2024年1月19日に発表された、モリト株式会社2023年11月期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:モリト株式会社 代表取締役社長 一坪隆紀 氏

CONTENTS

一坪隆紀氏(以下、一坪):モリト株式会社代表取締役社長の一坪です。2023年11月期決算のご説明を始めさせていただきます。今回は、最初に第8次中期経営計画のアップデート、続いて2023年11月期の業績についてご説明します。

中長期方針 モリトが目指す姿

中長期方針でモリトが目指す姿は、従来と変わらず「小さなパーツで世界を変え続ける、グローバルニッチトップ企業」です。この目標にできるだけ早く近づくべく、このたび第8次中期経営計画のアップデートを実施しました。

第 8 次中期経営計画アップデートサマリー

今回のアップデートの背景と概要についてご説明します。本中計期間である2022年から2026年の5年間のうち、2年間が終わりました。

2年間の取り組みの成果として、1つ目にはモリトジャパンの会社分割などの事業再編、2つ目にはコロナ禍における新たなビジネスの創出、不採算事業の見直し、運送費の改善などがあります。これらが功を奏し、利益率の向上や筋肉質な利益体質の構築がなされました。

また、PBRも改善され、当初の第8次中期経営計画の財務数値目標を早期に達成できる見込みになりました。ただし、各事業の具体的な成長戦略の開示や、投資、ROEの改善などが重要な課題であると認識しています。

そこで今回のアップデートでは、第8次中計の期間である2026年度までを「未来の成長の加速に向けた準備期間」と設定し、2030年度のありたい姿として売上高800億円、営業利益50億円、ROE8パーセントを掲げました。

事業別 現状と 2030 年にありたい姿

スライドの図は、アパレル・プロダクト・輸送関連事業のそれぞれが、2030年までにどのような成長を目指しているのかを示しています。

売上高と営業利益率がともにトップのアパレル関連事業は、利益率および規模の拡大を目指していきます。一方で、もっとも規模の小さな輸送関連事業は、北米事業に重点を置いて拡大を目指していきます。

プロダクト関連事業は、モリトジャパンを中心とするビジネスと「プロダクトM」の2つに分けて表現しています。「プロダクトM」には、買収等によってモリトに加わった厨房の排気ダクトに使われるフィルターレンタル業やアクティブスポーツ関連など、比較的収益性の高いビジネスが含まれています。

「プロダクトM」はさらなる効率アップに、プロダクトは課題である利益率改善に注力していきます。

財務数値目標のアップデート

このような2030年までの成長を視野に入れ、2026年度までの財務数値目標は、売上高600億円、営業利益30億円を目指すことにしました。未来の成長に向け、積極的な投資の実施を想定した数字となっています。直近で改善した利益率の水準を維持し、規模の拡大を目指していきます。

投資戦略

投資戦略についてです。第8次中計期間以降のさらなる成長につなげるため、営業キャッシュフローの中で生まれたお金に加えて外部調達も活用しながら、スライドに記載されている内容の投資を実施していきます。

投資戦略 【M&A】

投資の中でも特に、M&Aはマストで実行したいと考えています。これまでは、ニッチトップであること、グループシナジーがあること、収益基盤が安定していることの3つを方針としていました。

今回よりM&Aをターゲットをさらに明確にし、グローバルシェアの向上、メーカー機能の拡大、BtoC事業の強化、新事業への参入などを方針に加えました。この方針を中心に、積極的に取り組んでいきます。

コーポレート戦略 【資本政策・財務戦略:全体像】

ROEが株主資本コストを下回っている状況からの脱却およびPBR1倍の突破を目指し、資本政策と財務戦略も開示しています。株主還元に加え、積極的な成長投資による事業拡大、有利子負債活用による資本構成の適正化により、まずは2026年までにROE6.5パーセントの達成を目指します。

その他の第8次中計の内容については、別途開示資料をご覧ください。

2023年11月期 ハイライト

2023年11月期の業績についてご報告します。まずはハイライトです。1年を通して、欧米・中国での消費の減速・需要の停滞の影響がありました。さらに第4四半期においては、異常なまでの暖冬が大きな打撃となりました。

一方で、スポーツシューズや作業服、医療機器関連商品などの機能性に優れた付属品・製品が好調に推移しました。加えて、先ほどもお伝えしたとおり、モリトジャパン分割による利益率の改善が進み、結果として売上高・営業利益・経常利益が過去最高を記録しました。

2023年11月期 通期業績サマリー

こちらのスライドは業績のサマリーとなります。

2023年11月期 売上高

売上高は485億2,900万円と、先ほどお伝えした欧米市場の停滞や不採算事業の見直しに加え、暖冬が非常に大きく影響した結果となりました。ただし、2023年度はトップラインよりも利益率の向上を重視しており、それによって不採算事業が減り、利益率が改善されたことは評価できると思っています。

