2018年2月7日に行われた、ソフトバンクグループ株式会社2018年3月期第3四半期決算説明会・質疑応答の内容を書き起こしでお伝えします。IR資料

スピーカー:ソフトバンクグループ株式会社 代表取締役会長 兼 社長 孫正義 氏
ソフトバンクグループ株式会社 執行役員 専務執行役員 財務統括 後藤芳光 氏
ソフトバンク株式会社 代表取締役社長 兼 CEO 宮内謙 氏

ソフトバンク株式会社上場による資金の使い道

孫正義氏(以下、孫):質問の前に、後藤くんからコメントを。

後藤芳光氏:本日は(ソフトバンク株式会社の)上場の準備を開始するということを、孫からご説明させていただきました。申請は先でございまして、まだするかどうかの最終決定はしておりません。

したがいまして、今詳細につきましては語ることが事前勧誘と見なされるということで、顧問弁護士より指導を受けておりますので、上場準備に関する詳細についてはお答えできないことを、何卒ご容赦ください。よろしくお願いいたします。

質問者1:日経コンピューターのオオワダと申します。No.1が集まって300年伸びる組織を作るということの関連で、ソフトバンク株式会社を上場させた後の経営体制についてどのように、お考えでしょうか? 今は、残念ながらソフトバンク株式会社は3位ということで、1位ではないので、どういうふうに強化していくかということなんですけれども。

率直に聞いて、宮内(謙)さんに、ずっと社長を任せていくのでしょうか? 孫社長は創業者なので、ずっと社長をやられると思うんですが、宮内さんは孫さんより8歳も年上ですし。大変余計なお世話ですが、相当お疲れなのではないかと思うわけで、どこかでバトンタッチが必要なのではないかと思うんですけども。そのあたりについて、お考えをお聞かせいただけますでしょうか。

孫:宮内が社長になります。私は会長で継続して応援していきますけども、自立的・機動的な成長をするために、権限は宮内に移譲すると。

すでにこの1~2年、宮内が中心になって(ソフトバンクを)成長させているわけですけども。もちろん私も永遠じゃないし、宮内も永遠じゃないです。宮内の下に副社長だ常務だ専務だと、こういう体制で、これから後継者を育成して、そういう体制を準備していくことになる思っています。

でも、真っ先に上場におけるリーダーとしての社長は間違いなく宮内ということで、指名打者でいきたいと思っています。

質問者1:ありがとうございます。Uberの1案件で8,000億円という話もありましたが、国内のソフトバンク株式会社上場で得た資金を、これからどのように使っていくのかについて、教えてください。

2年前にSupercellの売却を発表された際も、そのときは具体的な出資先は決めていないという話だったと思うんですが、翌月にarmの大きなお買い物を発表されたということで、非常にスピード感を出されていると思います。

そういう例を踏まえると、今このタイミングで上場に踏み切るということは、使い道はもう決まっているのではないかと、ついつい予測してしまうのですが。そのあたりについては、いかがでしょうか?

孫:財務基盤の強化と成長戦略……これが、答えですけれども。成長戦略の中には、当然いろいろあるわけですけれども、すでに100億円以上の案件については、まず真っ先にビジョン・ファンドのパートナーに、その機会を提案する。

ビジョン・ファンドのパートナーから、「額が大きすぎる」とか、あるいは「通信との関連が強すぎるから、むしろ通信の強化のためならソフトバンク本体でやってくれ」とか、そういう話がありえるわけです。

ときどき、「ビジョン・ファンドとソフトバンクグループのコンフリクトについて、非常に懸念する」というコメントをされる方がいますけども、はっきりとビジョン・ファンドとソフトバンクグループの間では、もう契約で、このコンフリクトを回避すると。こういうガバナンスをきちっとお互いに尊重するというのは、契約で決まっています。

つまり100億円、100ミリオン未満は、ソフトバンクグループで自由に投資する。100ミリオン以上は、最初にビジョン・ファンドに必ずオファーされる。

ビジョン・ファンドのソフトバンク以外のパートナーが、「それは額が大きすぎる」とか、あるいは「通信との関連が強すぎて、直接的な利回りに意義あり」というようなときには、ビジョン・ファンドではパスする。

こういうことが、我々の主要パートナーに権利として与えられています。そういう手続きを踏んで、ビジョン・ファンド以外に、投資する場合があります。

でも、中核に考えているのは、ソフトバンク2.0としては、むしろビジョン・ファンドを中心にこれからNo.1戦略を強化していく。こういうふうにご理解いただきたいと思います。

質問者1:ありがとうございます。

「群戦略」構想のきっかけは?

