2023年12月2日にログミーFinance主催で行われた、第67回 個人投資家向けIRセミナー Zoom ウェビナーの第1部・株式会社JPMCの講演の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:株式会社JPMC グループCEO 代表取締役 社長執行役員 武藤英明 氏
経済アナリスト/経営コンサルタント 増井麻里子 氏
フリーアナウンサー 八木ひとみ氏

高い配当利回り

武藤英明氏(以下、武藤):みなさま、本日は貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございます。さっそくですが、当社の会社説明を始めたいと思います。

いよいよ新NISAが始まるということで、今回もそのような銘柄をそろえてこのセミナーを主催いただいています。我々は増配を続けており、配当利回り(予定)は4.53パーセント、配当性向(予定)は50パーセントを超えています。東証プライムの不動産業界において、62社中8位の配当利回りに注目し、投資先としてご検討いただけたらと思います。

それでは、詳しいご説明に入ります。

新NISAで当社株が評価される観点

武藤:3つの話題についてお話しします。1つ目は、社会課題と向き合い、業界を変えるゲームチェンジャーになるビジネスモデルということ、2つ目はアセットライトで不動産というトレードにありながら、特異なビジネスモデルであることです。3つ目は、近い将来、間違いなく我々にとってレボリューション、つまりチャンスがあることです。以上の3点を中心にお話ししていきます。

ちなみに私は、不動産会社に勤めたことも、不動産業に携わったこともないまま起業しました。今から27年前、32歳の時にネット検索のネクスト、現在のLIFULLを創業し、この業界に入りました。以来、賃貸住宅の面白さに注目し、賃貸住宅に軸足を置いて今日まで専門的に携わってきました。

我々は、どちらかと言うと金融的で、資産運用的なビジネスモデルですが、トレードセグメンテーションは不動産に置かれています。本来、プレハブメーカーとは対極にありますが、我々が考えている株価の動きとは異なり、現状は割安となっています。あまりうれしくないのですが、ファンドマネージャーにも「割安だ」とよく言われており、その意味では、みなさまにとって買い時銘柄だと思います。

また、投資で効果を得てから、レバレッジを利かして事業展開するというのはこの業界で一般的です。我々の配当性向が高いのは、キャッシュを特に必要としていないからです。もちろんM&Aの資金等は必要ですが、通常の事業ではレバレッジを利かせることなく安定的なストックビジネスで、持続的に成長できます。

その証左として、2002年の創業から23期連続増収を予定しており、前期まで前年対比を下回ったことは一度もありません。コロナ禍でも連続増収増益を達成したことからも明らかですが、賃貸という生活に根ざしたものを事業化しているため、景気の変動といった外的影響をあまり受けません。

むしろリーマン・ショックの時に最も社業が伸びたくらいですので、業界の他のビジネスモデルとは大きく異なります。このような強みにぜひご注目いただければと思います。

配当政策

武藤:配当金額も安定成長しています。配当性向はその時の業績によって異なりますが、ステークホルダーのみなさまに40パーセント以上の配当性向をお約束してここまで来ています。結果として、スライドのグラフのように増配が続いており、今後もこれを続けていきます。

アジェンダ

武藤:なぜ連続増配が可能なのかも踏まえて、冒頭でお伝えした3つの話題についてお話しします。

会社概要

武藤:まずは、社会課題と向き合う、業界を変えるビジネスモデルについてです。当社は、非常に少ない人数で、大きなビジネスを展開しています。

現在、北海道の北見から沖縄県の石垣島まで事業展開しており、我々の借り上げ物件のない都道府県はありません。社員は408名、事業所は東京、大阪、名古屋、福岡、札幌の5ヶ所だけですので、非常に効率の良い事業モデルと言えます。

今期の12月決算では、年商575億円を予定しています。社員1人当たりの売上高も、1人当たりの営業利益も業界内で高い水準です。エフィシェンシーが非常に良い会社だとご理解ください。

プロフィール

武藤:参考までに私の経歴ですが、10年間のサラリーマン生活を経て32歳で脱サラし、ネクスト(現・LIFULL)を創業しました。その後、数社の創業メンバーとなり、38歳で当社を創業しました。

賃貸住宅マーケット規模

武藤:みなさまそれぞれユーザーとして、またオーナーとして、ご自身のお部屋に関心があると思いますが、マーケット全体を俯瞰してご覧になっている方は、業界でも実は少ないのです。地域の不動産会社は地域のことに専念していますし、入居者はご自身の物件、オーナーはご自身の所有物件にしか興味がない状況です。

しかし、全体を俯瞰すると、実は非常に大きな業界となっています。住宅全体の37.6パーセント、2,339万戸は賃貸住宅で、現時点では21.4パーセントの空室があります。