2023年11月期 四半期別売上高の推移

特に暖冬の影響を受けたのは国内アパレルの冬物や防寒対策用インソールの販売で、スライドの図のように、2023年第4四半期が当社予想よりも伸びなかった結果となりました。

2023年11月期 売上総利益

売上総利益についてです。分社化したモリトジャパンやモリトアパレルなどを中心に大きな成果があり、前年同期比で7億7,800万円増加しました。売上総利益率は1.5パーセント増の27.3パーセントとなっています。

2023年11月期 売上高・売上総利益率の推移

モリトジャパンの会社分割により、在庫や取引条件などの課題が見える化されました。その結果、不採算事業からの撤退、営業の粘り強い交渉による利益率の改善、在庫管理の意識改革が進みました。

2023年11月期 営業利益

営業利益についてです。経費率は人件費や出張旅費などの増加に伴い増加しましたが、自社倉庫の効果により、引き続き物流の効率化が進んでいます。売上総利益の増加に伴い、営業利益は前年同期比16.4パーセント、営業利益率は0.7パーセント増加しました。

2023年11月期 経常利益

経常利益は、営業利益の増加に伴い増加しました。

2023年11月期 当期純利益

当期純利益についてです。投資有価証券の売却益や組織再編による税負担の減少などがあり、前年同期比32.5パーセント増の22億1700万円となりました。

2023年11月期 連結貸借対照表

連結貸借対照表です。資産は、商品と売掛金が減少し現預金が増加しました。負債は約6億円減少しました。純資産は、有価証券の評価や為替換算調整勘定などの増加により、約17億円増加しています。

2023年11月期 連結キャッシュフロー計算書

キャッシュフローについてです。全社的に掲げているCCC改善の成果が、営業キャッシュフローの改善に表れていると分析しています。

2023年11月期 地域別売上高

事業の概況をご説明します。地域別の売上高は、アジアが減少し、日本・欧米が増加しました。

2023年11月期 アパレル関連事業売上高

事業別の売上高をご説明します。まずは、アパレル関連事業についてです。

特に欧米向け商品は、市場における在庫のダブつきや事業停滞の影響があり、各地域で売上は減少傾向にありました。さらに、この異常な暖冬によって、国内アパレルの冬物販売が我々の想定よりも鈍化しました。しかし、それでも国内需要は堅調で、特に作業服やスポーツシューズ、バッグ向けの付属品の売上が増加しました。

またアジアでは、中国や香港でのベビーウェアや、ベトナムでの日系スポーツメーカー向けのスポーツシューズと作業服関連商品の売上が増加しました。

2023年11月期 プロダクト関連事業売上高

プロダクト関連事業についてです。建設現場などで使用されるフルハーネスは、昨年の法改正によって発生した特需が一巡しました。

また、サーフボードの関連商品の売上も減少しました。こちらは東京五輪などをきっかけに競技人口が増えたものの、一時期の特需からは落ち着いた状況になっていますが、今年のパリ五輪で盛り上がることを期待しています。

一方で、均一価格小売店向けの商品や医療機器関連商品、厨房機器のレンタル・販売、清掃事業などは好調に推移しました。加えて、プロダクト関連事業の中心であるモリトジャパンがかなりの利益改善を行ったため、収益力が向上しつつあります。

2023年11月期 輸送関連事業売上高

輸送関連事業についてです。コロナ前の自動車生産台数には及びませんが、半導体不足の影響は改善が見られました。日本国内および欧米で、特に日系自動車メーカー向けの内装部品が増加しました。

アジアでは、中国において工場間の生産移管の調整や、利益率の低かった不採算ビジネスからの撤退を行ったことに伴い、売上が減少しました。

2023年11月期 地域別 売上構成

地域別の売上構成です。欧米向けのアパレルおよび輸送関連事業が中心のアジアが減少しました。

スライド上では日本が70パーセントとなっていますが、こちらには日本とアジア・欧米との直接取引分が含まれています。そのため、市場別的には日本が約50パーセント、アジアが約30パーセント、欧米が約20パーセントであるとご理解ください。

2023年11月期 地域別×事業別 売上構成

事業別の売上構成です。毎年多少の上下はありますが、アパレル関連事業が約50パーセント、プロダクト関連事業が約35パーセント、輸送関連事業が約15パーセントとなっています。

2024年11月期 通期業績予想

2024年11月期の業績予想についてご説明します。2024年11月期は、売上高510億円、営業利益26億円、当期純利益23億円と予想しています。

地域ごとの見通しとして、国内市場はアウトドア関連事業を中心にコロナ禍後の特需が一服しています。今後は平常時に戻ると捉え、新商品の開発や提案、新規事業の立ち上げなどを加速させていきます。