質問者2:産経新聞のニシオカと申します。孫さんにお伺いしたいんですけれども、先ほどおっしゃった「群戦略」について。さっき20年前の映像がありましたけど、具体的には、いつどこで、どういうきっかけでビジョンを描かれたのか、具体的なエピソードを教えていただけたらと思います。

孫:映像はたまたま19年前のものでしたけども、実は群戦略は、ソフトバンクを創業するときから考えていたんです。

これを言うと、「本当か」「後付けだろう」と。こう思う人・言う人が多いと思うんですけれども、実は19歳のときに、「人生50ヶ年計画」というライフプランを僕は作ったわけです。

20代で名乗りをあげて、30代で軍資金を貯めて、40代でひと勝負して、50代である程度ビジネスモデルを完成させて、60代で……60代というのは60歳から69歳までですけども。60代で、継承を行っていく。

もちろん、創業者ですから、死ぬまでソフトバンクとは関わっていくとは思うんですけれども、徐々にそういう継承プログラムに入っていくと言うことだと思います。

創業するにおいて、私は事業家として会社を起こす。でも、起こした会社は私の人生の期間を超えねばならないということを考えてたわけです。創業するというのは、そのぐらい責任をともなうものだと思っていたわけです。

そこでやる以上は、私の人生をはるかに長く超える(会社にする)。具体的に300年という数字は、その時点ではあげてませんでしたけども、100年、200年、300年という規模はいかなきゃいけないと思ってたわけです。

40ほど事業を考えたわけですけども……話せば長くなりますから、はしょりますけども。少なくとも実はソフトバンクを創業するときから、群戦略というものを考えました。ソフトウェアの一アプリケーションを自分で書くよりも、私は19歳のときに、すでに電子翻訳機を発明し、特許を取ってシャープさんに売却したりしましたけども。

自分が一製品を開発するより、多くの人が開発したもの、多くの人が作ったものを分けあう。そういうプラットフォームを作る方が正しいだろうということで、「ソフトのバンク」ということで、社名も、一製品に頼らないという「バンク」という名前にしたわけです。

つまり構想的には、「そういう、300年もつような群戦略を作りたい」ということは、実は最初から思っていた。でもこれを言うと誇大妄想だと言われますし……当時から言われてましたが(笑)。でも正直に言うと、最初から狙って始めたものです。

質問者2:それを考えついたのはどういう場面だったのか、思い出せる範囲で教えていただけたら。

孫:19歳のときに1つ発明をして、発明したものを試作して、契約まで持っていって、販売する製品まで持っていくことの苦労を、胃の痛い思いをすごい体験したんです。こんな苦労は、たまたまラッキーで当たればいいけど、そんなにラッキーが毎回続くわけない。

それよりも、もっと幅広く安全に事業家としてやれる方法はないか? ということを考えたわけです。そこで、答えは群戦略しかないなと思ったわけです。

ですから、「孫の二乗の兵法」という、僕の25文字のやつ(ビジネス哲学)がありますけども。「一流攻守群」という(戦略の段に)「群」という文字が、すでに入っています。それ(群)は、僕が20代そこそこで作った25文字のそこにも、もうすでに入っているわけです。

ですから、今から30年以上前に25文字作ったんですけど、その25文字の1文字に「群」が入っているのは、そういう意味なんです。ですから、「群」という戦略的文字を使いだしたのも、実はもう30年以上前ということになります。

LINEモバイルとの戦略的提携について

質問者3:フリーランスのイシノと申します。先ほど、LINEモバイルとの提携についての説明がありましたけれども、実質的に株を51パーセント持っているということで、提携というよりも傘下という意味合いが強いのかなと思います。ワイモバイルがある中で、今後LINEモバイルをどうしていきたいのか、どうお考えなのかをお聞かせください。