ご存じのとおり、日本の人口は現在1億2,420万人ですが、2055年には9,744万人になり、さらに下降していきます。このような中で、業界6位の我々のマーケットもシュリンクしていくと考えていますが、上位5社の大東建託、レオパレス21、積水ハウス、大和ハウス工業、東建コーポレーションはすべて賃貸住宅メーカーです。つまり、部屋が余っており、人口が減っていく状況にもかかわらず、プレハブの供給を続けている賃貸住宅メーカーがベスト5に入っていますが、いずれは作れなくなります。

我々がゲームチェンジャーになれるというのは、我々は賃貸住宅メーカーではないからです。現状の賃貸住宅を再生して将来まで運用できるようにしていくこと、あるいは持続可能な賃貸経営に重きを置いたビジネスを展開していきます。その点、我々はプレハブメーカーと対極で事業を展開している会社ということです。

さらに注目すべきなのは、メンテナンスフィーや建築費を除く集金家賃だけで年間15兆円の巨大マーケットになっていることです。ただし、先ほどの上位5社に加え、マンションデベロッパーの三菱地所、三井不動産、住友不動産、東京建物、東急不動産、野村不動産のような一流企業が存在する業界となっています。そのため、賃貸住宅メーカーに代わる新しい生態的地位を確保し、エクセレントカンパニーになることを目指して、当社は2002年に創業しました。

マーケットの展望 入居者サイド(需要)

武藤:人口減少の中、注目すべきは世帯数の増加です。2000年から2030年にかけて993万世帯も増える見込みです。ファミリーとしての世帯数は減っても、シングル世帯とカップル世帯が増加していきます。

この業界では、今も昔もシングルが大事なマーケットであることについては変わっていません。シングルの賃貸物件と聞くと、1Kかワンルームを借りる若年層をイメージするかもしれませんが、40代の単身者は2倍、50代は4倍、60歳以上は6倍以上に増加する見込みです。

例えば、私は50代ですが、仮にシングルになった場合は、友人を見てもそうですが、1Kやワンルームは選びません。収入や生活レベル、また収納などの面で、広い1DKや1LDKを選択します。そして、高齢者向け賃貸住宅がこれから増えていくと思いますが、いずれも作っているのは賃貸住宅メーカーです。

不思議なことに、プレハブを建てたことで非常に儲かり、左うちわという地主オーナーを見たことは一度もありません。また、私はアパマンショップの創業メンバーの一員でもありますが、「積極的にプレハブに住みたい」という方も見かけたことはありません。

それなのに現状ではプレハブが作られ続けていますので、いつかパラダイムシフトが起こるのは明白です。その確信から、この事業を開始しました。

ただし、部屋は21.4パーセントも余っているため、これまで貸していなかったタイプの方を入居者として取り込む必要があります。例えば、職業が不安定な方、どうしてもペットと住みたい方、さらには高齢者や外国人も積極的に取り込まければ入居率は上がりません。当社は、この4つのタイプへの取り組みに注力しています。

増井麻里子氏(以下、増井):ご質問を挟み込みながら進めていきたいと思います。日本人は、欧米人に比べると、新築志向が強いところがありますが、それは賃貸でも同じでしょうか?

武藤:ご婦人や新婚カップルの場合ですが、新築や2階以上を希望する方が多いのは今も昔も変わっていません。しかし、新しいストックばかり選んでいくと、オーナーとその家族、社会、日本、ひいては世界に負の遺産を残すことになります。

例えば築30年のマンションを今の建築技術なら新築に近づけることができます。しかし、オーナーは再投資を不安に思い、なかなか踏み切れません。そこで当社は、リフォームから10年間は、我々がサブリースをします。さらに、提携銀行158行から、我々のサブリースを条件に10年償還ローンを引っ張ってくることで利回りが確定するため、オーナーは安心できます。

また、入居者にとっては一般のマーケットより3,000円から5,000円ほど安く、かつ新築と変わらない仕様にしてある物件に住めるメリットがあります。この「win-win」を生み出せるのが、我々の「スーパーリユース」です。

マーケットの展望 オーナーサイド(供給)

武藤:スライド左側のグラフのとおり、人口は減少しており、空室率は21.4パーセントとなっています。それにもかかわらず、2022年には34万5,080戸も新築物件が供給されており、その4分の3を業界上位5社の賃貸住宅メーカーが建てています。望まれていない中で賃貸住宅の供給をしていますので、いずれ成り立たなくなる局面がくるだろうと見ています。