アジア市場においては、中国は不動産の問題など、経済が不安定な状態がしばらく続くと想定しています。地政学リスクの増加により、欧米企業がASEANへ移っている現状もあるため、当社も注視しながらアジア戦略を打ち立て、実行していきたいと考えています。

欧米は2023年度に比べて市場の在庫停滞が一段落し、2024年度は徐々に正常時に向けて動き出すと想定しています。

2024年11月期 売上高・売上総利益率の推移予想

2024年11月期の売上高・売上総利益率の推移の予想です。不採算事業および商品・商流の見直しを継続して行っていきます。また、ASEANでの生産や調達の強化、現地調達の推進により顧客ニーズに応えるとともに、運送費などのコストを抑えて利益改善につなげられるよう取り組んでいきます。

環境への取り組み 「Rideeco(リデコ)」

2023年度のトピックスをご紹介します。まずは、環境への取り組み「Rideeco」についてです。こちらは、中期経営計画の成長戦略の1つとして注力しています。

2023年度は、廃漁網を活用した資材の販路拡大のために、知名度の向上を目指してイベントなどを多数実施したところ、多数のメディアに取り上げられました。

環境への取り組み 2023年度実績・開発商品

スライドには、2023年度の実績と現在開発中の商品を記載しています。

オリックス・バファローズの選手が実際に使用した帽子のアップサイクル活動を開始しました。また、廃漁網を使った資材が「ドクターエア」のマッサージ機や「レクサスコレクション」のアイテムなどにも採用されました。現在、廃漁網の配合率を増やした新たな生地の開発も進めています。

廃漁網以外にも、アパレルの縫製工場で出る端切れを活用した混抄紙「ASUKAMI」にも力を入れています。現在は、アパレル企業ワールドの全ブランドの下げ札に「ASUKAMI」が採用されています。今後は販売先を拡大する予定です。

グループ会社紹介 エース工機株式会社(プロダクト関連事業)

グループ会社のエース工機の厨房機器関連サービスについてです。厨房の換気扇の排気ダクトに取り付けるグリスフィルターの洗浄・交換・配送を行っています。

飲食店などでは、グリスフィルターの汚れを放置すると火災のリスクとなるため、定期的な洗浄が必要ですが、非常に手間がかかる作業です。そのためエース工機のサービスは好評を得ており、プロダクト関連事業の大きな柱となっています。

グループ会社紹介 エース工機株式会社 (プロダクト関連事業)

今後さらなる成長を目指し、新たな拠点の稼働や設備投資に力を入れていきます。2024年度には九州サービスセンターの設備強化を行い、2025年には北海道に新たなサービスセンターを稼働させる予定です。このように、ターゲットの拡大および事業の効率化に努めていきます。

BtoCブランド YOSOOU(アパレル関連事業)

モリトの新たなBtoCブランド「YOSOOU」をご紹介します。ストレッチ素材を使い、スタイリッシュで機能的なダウンウェアを展開します。

こちらは、セレクトショップを中心に日本で人気のダウンジャケットブランドで、昨年事業譲渡を受けました。2023年10月にオンラインショップをオープンし、ポップアップ販売も実施しています。

現在はレディースのダウンウェアがラインナップの中心ですが、今後はさらなる展開を予定しています。ぜひご注目ください。

(参考)メディア掲載情報

こちらのスライドには2023年度のメディア掲載情報を記載しています。ぜひご覧ください。

利益配分に関する基本方針

株主還元策についてです。基本方針には「安定的かつ継続配当の実現」「配当性向は50パーセント以上を基準」「DOE4パーセント基準」の3つを掲げています。

配当金・配当性向・DOEの推移

基本方針に基づき、2024年度の中間・期末配当はそれぞれ1株あたり29円とし、年間配当は1株あたり58円と予定しています。ご説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:不採算事業の見直しの進捗と改善見込みについて

司会者:「不採算事業の見直しについて、現状どのような進捗でしょうか? 今後はどのくらいの改善の見込みがあるのか教えてください」というご質問です。

一坪:為替あるいは材料高などのいろいろな要素が絡むのですが、慢性的に低粗利の事業、あるいは利益率は高いものの諸々の経費を差し引くとそれほど儲かってない事業などを見直しています。

既存商品はほぼ一巡しており、付加価値商材をその価値で買っていただくための営業が大事になってくると思います。また国内の商流は非常に複雑なものがありますので、できるだけシンプルにしていきたいという思いはあります。

