キヤノン、17年通期売上高は4兆円超 メディカル新規連結でリーマン前の水準に回復 

2018年1月30日に行われた、キヤノン株式会社2017年12月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。IR資料

スピーカー:キヤノン株式会社 代表取締役副社長 CFO 田中稔三 氏

2017年実績のポイント

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田中稔三氏(以下、田中):それではお待たせしました。キヤノン株式会社の2017年12月期の連結決算がまとまりましたので、資料に基づきまして、わたくしから概況を説明します。

ご案内があったとおり、持ち時間は30分です。わたくしの説明は20分ぐらいで終えて、残りの10分間ぐらいで、みなさまからのご質問にお答えしようと思っています。よろしくご協力をお願い申し上げます。

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まず1ページ目です。2017年の業績のサマリーです。

2017年の世界経済は、日米欧の先進国では雇用や企業業績の改善が続き、中国を始めとする新興国でも景気の拡大が見られました。世界の情勢は、政治には混乱や緊張がありましたが、経済は総じてゆるやかな成長が続きました。

こうした中、当社の5ヶ年計画「グローバル優良企業グループ構想」フェーズVの2年目にあたる2017年は、現行事業の再強化と新規事業の拡大を推し進め、事業の構造転換を進展させました。

その結果、業績は売上・利益ともに前年を大きく上回り、4年ぶりとなる増収増益を達成しました。売上が4兆円を突破したのは、2008年以来9年ぶりで、対前年の伸び率が2桁のパーセントの増収を達成したのも、リーマンショックから回復した2010年以来です。

新規事業構成比の変化

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経営基盤を支える現行事業は、レーザープリンターやカメラの回復に加え、露光装置も、半導体や有機ELパネルへの旺盛な需要に支えられ、大きく売上を伸ばしています。

加えてプロダクトミックスの改善、原価低減など、収益力の強化を徹底し、すべての事業において、今回は増収増益を果たしています。

一方、新規事業については、1月4日から社名を変更した「キヤノンメディカルシステムズ」をグループに加え、商業印刷、ネットワークカメラ、産業機器、メディカルという4つの柱が出そろい、大きく販売を伸ばしました。全社に占める新規事業の売上構成比は、前年の14パーセントから10ポイント伸び、24パーセントとなっています。

商業印刷事業の減損について

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今回、商業印刷事業に関するのれんについて、339億円の減損を計上しました。「オセ」の買収により商業印刷事業に本格的に参入してから、すでに7年が経過し、事業を取り巻く環境は、当初の想定をはるかに超えるかたちで変動しています。

競合他社の参入による競争の激化、あるいは技術潮流の変化によって今後3年間は、この業界で確固たる地位を築くために、積極的な研究開発投資が必要となります。事業の収益性が当初想定していたものと比べると一時的に低下するため、将来計画を3年分に限定して事業価値を見直したわけです。

これまで投入してきた新製品は、市場への浸透が着実に進んでいて、設置台数の増加によるサービス収益の増加も見込まれることから、4年目以降につきいては、売上・利益を大きく拡大させて、当初計画していた成長軌道に戻せるものと考えていまして、商業印刷自身が期待の事業領域であるという考え方は変わっていません。

2017年 全社PL(年間)

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以上により、当期の売上は対前年で19.9パーセント増の4兆800億円、営業利益は対前年で44.8パーセント増の3,315億円となりました。

2017年 セグメント別PL(年間)

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続きいて、2017年年間のビジネスユニット別の売上の状況です。

まず、オフィスビジネスユニットでは、複合機は市場のカラーシフトが続く中で、次世代カラー機のラインナップに、中小オフィスをターゲットとした新製品を加え、販売を伸ばしています。

レーザープリンターは、省電力化や小型化を図った新製品のラインナップが上期に完成し、本体の販売を伸ばすとともに、本体の市場稼働台数の増加によって、消耗品の販売も回復しました。

以上の結果、オフィスビジネスユニットの売上高は、対前年3.2パーセントの増収です。

次に、イメージングシステムビジネスユニットですが、レンズ交換式カメラはオートフォーカス性能とネットワーク対応を一段と強化し、一眼レフとミラーレス、それぞれのカテゴリーで新製品を投入したことによって、販売は堅調に推移しました。

前年の販売が、熊本の震災影響により高水準であったことから、販売台数は対前年比3パーセント減の551万台となりましたが、ハイアマ製品へのシフトを進めたことによって、増収を果たしています。

インクジェットプリンターは、大容量インクモデルとホーム向け新製品を伸ばし、前年を上回る販売台数を達成しました。

以上の結果、イメージングシステムビジネスユニットの売上高は、対前年で3.7パーセントの増収です。

次に、メディカルシステムビジネスユニットですが、国内シェア1位のCT装置、超音波の診断装置など、主力の画像診断装置の新製品が、順調に売上を伸ばしています。

産業機器その他ビジネスユニットですが、有機ELパネルへの投資が本格化する中、現状においては技術的な優位性が評価され、当社のFPD露光装置と有機EL蒸着装置が、販売を大きく伸ばしています。