運用戸数ランキング

武藤:我々はゼロから出発し、この短い期間で業界6位まで来ました。これから戸数を増やし、ベスト5に食い込むことでゲームチェンジャーになりたいと考えています。

画一化された物件を建て続ける賃貸住宅メーカー

武藤:一目でプレハブだとわかりますが、スライドの写真にあるような物件が日本で一番作られている賃貸住宅です。

業界を牽引してきた賃貸住宅メーカー

武藤:賃貸住宅メーカーのビジネスモデルは、実は精巧な仕組みになっています。例えば、大東建託が建てた物件を大東建託パートナーズが管理し、いい部屋ネットが仲介して、大東建託パートナーズがサブリースするといったかたちです。あるいは、積水ハウスが建てた物件を積水ハウス不動産が管理し、シャーメゾンネットワークが仲介して、積水ハウス不動産がサブリースするといったモデルです。

要は、建てるという一番収益が上がるところに集中しており、そのためのセットアップになっています。しかし、これを続けると当然、負の遺産を増やすことになりますので、我々はこれに代わるモデルを作ろうとしているのです。

なぜ賃貸住宅メーカーが建築を受注できるのか

武藤:つまり、賃貸住宅を建てさせるためにサブリースで安心させている状況です。

当社の強み① 全国で既存物件のサブリースが可能

武藤:そうではなく、我々は運用にサブリースを活用し、オーナーがいちいち差配されなくても、プロフェッショナルである我々が代わりに運用し、オーナーにとって最大限の収益をリターンします。同じサブリースでも、建てさせるために無理した家賃で借り上げ、建築を後押しするのではなく、現状の賃貸を負の遺産にしないための運営のサブリースとなっています。

当社の強み② 全国1,400社のパートナーネットワーク

武藤:また、我々の販管費率は非常に低く、効率の良い会社です。これを支えてくれているのが、我々のFCネットワークである1,400社のパートナーです。

北見、旭川、小樽などに営業所をどんどん作っていけば、販管費もどんどん上がります。そうなると当然コストアップし、オーナーにとって優位なサービスを提供できなくなります。

パートナーのネットワークを活用し、アウトソースすることで、たった408名の社員で、11万戸の物件をインチャージし、575億円の売上を作っています。そのため、オーナーに有利な条件での借り上げができ、オーナーとも「win-win」の関係が構築できているのです。

社内リソースだけでなく、パートナーを増やしていくことで、全国津々浦々までビジネスを素早く展開していきたいと考えています。

増井:パートナー制度について、イメージとしてはフランチャイズのようなものですか? 加盟企業の要件や裁量権について聞かせてください。

武藤:資格はいろいろありますが、大きく分けると不動産会社、建設会社、介護会社の3つの分野があります。スライドにはそれぞれ社数が出ていますが、J'sパートナーには、当社が借り上げた物件を管理・仲介していただいています。東名阪や札幌にある物件は当社がダイレクトに管理できるのですが、他の地域にある物件までは手が届かないため、我々が物件の管理業務を委託しています。

また、営業チャネルとして、J'sパートナーの先にいるお客さまやオーナーの情報から、当社が借り上げをすることもあります。したがって、J'sパートナーは営業代理店でもあり、管理の委託先でもあります。

さらに、お客さまから「物件を売ってほしい」と頼まれることもあります。その時は、我々の力だけで売るのではなくて、パートナーの力も借りて、買い主を探して売っていきます。そのお手伝いをしていただいている売却のパートナーが、不動産屋のイーベストパートナーです。

ほかにも、「プレハブではなくてRCマンションを作りたい」「もっとリーズナブルな木造アパートを作りたい」といった要望に対しては、地元のゼネコン、工務店、ビルダーに当社がサブリースを行い、よりリーズナブルで考え抜かれた良い物件を供給しています。この時にお手伝いいただいているのがコンストラクションパートナーです。

また、先ほどご紹介した「スーパーリユース」をしていただいているリフォーム会社が、リフォームパートナーです。

高齢者向け賃貸住宅については、サービス付き高齢者向け住宅と住宅型有料老人ホーム賃貸借契約方式の2つの事業を行っています。これらの物件を建築していただいている会社がシルバーパートナーで、その運営を委託している先の介護会社がふるさぽパートナーです。このようなパートナー制度で成り立っています。

増井:なるほど。それぞれ裁量も違っているということですね。

武藤:はい、もちろんです。

武藤:当社は、一般賃貸と高齢者向け賃貸を合わせて、現在約11万戸を運用しています。最近では物件数が多い東名阪エリアが増えてはいるのですが、スライドのとおり国内まんべんなく借り上げを行っています。

特に地方については、経済がシュリンクすれば当然、高齢者の生活を支えきれなくなってしまいます。そのような意味では、全国展開していること自体が、SDGsにかなった事業であると思います。

当社の強み③ 金融機関との提携

武藤:当社の強みとして、銀行からの信頼が厚いことがあります。三大メガバンクやりそな銀行をはじめ、全国158の金融機関と提携ローンなどのビジネスマッチングを任せていただいています。