事業によっては、例えば自動車の内装品のライン物などは原価低減などの要素が毎年あって、そこまで利益率を上げることができません。あるいはOEMの商材ですと、価格帯が決まっていて、なかなか大きな利益を得ることができないなど、さまざまな要素が絡んできます。これらを大局的に見ながら、改善すべきところを改善していくことになると考えています。

質疑応答:今期の事業別、地域別の見通しと背景について

司会者:「今期の事業別、地域別の大まかな見通しと背景について教えてください」というご質問です。

一坪:これは先ほどご説明したとおりです。事業別では、毎年多少の上下はありますが、アパレル関連事業が約50パーセント、プロダクト関連事業が約35パーセント、輸送関連事業が約15パーセントとなっています。

特に自動車の内装品関係は、みなさまご存知のとおり、現在、日本のメーカーがASEANシフトを進めていますので、中国市場での事業は厳しいと予測しています。そのため、2024年度は北米を中心に強化をしていこうというところです。

質疑応答:政策保有株の売却について

司会者:「前期は投資有価証券売却益が3億円ほどありましたが、今期も政策保有株の売却はある程度見込んでいますか?」というご質問です。

一坪:こちらも随時対応していきたいと思っています。

質疑応答:今後の設備投資の具体的な内容について

司会者:「今後の設備投資の具体的な内容を教えてください」というご質問です。

一坪:あまり具体的にお話できない部分もありますが、アジア市場では、ASEANでの付属品の生産・調達・販売は「アジア戦略」というプランを設けて進めていますので、そちらに付随する投資を行います。

また、廃漁網関係の再生比率の向上についても、それなりの投資が必要だと思っています。M&Aはやると決めてすぐにできるものでもなく、お見合いのようなものですので、積極的に進めていけば当然投資も必要になります。

質疑応答:「Rideeco」の年商について

司会者:「『Rideeco』の年商はどれくらいでしょうか?」というご質問です。

一坪:2023年度の売上実績は5,000万円ほどです。2024年度は1億円程度を目指しています。ただし、こちらは廃漁網に限定した金額になるため、環境対応などのものになると、もっと幅広くあることはご理解いただきたいと思います。

質疑応答:エース工機の売上高・利益規模について

司会者:「エース工機の売上高と利益規模を教えてください」というご質問です。

一坪:売上高は約30億円、営業利益率は約15パーセントです。

質疑応答:「YOSOOU」の年商について

司会者:「『YOSOOU』について、どの程度の年商を見込んでいますか?」というご質問です。

一坪:初年度は2億円を目指しています。

質疑応答:モリトジャパンの再編について

司会者:「モリトジャパンの再編はすべて完了したと理解してよろしいでしょうか?」というご質問です。

一坪:モリトジャパンをアパレル、プロダクト、輸送関連とそれぞれの事業別に会社を分けたことについては完結しています。今後は会社ごとの中身を成長させていきます。

不採算事業はもちろん、さらに改善しないといけないことがあります。現在、グループで19社ぐらいありますが、未来にも統廃合あるいは吸収の可能性は、時代の変化とともに当然発生するというところです。

質疑応答:ROEの目標数値について

司会者:「ROEの目標数値が少し低い気がしますが、どのようにお考えでしょうか?」というご質問です。

一坪:おっしゃるとおりです。2023年度は前年と比べて上がりましたが、社歴116年の中で剰余金がかなり積み上がっています。ROEは、単純に言えば純利益と純資産の計算になってきます。そこからさらに売上や総資産が絡んできますが、できるだけ早く株主資本コストを上回るものにしていきたいと考えています。

早い段階でROE6.5パーセントを達成し、純利益をどんどん上げながら、純資産をあまり増やさないことが重要になると思います。投資もレバレッジを含め検討しながら行う予定ですが、配当性向50パーセント、DOE4パーセント、ROE8パーセントを目指していきます。

質疑応答:今期の第1四半期の暖冬の影響について

司会者:「暖冬の影響は今期第1四半期にも表れていますか?」というご質問です。

一坪:当社の日本市場は12月からですが、他のグループ会社はすでに10月から始まっています。特に今、暖冬ということは、日本国内のことになりますが、そこまで悪いスタートではなかったとは思います。中国の旧正月が2月にありますので、それまでにやはり中国からの調達は早めに行っておかなければなりません。そちらの仕入れと売りのバランスが大事です。

暖冬がどのようになるかということは、気象のことは読めませんが、今までと同じものだけではなく、暖冬にも耐えられるような対応もしていきたいと思っています。

質疑応答:グリスフィルターの年商について

司会者:「グリスフィルターの年商を教えてください」というご質問です。

一坪:グリスフィルターを清掃して再度取り付けるというサービスを含めて、エース工機全体で、売上高約30億円となります。

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