大の特徴で、このため制度そのものが若年層を中心に資産形成世代向けになっています。

これで、2014年に導入された一般NISA、2016年から始まったジュニアNISAに続いて、3つ目の制度であるつみたてNISAが使えるようになるわけです。

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一般NISAは既に口座開設数で1000万口座を超える規模に拡大していますが、その過半数が60歳以上に偏っている点が疑問視されています。そこでもっと若年層が資産形成に使えるスキームとして、考えだされたのがつみたてNISAです。

積み立て契約を結ぶこと、年間拠出上限額が一般NISAの3分の1の40万円に抑えられていること、使える金融商品が限定されていることなど、制約も多いのですが、何よりも非課税期間が20年と長いことが注目できる点です。なお、一般NISAとつみたてNISAは併用できないために、どちらかを選ぶ必要があります。

一方でジュニアNISAは思ったほど契約件数が伸びていないのが実情です。いくつかの要因が想定されますが、その一つは最大20年間の投資期間が必要な未成年者のための制度なのに、非課税期間5年の一般NISAを前提にしているからです。

これを埋めるために、継続管理勘定とか、ジュニアNISA内に課税口座を内包するといった制度が必要になり、制度の複雑さを増しているのも事実です。

生涯拠出上限額を設けたNISAの恒久化・統合案

ところで、一般NISAは2023年までの、そしてつみたてNISAも2038年までの期限付きの制度でスタートしています。このため、できるだけ早い時期に制度の恒久化を実現し、利用者の安心感を生むことが本当の意味での長期投資を促す力になります。

ただ非課税期間の恒久化を議論すると、たとえ年間40万円でも非課税総額は無限大になり、これまでの議論では「金持ち優遇」と批判されかねません。

そこで、これらの制度を統合し、恒久化とあわせて実施することも視野に入れるべきだと思われます。一般NISA、ジュニアNISA、そしてつみたてNISAが相互に連携して、国民の必要な資産形成・資産活用をサポートすることを狙ったものに変える方向にする必要がありそうです。

英国の企業年金制度にはこの恒久化・統合の参考となる建付けがあります。英国の企業年金には、年間の拠出上限の他に、生涯拠出上限額という制度があります。毎年の拠出額だけでなく、これらを合計して、生涯拠出上限を超えないようにする建付けですが、これをNISAに導入する案が考えられます。

たとえば、生涯拠出上限額を一般NISAの非課税総額600万円(=年間120万円 × 5年間)にして、その使い方は本人の自由にするという建付けです。今がマーケットの底だと考える人は600万円をその年に一括で投資してもいいし、毎月2万円を投資する資産形成層には25年間継続することが可能にもなります。

もちろん、人によっては、コツコツと積み立てる時期もあり、また少しまとめて投資することもあるといった形での機動性も必要になるでしょう。この方法であれば、こうした多様性にも対応できます。

生涯拠出上限額を導入することによって恒久化しても「金持ち優遇」との批判はなくなりますし、このための制度設計には、マイナンバーを活用することが前提になり、政府の推進策とも合致してその面からも有効性が高まりそうです。

生涯拠出上限額を用いたNISAの統合・恒久化案

出所:フィデリティ退職・投資教育研究所

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フィデリティ退職・投資教育研究所 所長 野尻 哲史

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野尻 哲史
  • 野尻 哲史
  • フィデリティ退職・投資教育研究所
  • 所長

国内外の証券会社調査部を経て、2007年より現職。アンケート調査をもとに個人投資家の資産運用に関するアドバイスや、投資教育に関する行動経済学の観点からの意見を多く発表している。
日本証券アナリスト協会検定会員、証券経済学会・生活経済学会・日本FP学会・行動経済学会会員。
著書には、『老後難民 50代夫婦の生き残り術』、『日本人の4割が老後準備資金0円』(講談社+α新書)や『貯蓄ゼロから始める安心投資で安定生活』(明治書院)などがある。
調査分析などは専用のHP、資産運用NAVIを参照