特に、地方銀行とは強いパイプで結ばれており、全国にある地方銀行の半数以上と提携しています。ちなみに私事になりますが、北海道銀行、北洋銀行から、琉球銀行、沖縄銀行まで、全国すべての地方銀行を20年間かけて、自分の足で訪問しました。「地銀カルトクイズ」に出たら優勝するのではないかと思っています。

増井:数が多いですからね。

八木ひとみ氏(以下、八木):たしかにそうですね。

持続可能な賃貸経営をサポートするJPMC

武藤:先ほどお話ししたとおり、今まで注力してこなかった入居者への取り組みも強化するということで、外国人の入居に注力していきます。フォースバレー・コンシェルジュやYOLO JAPANという外国人就労支援企業に出資して、そこのスタッフが外国人に仕事を紹介した時に、同時に物件を紹介してもらうという取り組みを進めています。

物件再生については、当社自身でも株式会社JPMCワークス&サプライというグループ会社で行っていますし、地方に関しては、リフォームパートナーとタッグを組んで「スーパーリユース」を提供しています。また、入居率を高めるために有利な募集条件を用意できるように滞納保証や家財保険といった周辺事業もグループ会社で行っています。

また、増加する法人入居の需要に対応するために株式会社JPMCエージェンシーを設立しました。以前はレオパレスが、家具・家電付き法人社宅のおよそ8割を占めていたのですが、自社の社員をレオパレスの物件に住まわせることが難しくなり、非常に困っている法人が多く見られるようになりました。

その時に、当社にもたくさんのお問い合わせをいただきました。しかし、我々が持つ約11万戸の物件は空室率が8パーセント前後しかありませんので、なかなかアテンドすることができませんでした。そこで、今までは物件を預かった後に、お客さまを探していたのですが、需要に合わせて物件を借り上げるという仕組みを進めています。

JPMCグループのSDGsへの取組 1.環境負荷の軽減

武藤:先ほどから「スーパーリユース」についてお話ししていますが、これこそまさに、SDGsにかなった事業だと考えています。先ほどお2人からもありましたが、「日本人は新しい物件に住みたがる」という傾向にあります。

しかし、新しい物件を作れば社会に仇をなすことになり、SDGsの取り組みに反してしまいます。この中間で、両方を満たすのが「スーパーリユース」です。

古い物件を新しい仕様に変えるためには再投資が必要になるため、このサブリースを行います。あるいは、単にリフォームするのではなく、マーケットに合った物件作りの企画提案やリフォーム後の運用などをすべてセットで提案することから、「スーパーリユース」と名付けました。

10年間で2万7,600戸の実績があり、2016年には経済産業省から表彰もいただきました。

JPMCグループのSDGsへの取組 2.外国人への住居提供

武藤:外国人の入居については先ほどお話ししましたので、割愛します。

JPMCグループのSDGsへの取組 3.地方創生

武藤:地方創生についても、スライド左側の法人需要のお話は割愛します。

右側にある「地方公共団体とのタイアップ」については、倉敷市と提携して、うまく運用されていない学生マンションを当社が引き受け、最終的に入札から買い取りまでを行いました。当社としても利回り13.6パーセントで運用でき、40名しか入居者がいなかった物件を240名の入居者で満室にすることができました。その結果、地域の商店街やコンビニエンスストアも撤退しなくて済み、税収も多少増加したため、地方自治体にとって損切りもでき、プラスの事業になりました。

JPMCグループのSDGsへの取組 4.高齢化社会への対応

武藤:当社は高齢者向け賃貸住宅の分野で業界3位です。現在、業界内では熊本や千歳の半導体事業が盛り上がっていますが、実は日本の半導体メーカーは元気がなく、工場の閉鎖や撤退などが増えています。

増井:そうなのですね。

武藤:その半導体メーカーの工場脇には、必ずと言っていいほど単身寮があるのですが、工場が撤退すれば単身寮も不要になります。工場の脇にあるわけですから、当然、賃貸としての立地はよくありません。「東村山の駅から徒歩25分」と言われても、誰も借りてくれません。

そのような物件を負の遺産にせず、高齢化社会にもマッチさせるために、当社のノウハウを活用し、金融機関からご融資をいただき、東村山にあった工場脇の単身寮をリセットし、都内最大級のサービス付き高齢者向け賃貸住宅へ、コンバージョンによる再生を行いました。

増井:御社は、「高齢者向け賃貸では業界3位」とのことですが、最も強みとしている点を教えてください。

武藤:当社が最も強みとしている点は、「すべてをトータルで提供する」ことです。物件の建築のみ、または、介護事業のみを行っている会社はたくさんあります。個々で見てみると素晴らしい会社はたくさんありますが、すべてをトータルで提供し、その上、借り上げまでするという会社はないと思っています。

