軌道にのらない仕事、上司や部下とのあつれき、不本意な異動、予期せぬ事業環境の変化…「会社を辞めたいな」と思う瞬間は人それぞれでしょう。すでに転職エージェントに登録したり、話を聞いたりしている人もいるかもしれません。

どうせ退職・転職するなら、モヤモヤした気持ちを残したり、辞めたことを後悔する日々を送ったりせず、すっきりと次のステップに進みたいものです。一方でいろいろ考えた結果、思いとどまるというケースもあるでしょう。どういった点がポイントになるのでしょうか。実際に転職した人に話を聞きました。

年齢が上がるほど迷いも増える?

Aさんは関西の私立大学を卒業後、大阪に本社を置く大手企業に就職。その後、30代で関西の別の大手企業に転職し、40代で東京のベンチャー企業に転職しています。そんなAさんは最近、元同僚の動きを見ていて気づいたことがあるといいます。

「20代、30代の頃は、正直なところ勢いで転職する人も多かったように感じます。未経験の仕事でもポテンシャル次第で任せてもらえたりもしますし。年収面でもギャップが少ないところを選びやすかったのかもしれません。でも40代、50代になると、なかなか希望する年収に合うような転職先は見つからないみたいですね。特に大企業に長年勤めてきて1000万円以上の年収がある人だと、生活のレベルも相当上がっていますしね。

強みになるスキルを持つ人は50代後半でも高年収の転職先を見つけて辞めていますよ。でも、実力があっても『本当に新しい環境でやっていけるのか』といった迷いなどからなかなか踏み出せないという人もいますね」

「何も考えずに会社を辞める人なんていないですよ」というAさんですが、自身の転職経験や周囲の人々の動きを見ていて、辞めようという気持ちが出てきたときに振り返っておくべきポイントはあるのではないかとも話します。

辞めても「未練」はないかどうか

Aさんが一番に上げたのは「未練」。それは、仕事や給料だけでなく、会社のネームバリュー、福利厚生、人間関係まで含めてのことだといいます。

「辞めれば環境が変わります。たとえば新進のベンチャー企業に転職すれば、誰に話をするにしても『何の会社?』からですし、無視されたり門前払いを食らうこともあります。持っているときはあまり意識はないかもしれませんが『今手にしているもの』は結構大切なものだったりするんです。それを手放すことに未練がないかどうかは一つのポイントかもしれませんね」とAさん。一方で、こうも話します。

「これはあくまでも個人の意見ですけれど『残っていたほうが楽だったなあ』と思うんだったら、転職なんかしないほうがいいと思うんですよね。会社を辞めるなら今よりもっと『楽』になるのか、『楽しく』なるのかどっちかじゃないかなって」

(家族も含めて)生活の変化に耐えられるか

「実は私は独身なので、非常に身軽だったところはあります。両親が関西にいますが、今の会社はテレワークが推奨されているので、いつ何があってもすぐ戻れるというところも転職時のポイントになりました。でも、家族のことを考えて踏み切れないという人も多いかもしれませんね」と、Aさん。

会社の仕組みはそれぞれですから、必ずしもAさんのような条件で転職できるとは限りません。また、退職・転職によって、家族の生活にも変化が起きることがあります。特に年収は生活に直結するため、転職に踏み切るかどうかの決定打にもなることもありますが、一時的にでも年収が下がる場合、配偶者など家族から反対される人も多いものです。

こうした事情で現在の職場からの転職はあきらめつつも、次のステップを狙っている人がいるようだとAさんは話します。

「実は先日、ある会社の元役員の方が転職を考えている50代の人に対して『今は家族のこともあるし動くな、しがみつけ。でも、今のうちに60代になってから仕事で役に立つスキルを身につけろ』とアドバイスしていたのを聞きまして。もはや人生100年時代ですから、これは50代のひとつのあり方かも、と思ってしまいました…」

転職先が求めていることの意味が理解できているか

Aさんは今、ベンチャー企業に勤めています。転職した理由の一つは「会社の伸びしろ」にあったといいます。「業績の伸びない会社にいたので、伸び盛りの会社で働きたかったんです」といいつつ、「でも、今振り返るとこの感覚がなかなか他人事だったなと反省もするんですよ」といってAさんは苦笑いします。

「会社が勝手に伸びていくわけではないですからね。だから、自分の力が求められているわけなので。本当に当たり前のことだし、できると思って転職したけれど、実際その場に置かれると、なかなかのプレッシャーです。

成果が思うように見えないときは焦りますし、悩みます。でも誰も助けてはくれないですよ。結局自分の力を高めていくしかないんです。大きな組織にいるとなんとなく薄まっている部分かもしれません。

『最初の給料が低くても、業績を上げて自分で自分の給料を増やしてやる!くらいの気概がないと転職には向かない』と、転職カウンセラーも言っていましたが、本当にその通りだと思います」

ひきとめてくれた人の言葉に頼っていないか

さまざまな条件を考慮して転職を思いとどまるという人も多いと思います。思いとどまった理由が「同じ職場にとめてくれた人がいたから」「〇〇さんがひきとめてくれたから」という人もいるかもしれません。この点についてAさんは次のように話します。

「会社の誰かにひきとめられて思いとどまったのに、その人が先に辞めてしまうことって驚くほど多いんですよ。でも、その時に『あの人がとめたから思いとどまったのにひどい』と思うのも、ちょっと違うかなと思うんです。あと、誘われて転職しても、転職してすぐに誘ってくれた人がいなくなったなんて話はあちこちで耳にします。相手が上司でも友達でも家族でもそうですが、人のせいにせずに、最後は自分で決めないと何かあった時に後悔することになるんだなと思いますね」

まとめ

いかがでしたか? 転職経験者なら少なからず心当たりがあるという人もいるでしょう。考えすぎてもチャンスを逃してしまいそうですが、辞めるにしろ、辞めないにしろ、悔いのない選択ができるようになりたいものですね。

LIMO編集部