以上の結果、産業機器その他ビジネスユニットの売上高は、対前年で25.2パーセントの増収でした。

2018年見通しのポイント

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2018年、今年の年間の業績の見通しです。

2018年の世界経済は、政治の混迷リスクの一層の高まりが懸念されるものの、全体では緩やかな回復基調が続くものとみています。なお、為替の前提は、足元の状況を勘案してUSドル110円、ユーロ130円としました。

2018年 全社PL(年間)

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こうした環境のなかで、当社の5ヶ年計画のちょうど折り返し地点になる2018年は、「戦略的な大転換を果たし、新たなる成長に挑戦する」という目標の実現に向け、2年連続の増収増益を目指したいと思っています。

売上高は2007年の過去最高業績に次ぐ、2番目の高い水準である4兆3,000億円を目指します。

また、利益面でも引き続き二桁パーセントの増益を前提に、営業利益、税引前利益ともに2008年以来の4,000億円台への回復を目指します。

2018年 セグメント別PL(年間)

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現行事業には、オフィス機器は市場のカラー化やMFP化への需要を捉えた新製品を投入することにより、販売を伸ばすとともに、収益力の徹底強化を行います。

カメラも、ミラーレスカメラをはじめとした、ラインナップの強化により、需要をさらに掘り起こし、シェアを向上させたいと考えています。

露光装置は、増産対応を図りながら、旺盛な需要を捉えて二桁の成長を実現していきたいと考えています。

一方、新規事業も、4つの柱である商業印刷、ネットワークカメラ、産業機器、メディカルも、必要に応じて積極的な投資を行いながら、一層の成長を目指すとともに、あわせて減価の低減にも取り組んで、収益性を改善させていきたいと考えています。

以上により、今年の売上は対前年で5.4パーセント増の、4兆3,000億円。営業利益は同じく、26.7パーセント増の4,200億円の見通しです。

当社は創立80周年の節目であった昨年2017年は、先ほどご報告した通り、大幅な増収増益を達成することができました。この勢いを持続させながら、2018年も、現行事業の徹底強化と、新規事業の一層の拡大を図って、5ヶ年計画の目標実現に向け、大きく飛躍する年にしたいと考えています。

オフィス(複合機)

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4ページ目です。今年のビジネスユニット別の売上の状況です。

まずオフィスビジネスユニットですが、複合機は市場では引き続いて新興国を中心に、カラーシフトが継続しました。モノクロ機の減少を吸収して、全体では横ばいで推移する見込みです。

当社は好調な販売を続ける次世代カラー機に、プリント管理機能を標準装備した新しいモデルを投入し、市場を上回る成長を目指していきたいと考えています。

オフィス(レーザープリンター)

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レーザープリンターの市場は、引き続きMFPシフトが進展しており、当社もラインナップの整った本体製品の販売を伸ばすとともに、安定した消耗品の販売にもつなげていくよう、事業全体で増収を図っていきたいと考えています。

オフィス(その他)

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オフセット機からデジタル機への切り替えが進んでいる商業印刷も、昨年(2017年)発売をした2機種の新製品が年間を通じて寄与してくることから、新製品を牽引役として、販売を大きく伸ばしていく計画です。

以上により、オフィスビジネスユニットの売上は、対前年3.9パーセントの増収となる見込みです。

イメージングシステム(カメラ)

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イメージングシステムビジネスユニットですが、レンズ交換式カメラの市場は、今年も4パーセント程度の減少を見込んでいますが、当社の販売台数はほぼ前年並みの550万台になる見通しです。

ラインナップを継続的に強化することで、需要の喚起とシェアの拡大を図っていきますが、とくにミラーレスカメラは、積極的に新製品を投入することによって、今年も二桁成長を目指していきたいと考えています。

イメージングシステム(インクジェット)

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インクジェットプリンターは、新興国での伸びによって、市場全体では引き続き前年を上回る見通しです。当社は新興国を中心に、販売を伸ばしています。大容量インクモデルのラインナップを一新して、販売を加速させます。

以上により、イメージングシステムビジネスユニットの売上高は、対前年1.5パーセントの増収の見通しです。

メディカルシステム

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次が、メディカルシステムビジネスユニットですが、市場は世界的な人口増加と、高度な医療技術へのニーズを背景に、安定的な成長が見込まれています。

当社は、画像処理技術で強みをもつCTや、超音波診断装置を中心に、海外での販売も増やしていくとともに、これまで当社が培った生産技術を活かして、原価の低減を図って収益性の改善にも取り組みます。

以上によって、メディカルシステムビジネスユニットの売上高は、対前年7.8パーセントの増収の見通しです。

産業機器その他

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最後に、産業機器その他ビジネスユニットは、データセンターや、車載用のメモリ需要が高まるなかで、その半導体の露光装置も、引き続き高い販売を見込んでいます。

ネットワークカメラは、今市場が拡大を続けるなかで、当社の強みであります、高画質カメラをベースに、さまざまなソフトウェアを用いたソリューションを提供し、事業の拡大を継続します。