オーナーがいる物件を小さい介護会社が借り上げる方法では、サブリースとして融資を行う銀行が安心しません。そこで当社の投資用プランを活用し、当社が物件を借り上げます。

介護会社は、介護のことはできても、営業のやり方を知らないところが多いため、当社のシニアハウス事業部が営業の指導をします。オーナーには、補助金の申請の仕方を教えますし、建築会社のシルバーパートナーには、部材供給と建築方法の指導を行います。

これらのことを全部トータルでプロデュースできる点が当社の強みです。

増井:空室を埋めると補助金を出す自治体もあるため、そのような情報はすごくありがたいですね。

武藤:はい、おっしゃるとおりだと思います。

サービス付き高齢者向け住宅であれば、現在は国土交通省が最大で建築費の10パーセントにあたる補助金を出しています。したがって、サービス付き高齢者向け住宅を作って国からの補助金をもらうのか、よりコンパクトな部屋にして、住宅型有料老人ホームを作ったほうがよいのか、収支バランスをすごく考えて提案しています。ケースバイケースで、立地によって提案を変えています。

JPMCグループのSDGsへの取組 5.持続的成長へ向けた「ガバナンス」

武藤:当社の特徴として、全社員が株主になることにより、全社員がステークホルダーとして、株主の負託に応えて、企業価値を上げていく取り組みを行っています。

これは結果論になりますが、ダイバーシティの取り組みとして、全従業員の47.4パーセントが女性社員です。そのうち女性取締役が1名、女性執行役員が1名いますが、こちらに関しては、今後まだまだ高めていこうと思っています。

JPMC持続可能な賃貸経営を。

武藤:「住む論理」の追求で、持続可能な賃貸経営を目指します。

不動産業との違い サブスク型のビジネスモデル

武藤:アセットライトで外部環境に左右されにくいビジネスモデルについてご説明します。例えば、一般のマンションデベロッパーなら、「今年は100棟作りました、来年はゼロからのスタート」「今年は200棟作りました、来年はゼロからスタート」「今年は50棟しかできませんでした、来年はゼロからスタート」というようなビジネスモデルです。しかし、当社は「今年1万戸借り上げたら、来年は1万1戸」「今年は2万戸借り上げたから、来年は2万1戸からスタート」というように、積み重ねていくビジネスモデルになっています。

不動産業との違い サブスク型のビジネスモデル

武藤:これはダジャレになりますが、社内ではサブリースとサブスクリプションを組み合わせて、「サブリースクリプション(サブスク)」と呼んでいます。前年対比を下回らないビジネスモデルになっていますので、安心して投資していただける事業展開をしていると、ご理解いただけたらと思います。

不動産業との違い 景気動向に左右されないビジネスモデル

武藤:景気が不透明な時は、不安がるオーナーが多いのですが、実は運用戸数を増やすチャンスです。したがって、リーマン・ショックの際には非常に数を伸ばしました。

不動産業との違い 景気動向に左右されないビジネスモデル

武藤:今もその数を増やす局面になっているのではないかと感じています。コロナ禍でも増収増益を実現しています。

不動産業との違い 景気動向に左右されないビジネスモデル

武藤:賃貸住宅というのは、生活の基盤を支えるインフラになりますので、景気が良ければ分譲マンションが売れ、悪ければ売れません。オフィスに関しても、景気が良ければ入居率が上がり、悪ければ撤退してしまいます。景気に左右されることなくずっと住んでいただけることが、賃貸の魅力だと思っています。

JPMCの成長加速計画

武藤:当社のビジネスモデルは複雑に見えるかもしれませんが、やるべきことは2点しかありません。戸数を増やすことと、1戸当たりの収益を上げていくことを地道に行っていけば、破綻することなく成長します。

コロナ禍ではオーナーにアプローチができませんでした。したがって、スライドのグラフの「運用戸数増加」に関しては伸ばすことはできませんでしたが、今、多少の物価上昇に合わせて、都市部の物件であれば、収益アップが可能な局面だと考えています。

賃貸住宅業界に訪れる劇的な変化

武藤:デジタルの話をしたいと思います。この3年間でDXやIoTを使うことが当たり前になってきて、大きく世の中が変わったと感じています。しかし、恥ずかしながら賃貸業界はあまり変わっていません。

自分で始めたからお伝えするわけではありませんが、「HOME'S」が生まれて以来、「SUUMO」「アットホーム」ともに、雑誌からWebに変わりました。ところが、不動産屋に行き、お店のロゴが入った車で物件を見に行き、戻ってきてカウンターで契約するというかたちは、何も変わっていません。

IT重説やスマートキー、「ドキュサイン」「IMAoS(イマオス)」「クラウドサイン」「freeeサイン(旧NINJA SIGN)」などの電子契約システムが入ってくると、我々の業界は途端に大きく変わると思います。