宮内謙氏:お答えします。みなさんご存じのように、LINEは非常に便利なチャッティングソフトです。僕も毎日使っています。

LINE社にとってみると、インターネットでもっともっと顧客を増やしたい。一方で我々は、例えばワイモバイルでAndroid Oneを独占的にやっておりますけども、ああいった非常に性能が良くて安い端末を提供できます。マーケティング的にも、いろんなかたちで一緒にやっていけるんじゃないかなと思っています。

3年ぐらい前に、「ワイモバイルをやると、それは全部ソフトバンクが食われてしまうんじゃないか?」と、何回か質問をいただいたことがあったように思います。ソフトバンクのブランドとワイモバイルのブランドの2つには、非常にきちっとしたブランドポジショニングができました。

ユーザーにはたくさん、いろんな方々がいらっしゃいます。そのため、これ(ソフトバンク・ワイモバイルの2ブランド)にLINEモバイルが加わることによって、3つ目のポジショニングを一緒に作っていくことができるんじゃなかろうかと、私は思っております。

質問者3:すみません、もう1点いいですか? 楽天の(携帯事業への)参入について伺いたいです。周波数獲得に関してはライバルになると思うんですけれども、楽天の参入はどのように見られているのかを教えてください。

孫:先ほど私は、情報革命と申し上げましたけども。情報革命にはいろんなプレイヤーが市場でそれぞれの役割を果たすということがあろうかと思います。明治維新も海援隊があったり陸援隊があったり、薩摩藩だ長州藩だといろいろあったわけですけれども。そういう意味では、楽天さんも情報革命を牽引している、立派な1つの革命家だと思います。

楽天さんなりの新しい切り口で市場に参入することは、市場をそれなりに刺激すると。我々ももちろん、インターネット業界から出てきたものとして、切磋琢磨しながら継続して業界を革新していきたいと思っています。

「通信」というインフラの必要性は?

質問者4:日経ビジネスのタカツキと申します。2点お尋ねします。1つ目は、Sprintの設備投資について。2016年の実績に比べるとペースは上がっている結果が出ていますけれども、AT&TやVerizonに比べればだいぶ下回る。

先ほど孫社長は、「2.5ギガヘルツ帯、5Gに向けて非常にたくさん周波数がある」とおっしゃっていました。それも、設備投資をかけられる余力があってこそだと思います。5Gに向けたSprintの設備投資の考え方について、まずはお聞かせください。

孫:すでに、我々は基地局を持ってますから、その基地局に5G用に2.5ギガヘルツを割り振る。あるいは、すでに2.5ギガヘルツ用に打っている設備に、ソフトウェアのアップグレード、あるいは追加のアンテナということで、できる部分もたくさんあります。

ですから、十分に我々は予算の中のキャペックスで5Gのネットワークを構築していくことができると計算しています。

質問者4:ありがとうございます。2つ目は、先ほど、「車はパーツだ」というお話がありました。その上に傘を被せるように、アプリケーションレイヤーでライドシェアのいろいろな会社を掌握されています。そうした上のレイヤーから攻めていくのであれば、一方でなぜ、通信というインフラを日米で持ち続けていく必要があるのか。そこについても、解説いただければと思います。

それで、もしそれ(通信)が必要であるならば、日米だけではなく、もっと他にも通信のレイヤーでパーツが必要なのではないかと思いますが、それはいかがでしょうか? 以上です。

孫:通信は、我々が情報革命をやっていく中の重要なインフラになると思っています。そのインフラの上にIoTのさまざまな機器が、ネットワーク上にぶら下がってくると。こういう意味では、非常に重要なコアの事業だと思っています。

ですから、Sprintがどういうかたちでこれから進化していくにしても、あるいは合従連衡があるとしても、ソフトバンクがなんらかのかたちで米国という、非常に重要な、世界で一番大きな市場に対して、重要なインフラに継続して関わっていきたいと思っているということです。

質問者4:アジアやヨーロッパについては、いかがですか?