以上により、産業機器その他ビジネスユニットの売上高は対前年14.7パーセントの増収になる見込みです。

私からの説明は以上です。

質疑応答:商業印刷事業に関する339億円の減損について

質問者1:日経新聞のサイトウです。

商業印刷事業に関する339億円の減損について、くわしく教えてください。

田中稔三氏(以下、田中):減損テストは今回初めて実施したわけではありません。みなさんご存知のとおり、(会社を)買収する時に、その会社の純資産を上回った買収価格はすべて、のれんという仕分けをされるわけです。

そのあとに決算事項として、毎年、のれんが毀損していないかという確認のテストをします。従って、オセも2010年買収以降、毎年、減損テストを行っています。

それまでは十分にのれんが確保されていたのですが、先ほど申したように(子会社化から)7年が経ち、当時想定していた事業環境がだいぶ変わりました。

ご存知のように、今、オフィス用のプリンターは一種の成熟産業で、そんなに大きな成長は期待できません。競合会社も含めて商業印刷はオフセット印刷からデジタル印刷へというのが主流です。

我々もオセと一緒に、商業印刷の事業を確立するために、この3年間で想定していた以上の研究開発投資をつぎ込んで、業界での地位を確固たるものにしようとしましたが、想定していた収益が、若干、下振れしたのが今回の減損という格好で表れたということです。

質問者1:今までオセは経営を含めて、向こう側(オセの経営陣)に任せていたと思いますが、これからはもう少しキヤノン側も(オセの経営に)入って、グリップを効かせて立て直すというイメージですか?

田中:まさにそのとおりです。もちろん事業の内容は今までどおり向こう側(オセ)主体で動くことには変わりないのですが、彼らの業績を、キヤノン本体と一緒に管理する体制を、すでに相手と話し合って整えています。

質疑応答:為替の想定水準と業績へのインパクト

質問者2:ロイターのアマノです。

為替は、足元だとドルは想定よりも円高で推移し、ユーロは円安で推移しています。今期の為替が(業績に)どんなインパクトを与えるのかという点と、今期(為替について)やや波乱含み(の相場)があると思うので、どういう状況を想定に織り込んだのか聞かせてください。

田中:年間の為替による影響のインパクトですが、USドルが売上で145億円、ユーロが67億円、営業利益に対するインパクトは、ドルが53億円、ユーロが33億円です。

為替の今後の見通しは、なかなかわかりません。それぞれの、とくにアメリカなどの金融政策次第だと思います。

今のところはなかなか(将来的な為替の水準を)読めませんので、いつものことですが、決算発表時の足元の水準を重視しながら、一連の影響をみなさんにお知らせする方法を取ります。

質疑応答:米国の減税の業績へのインパクト

質問者3:東洋経済のトオヤマです。

米国の減税について、今期のインパクトなどはありますか。

田中:昨年の年末にトランプ大統領の(減税についての)署名がありましたので、(米国の減税によるインパクトは)去年から有効になりました。

我々のアメリカの法人の、いわゆる繰延税金資産は、どちらかというと負債側です。したがって、その洗い替えで、2017年の業績としては約70億円ぐらいの減税効果があります。今年からは……。

質問者3:プラスですか?

田中:(去年は)負債側でしたので、そうです。

今回からは、税率が下がるという効果になるので、彼ら(キヤノンのアメリカの法人)がどれくらいの利益を出すかで(インパクトは)変わっています。それだけの影響ですから、20・30億円ほどの規模だと思います。

質疑応答:来期の業績を押し上げる要因

質問者4:NHKのノダと申します。2018年12月期の見通しについてです。今期(の業績)がかなり良く、増収増益でした。来期もかなり(業績が)良いと考えていると思いますが、一言でまとめて、業績を押し上げる要因というのは、どういうふうに考えていますか。

田中:今年ですか?

質問者4:はい、2018年です。

田中:今の5ヶ年計画の基本方針である「現行事業を充実させて、さらに新しい新規事業を拡大しよう」という方針が、2017年、土台としてできました。それをさらに確固たるものにする、というのが今年の我々の課題だと思います。

質問者4:それは達成できる状況というか、社会情勢や御社の体制は、かなり整っていると。

田中:そうですね。2017年の環境が今年も継続すると考えれば、環境としては非常によいと思います。

ただ、大きく変わっている点は、キヤノンメディカルシステムズが2016年12月19日でしたか、ほとんど年末にグループ入りしました。

つまり、2016年の(キヤノンメディカルシステムズの)実績はほとんど0(ゼロ)でした。2017年は丸々、キヤノンメディカルシステムズの業績が上乗せされたというプラス面がありました。

それと、2017年が想定以上に良かったのは、説明にもありました、現行事業のカメラ、周辺機器、OEMです。これがそれぞれ6パーセント、5パーセントぐらい売上を伸ばしました。

したがって、いろいろな好条件が整って、2017年現行事業が良かったものですから、やはり、そのペースで今年は伸びるというのは、なかなか難しいだろうということで、そういう意味で今年、若干、現行事業を慎重にみています。

環境としては、我々は去年とまったく同じような状態が今年も続くと考えています。

質問者4:ありがとうございます。

田中:どうもありがとうございました。

記事提供:ログミーファイナンス

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