賃貸住宅業界に訪れる劇的な変化

武藤:今後の部屋探しのスタイルとしては、スマートフォンで探した後、仲介会社を通さずに、物元である我々サブリース会社や管理会社に直接連絡が来て、ご本人は「Googleマップ」を活用しながら現地に行きます。そして、一時的に有効になったスマートキーでオートロックを解錠し、一緒にお住まいになる予定の方と15分間なり30分間、内見していただきます。その後、自宅に戻ってからは、IT重説を「Zoom」か「Skype」で受け、そして「ドキュサイン」で契約書に署名をし、手持ちのクレジットカードで初期費用を払えば終了です。

入居者にとっては非常にメリットがあります。仲介会社の手を煩わせることがありませんので、家賃1ヶ月分にあたる仲介手数料を払う必要がありません。

また、自分の好きな時間、例えば、仕事帰りの不動産屋が閉まっている時間帯や夜中でも、自由に内見に行くことができます。土日に予約が集中する仲介業者を、わざわざアテンドして見に行く必要がなくなります。

増井:なるほど。昼と夜、両方見に行ったほうがよいと、よく聞きます。

八木:日の入り方など、違ってきますからね。

武藤:それはまさにそのとおりだと思います。

スマートホームでより快適な住居の提供へ

武藤:収益増加の縦軸を伸ばすためには、ただ家賃を上げる局面を待つだけという消極的な姿勢ではなく、物件に付加価値を付けるために、現在スマート賃貸の事業を行っています。

スライドに記載されているものをすべて採用できれば、非常に便利だと思います。例えば、朝は好きな音楽が流れて起こしてくれたり、カーテンの開閉や照明の調節がスマートフォンで制御できたりといったことです。しかし、これをするためにはコストがかかってきます。

そこまでのことが賃貸に求められているかは疑問に思いますが、鍵の解錠・施錠などは便利な機能です。例えば、母親が上京してくる際に、自分の部屋の鍵を渡せなかった場合には、「今、部屋に着いたよ」と連絡をもらえれば、その時だけ鍵を解錠するといったことができます。ほかにも、駅に着いたらお風呂を沸かしておくことや、空調を整えておくなどといったことをスマートフォンで制御できれば、非常に有効だと思います。

PropTechカンパニーを目指す理由 スマート仲介の時代到来

武藤:今後は不動産仲介という仕事のあり方は大きく様変わりすると思います。逆に言うと、オーナーの自主管理に関しても、電子デバイスを通じてPRしなければならなくなるため、一般の素人のオーナーは「自分で掃除ができるから」「集金に行けるから」という理由で物件を運営することも難しくなります。

まさに、当社のようにオーナーの役割もでき、仲介に代わる新しい物件の紹介もでき、さらに物件の管理やサブリースをしている物元が非常に有利になってくると思います。このようなスマート仲介になれば、この業界が大きく変わるレボリューションが待っていると思っています。その時に生き残るのは誰かということを、ぜひこの業界を研究いただいて、投資家のみなさまにも、積極的な投資をいただけたらと思っています。

八木:ちなみに武藤さまご自身としては、このような業界の大きな変化は、どのぐらいの期間で起こると考えていますか?

武藤:そうですね。私見ですが、10年はかからないのではないかと思います。

JPMCはPropTechカンパニーを目指す 今後の成長にPropTechが不可欠なこれだけの理由

武藤:当社は設立20周年を機に、「日本管理センター株式会社」から「JPMC(ジャパンプロパティマネジメントセンター)」へと社名を変更しました。もともとロゴで使っていたのですが、20年経ったら変えようと思っていました。「外見は不動産会社かもしれないが、中身はIT企業」というPropTechカンパニーを目指しています。

さらに効率を上げて、販管費を下げれば、他の会社と競った時に、オーナーにとって有利な条件で借り上げても、当社に利益が残ります。あるいは、競争に負けたとしても、同業他社は赤字になり、事実上競争に勝ったも同然になります。その状態に持っていけるようにシステム化し、PropTechカンパニーになっていこうと取り組んでいます。

また、スライド左下の新規事業については、そのシステムの情報を使って、コンシェルジュアプリなどを展開していきます。当社では、わざわざ入居者アプリ専門の会社や、オーナーアプリ開発専門の会社を作る必要はありません。

当社が保有する11万戸の中にすでに20数万人のお客さまがおり、オーナーだけでも7,000人以上います。したがって、お客さまを確保するのではなく、すでにいるお客さまのためにサービスを提供できるため、アプリ開発専門の会社に比べると非常に有利だと思っており、このような新規事業を始めたいと考えています。

営業活動の効率化では、AI査定にほぼ目処がつき、ベータ版が完成しました。お客さまの目の前で、「iPad」を用いて簡単に査定することにより、営業機会損失を防ぐことを目指しています。

また、M&Aについても進めていこうと考えています。

PropTechカンパニーに向けて

武藤:昨年の暮れから、PropTechカンパニーに向けて5億5,000万円のシステム投資を始めています。

賃貸住宅業界に革命が起きる!

