自分は親として正しいことを言っているし、世間から見ても正しいと自信を持っている。しかしいくら親が正論を並べても子どもは言うことを聞かなったり、時には反発したり、だんまりという子もいますよね。

それは正しいと思っているのが、大人だけだから。子どもからすれば必ずしも正論が正解なわけではなく、答えは別のところにあるケースが多いのです。

正論という押し付け

たとえば学校へ行きたくない子どもに、「学校に行きなさい。大きくなったときに困るよ。あなたが好きな仕事で一生食べていくために勉強は大切だし、友人や家族を作るためにも学校は大切。義務教育だしね」という言い方は、大方間違ってはいないと思われるでしょう。

しかし「その通りだね。自分の人生のためにも学校に行くよ!」と子どもは納得してくれないですよね。それは大人にとっての正しさの中に、子どもの答えがないからです。

正論を並べられたところで、子どもは「親には自分のほんとうの気持ちをわかってもらえない。聞いてさえもらえない」と諦めモードに。「言うことを聞いておけば黙るだろう」としぶしぶ従うことになるでしょう。このように正論攻撃は上から押さえつける教育と変わらず、親子の信頼関係を育みにくくなってしまうのです。

「子どもにとっての正しさ」とは

では、子どもにとっての正しさとは何でしょうか。例を2つあげてみましょう。

幼稚園の帰り、子どもが「抱っこして」と言います。「自分で歩けるんだから歩いて」と返答する人も多いでしょう。子どもとしても、自分で歩けるのは十分わかってます。でも今日はお友達とケンカして、悲しくて嫌な気持ちがなかなか消えない。親に1回ギュッて抱っこしてもらえば、ホッとしてその後はいつも通りに歩けました。

また、子どもが学校に行きたがらないと親は焦り、「学校に行きなさい」と言いますよね。実は子どもは昨日先生に怒られて、今日先生はどんな顔をするのかな、怖いなと思っていた。でもお母さんに言えばまた怒られるから、理由は話したくない。かといって、学校へ行く勇気はやっぱり出ない。そんなときに親に背中をなでてもらうなどボディタッチをしてもらうと、安心して学校へ行く勇気が湧いてくるのです。

これは2つとも実体験です。子どもには「子どもなりの理由」があります。たしかに大人の正論は正しいですが、本当の問題を解決するためには子どもの問題に視点を当ててあげる必要があるのですね。まずは正論を言う前に、子どもの本音を聞くことが大切でしょう。

聞いても答えられないのが子ども

子どもの気持ちを聞き出すことが大切ではありますが、乳幼児期は言語能力が未発達なため、自分の気持ちや起こったことを説明できません。学童期に入ればプライドが働いたり、恥ずかしがったりでなかなか本音を話してくれなくなります。本音を聞き出すのは、思っている以上に難しいのですね。

そこで覚えておきたいのが、子どもは大人に比べ、圧倒的に経験が少ないということです。ちょっとした失敗やケンカですぐに心は折れ、様々なマイナス感情(悲しみ、怒り、嫉妬、焦りなど)をダイレクトに受け止めることになります。

大人のように受け流したり、「これぐらい気にすることない」「よくあることだ」という基準もありません。口でうまく説明できないので誰かと感情を共有することもなく、一人で抱え込むことになります。大人のように、お酒や買い物といった気分転換やストレス発散の方法も知りません。

何よりも、親と離れることにまだまだ不安を抱えています。精神的に自立するのは当分先のことで、親に不安を取り除いてもらい、安心してから初めて外の世界に出ることができます。大人はこのことを知っておく必要があります。

スキンシップ&リラックス

今まで書いてきたことは、筆者は「頭では」理解していました。しかし小1の長男が「学校へ行きたくない」と言ったとき、実践できませんでした。「まず子どもの意見を聞くこと」と心がけていましたが、すぐに焦りが顔を出して正論を述べ、子どもの態度が硬化するのです。

大人としては、頭では理解できても、心での理解が難しいものです。つい「親としての面子」が顔を出してしまい、しっかりするよう言ってしまう人も多いでしょう。そこをグッと堪える、心の闘いが必要になります。

スクールカウンセラーさんからは、頭にポンと手を置いたり、背中をさすってやったり、手を繋いだり、抱きしめるなど、まずはスキンシップが良いと聞きました。安心すれば勇気が出るそうです。同時に、帰宅後は好きなことを思いきりさせ(それがゲームでも2〜3時間以上など明らかにやり過ぎでなければOKだそうです)、まずリラックスさせることを重視したいと聞きました。

私たちが子どもに正論を並べたくなるとき、子どもは口にはできない不安を抱えているケースが多いことでしょう。大切なのは不安を安心に変え、社会に出る勇気を出してあげること。そのための聞く姿勢、スキンシップ、リラックスタイムを、親としての対応の選択肢として常に持っておきたいものです。

宮野 茉莉子