孫:いい機会があれば打って出るかもしれませんし、それはまた余力ができた中で、そのタイミングで検討するということです。

質問者4:ありがとうございました。

元シャープの佐々木正氏への想い

孫:はい。じゃあそのAの3の女性の方。その方と、もう一人にしようね。

質問者5:日経コンピュータのタナカと申します。元シャープの佐々木(正)副社長が(2018年)1月末にお亡くなりになりました。(佐々木氏は)孫社長にとっての恩人だとお伺いしています。あらためて、佐々木さんへの感謝の想いというか、今の率直なお気持ちをお聞かせ願えませんでしょうか。

孫:はい。創業より前、私が初めて人生でお金を手にしたのは、シャープさんに私が19歳のときに発明した電子翻訳機、今で言う電子辞書ですけれども、それのライセンス契約をしたときでした。そのときの相手方が、シャープで当時専務をしておられた、佐々木さんでした。後に副社長になられました。

そのときからもうずっと2、3ヶ月に1回、アメリカに佐々木さんが来られるたびに、私と必ず食事をして。また私がソフトバンクを開始してからも、佐々木さんが東京に来るたびに2、3ヶ月に1回、一緒に食事に呼んでいただいて、いろいろとご指導をいただきました。

私が病気をしているときもそうでしたし、ソフトバンクが苦しかったときも、そうでありました。いろんなかたちで、これほど親戚でもない、投資家でもない、直接的な事業のお客さんでもない方に、こんなに懇切丁寧に親切に、私にいろんなアドバイスをしていただいたと。ご指導いただいたと。こんなありがたい方はいないと。私にとっては本当の大恩人ということであります。

「6大恩人感謝の日」というのを創業以来、1年目からずっと作ってやっていますが、毎年5月2日は「恩人感謝の日」ということで、ソフトバンクの会社の祝日にしています。その中でも一番最初から、ソフトバンクの創業前からご指導いただいたのが、佐々木さんだと。

102歳で先日亡くなられましたが、最後まで最先端の技術に対して思いを深く、高らかな志で掲げておられました。恩人……私の尊敬する方であるということは、もう間違いない存在だと思っています。ありがとうございます。

Didiの新交通システムは、どう収益化する?

孫:じゃあ最後に、どなたかおられますか? はい、じゃあAの1番の方。

質問者6:野村證券のマツムラです。質問は2点あります。1点目は、LINEモバイルについて。もっと、いろいろな取り組みができるんじゃないかと思っています。仮にMVNOと自社サービスの併用が認められるのであれば、(ワイモバイルで)ヤフーさんのブランドを使って本体で(取り組みを)やっているように、LINEさんのブランドを使って本体でやってもいいですし、ワイモバイルショップでLINEモバイルを売ってもいいと思います。

もう少し、ソフトバンク本体との取り組みがあるんじゃないかというのが、1番目の質問です。

孫:ワイモバイルもこれからさらに強化していきますし、宮内社長を中心に、そこはもっともっとやっていきたいと。攻めのブランドですからね。

質問者6:2点目は、トランスポーテーションの将来について、確認させていただきたいです。Didiさんが20都市で新しい交通システムを始めるということでした。スマートトランスポーテーションの概念はわかるのですが、どのようにしてビジネスになるのかを、ご解説いただければと思います、

孫:これはDidiにとって、新しい事業の取り組みです。まずは稼ぐというよりは、トラフィックライト……何万という信号機を、Didiが地方の都市政府と提携してサービスを行うことによって、すでに交通渋滞を20パーセントくらい削減できているというような実績が、続々と出ています。

それほど多くの人々が、交通渋滞などが緩和されて助かるということであれば、Didiと地方政府の関係は非常に良くなります。良い関係が構築できれば、ビジネスチャンスとしては直接あるいは間接的に、いくらでも後から出てくると。

目先ですぐにお金を追い求めなくても、まずは人々の役に立つと。人々の役に立てば、いずれ必ず、そこをいろんなかたちで収益化に結びつけていくことは可能だと、そう思っています。よろしいでしょうか?

ありがとうございました。以上をもちまして、今日の説明会を終わらせていただきたいと思います。

最後にもう一言、「群戦略」。これがソフトバンクの本当のやりたいこと、姿だということを、あらためて強調させていただきたいと思います。ありがとうございました。

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