これも繰り返しですが、世の中も変わりました。また、人手不足のため効率化が必要であり、どんな切り口からも、システム化が必要だということは明明白白です。

当社はもともとITで起業しているのですが、システム化に向けていち早く舵を切り、「外見は不動産会社でも中身はIT企業だ」と言われる会社を目指していこうと考えています。そうすることで、来るべき変革の時にゲームチェンジャーという地位を確実に占めようとしています。

最後に 新NISAで当社株が評価される観点

我々は無理して配当利回りを高くしている、あるいは配当性向を上げているのではなくて、キャッシュイン・キャッシュアウトが一般的な不動産会社とは違って、当社は非常に潤沢なキャッシュのもとに事業展開ができるという、いわばサブスク型のビジネスモデルです。そのため、投資家のみなさまに対するリターンを高くでき、安定成長も見込めます。

また、賃貸住宅という、何世紀経ってもなくなることのない社会インフラの上で、当社は事業展開していると思っています。賃貸住宅は購入する住居と違い、景気の変動を受けにくいという特長があります。例えば、コロナ禍でも退去者はほとんど出ませんでした。この時期は、新しい入居者も入らなかったのですが、入居者がいれば家賃を払ってくれます。このように、安定的に成長を果たすことが、賃貸の良さだと思います。

景気の良い局面ならば、お客さまは分譲マンションや戸建てを買いますが、そうすると家賃は上昇します。景気が悪い時は、家賃は下方向に引っ張られますが、その代わり入居率が上がってきます。どちらにしても非常に安定しているのが、賃貸業界です。

それを作ることでこの業界を引っ張ってきたわけですが、我々は持続可能な賃貸経営に軸足を置いており、他社とは違うスタンスで運営しています。以上、安定的に高い配当利回りをお約束できるビジネスモデルという意味で、3つの観点から当社についてご説明しました。

質疑応答:投資と株主還元のバランスについて

増井:私から1つ質問させていただきたいのですが、これからDXなどの投資も行っていくということで、成長投資もあるかと思いますが、株主還元とのバランスについて、どのようにお考えか教えてください。

武藤:潤沢なキャッシュフローがあるため、従前の配当性向40パーセント以上で連続増配を確約しています。この範囲外でも、今言った金額です。

我々にとっては大きな投資ですがそれでも5億5,000万円であり、この額で十分我々のシステム投資は叶います。そのような意味でも、我々は配当で還元しようと考えています。株主優待についても何回も議論していますが、一般消費財を扱っているわけではないので難しいところがあります。

増井:「社長の本はどうですか?」という話が前回ありましたが、いかがですか?

武藤:みなさまがオーナーならばよいですが、オーナーの層も、入居者の層もいるため、入居サイドに株主優待は難しく、またオーナーサイドだけというのも難しいものですから、今のところは、配当でみなさまに還元していく予定です。

質疑応答:金利上昇が業績に与える影響について

八木:「日本も金利上昇が、少し現実味を帯びてきたところがあり、マイナス金利の解除からゼロ金利、また、金利のある世界が近づいてくる中で、金利の上昇は業績にどのような影響を与えるのでしょうか?」というご質問です。御社の中での影響はどのように見ていますか?

武藤:総括して言いますと、「影響はない」と言い切れるぐらいの範囲です。理由としては、当社は建築をしていないためです。建築する時に、オーナーが融資を受けますが、当社は先ほどからお伝えしているとおり、建築を積極的に行っている会社ではないため、主には影響を受けません。

ただし、サービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホームは、基本的に新築です。これらについては、当然、金利アップが多少影響します。

リフォーム時も同じですが、リフォームの時は新築と違い利回りが高いため、5パーセントや7パーセントという金利にはなりません。金利が上がると言いますが、それを凌ぐ提案ができれば良いため、金利が上がったとしても、リフォームについての影響は最小限だと思います。そのため影響はほとんどないと思っています。

質疑応答:売上が伸びている事業について

増井:「売上が伸びている県や地域で、どのような事業が活況なのかを教えてください」というご質問です。

武藤:もちろん多少のグラデーションはありますが、全国で伸びています。結果的には東京・静岡・愛知・大阪で戸数・売上高が多いですが、県単位では、「特別ここが伸びている」というのはなく、逆に言うと非常にポートフォリオの効いたビジネスです。

ただし、「人口の多い地域は入居率が高く、人口の少ないところは入居率が低い」とみなさま思っていますが、平地が多くて、プレハブ住宅が多く建っている地域は入居率が低くて、プレハブ住宅を建てにくい地域では入居率が高い傾向があります。例えば、入居率1位は沖縄ですが、すべての賃貸住宅がレインフォースドコンクリートで、プレハブ木造賃貸は建っていません。

入居率2位は島根です。島根県は過疎化の影響でプレハブメーカーの営業所が1つもなく、プレハブ住宅を作っていません。

3位が東京、4位は福岡、5位が熊本です。熊本地震の時は入居率がいったん上がりましたが、7年経った現在は供給過多となり元の入居率になりました。つまり、建て過ぎかどうかが入居率に影響します。

増井:まさに需要と供給ですね。

武藤:おっしゃるとおりです。そのため、当社は「建てない」ということに軸足を置いています。

質疑応答:外国人への住居提供について

八木:個人的に大変興味あるのが、外国人の入居にも力を入れるというお話です。文化などがそれぞれ違うため、ニーズを捉えていくと細分化されてしまうのではないかと思いますが、このあたりに関してはいかがでしょうか?

武藤:フォースバレー・コンシェルジュやYOLO JAPANでは、海外でトレーニングをした後に日本の生活に馴染むように就労支援をしているため、そのような会社と組んでいると、日本の知識が一定程度あり、日本の文化に馴染もうという気持ちのある方に出会えます。そのような方々に対する賃貸ですので、問題は起こりにくいと考えています。

当然、言語の壁や細かい慣習の違いはあります。そこで、同じようなコミュニティの方、同じような地域の方が固まって住めるような配慮は必要だと思いますが、今のところ取り立ててトラブルはありません。

質疑応答:サブリースのリスク負担者について

増井:「10年賃貸保証と言われていますが、リスクは誰が負うことになるのでしょうか? 某大手住宅メーカーから同じように提案されましたが、契約書を見ると、やはりオーナーが負担すると書かれていました」というご質問です。

武藤:繰り返しになりますが、建築時に莫大な金額を投資して借り上げれば、当然リスクはオーナーが負うのですが、もともと建っている物件を借り上げることに関しては、逆に当社がリスクを負担する話です。そのため、オーナーにはメリットしかないと思います。我々の場合は、建築させるわけではありません。

増井:御社がリスクを取るのですね?

武藤:もちろんです。オーナーが10年固定のプログラムを選ぶ時、2年改定のものや、5年後から改定するものなど、オーナーの要望に合わせて設計します。当社の基本は10年固定で、その後2年ごとの改定になります。高齢者向け賃貸のような大型投資の場合には15年固定となっています。

増井:ずいぶん長いですね。

武藤:業法も一昨年から変更されていて、賃料改定のリスク等はきちんと説明しなければいけないことになっているため、ご質問者の方は、「リスクについてはどうなっているのか?」ということを、ご質問するとよいと思います。その回答に納得いかなかった場合には、当社のホームページからぜひお問い合わせいただければと思います。

質疑応答:IR活動の今後の展開について

八木:「株主として、ある程度満足はしていますが、知名度向上のために、IR活動にもう少し力を入れていただければと思います」というご意見です。今後の展開に関してはどのように考えていますか?

武藤:過去にはテレビCMなどを打ったのですが、小規模にテレビCMを打つよりも、リスティング広告などが効果的だと考えています。IRについては、香港・シンガポールを含めて機関投資家向けに実施しており、一定の評価はいただいていると思います。

しかし、当社の商品はどうしてもオーナーという限られた富裕層向けであるため、やはり一般的なCMは馴染まないと思います。そこで、今のところWeb上のリスティング広告に集中しており、お客さまに対してはそのようにアピールしています。

IRに関しては、機関投資家だけでなく、今回のような機会をいただいて個人投資家向けにも実施しています。また、香港・シンガポールだけですが、海外の投資家向けにも実施しており、「Zoom」では、ヨーロッパのファンドに対しても実施しています。

質疑応答:ターゲットとしているオーナーについて

増井:「ターゲットとしているオーナーは、どのような特性の方が多いのでしょうか? 地方の高齢者が多いのでしょうか?」というご質問です。先ほど法人需要からオーナーを探すこともあるというお話もありましたが、そのあたりも含めてお願いします。

武藤:これはまさにポートフォリオであり、若い投資家オーナーから、80代の地主オーナーまで幅広いです。属性としてはおそらく地主オーナーが多いと思います。年齢層的には、ベンチマークが難しいのですが、65歳以上の地主オーナーが数としては一番多く、6割ぐらいだろうと思います。

ただし、今増えているのは30代・40代・50代前半の投資家オーナーです。物件もワンルームから分譲賃貸3LDKまで、幅広いです。単身者のほうが若干多いですが、それでもファミリーまでバランスよく借り上げしています。

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