2月1日、日本初のフィンテックラボである「THE FINTECH CENTER of TOKYO, FINOLAB(以下FINOLAB)」が2周年を迎えた。

「日本のFINANCIAL INNOVATIONの推進」を標榜し、2016年2月にスタートして2年、FINOLABを舞台に何が進んできたのか。

FINOLAB(フィノラボ)とは

FINOLABは三菱地所、電通、電通国際情報サービス(ISID)による3社協業事業だ。フィンテックによるイノベーションを生み出す拠点として世界有数の国際金融センターである東京・大手町エリアに2016年2月に開設され、翌2017年2月に現在の場所へ移転してきた。

FINOLABは許認可や法規制、業界慣習などと言った面で、通常のTechベンチャーと比べて起業・成長難度の高いフィンテックスタートアップの創業・成長を支えることを目的としている。また、エコシステムを構築し、グローバルのフィンテックネットワークのハブとなることもめざしている方向性のひとつだ。

2年で4倍に増えた会員数。マネーフォワードは上場、FOLIOは91億円を調達

FINOLAB会員は、フィンテック分野の新規ビジネス創出を目的とする企業会員と、フィンテックサービスを立ち上げ飛躍を目指すスタートアップ会員に種別が分かれている。いずれもナレッジやノウハウ、人的ネットワーク、資金、公的サービスなど、FINOLABがワンストップで提供するリソースを活用することができる。

企業会員にはみずほフィナンシャルグループ(みずほFG)や東京海上日動火災保険(東京海上日動)などの金融機関以外にも中部電力、共同印刷など多彩な業種の10社が名を連ねる。

スタートアップ会員は2018年2月1日の時点で44社。2016年2月の設立当初は「10社も集まるかどうかと思いながらのスタートだった」(FINOLAB広報)というから、目標の4倍以上には増えたことになる。スタートアップ会員に名を連ねているマネーフォワードは、2017年9月29日、東証マザーズに上場を果たした。また、次世代ネット証券FOLIOは2018年1月18日、LINE、ゴールドマン・サックスなどから総額約70億円の調達を実施し、創業2年での累計調達額が約91億円になったことや、LINEとの資本業務提携を締結したことを発表。着実にステージを広げている。

また、企業会員とスタートアップ会員とのコラボレーションもFINOLABを舞台に進み始めているという。

みずほFGの一角であるみずほ銀行は2017年5月、マネーフォワードやマネーツリーの各アプリと連携を開始。7月にはWarranteeが東京海上日動とオンデマンド型保険の開発・提供に関して業務提携すると発表した。9月からは農林中央金庫がAI insideやStudio Ousia等と人工知能(AI)技術を活用した実証実験を開始している。

「公表できる段階には至っていないが水面下でも複数のプロジェクトが走っている」とFINOLAB広報担当者は強調する。

良くも悪くも注目されるフィンテック業界。FINOLABの向かう先とは

FINOLABの会員であることによるメリットを会員企業はどう見ているのか。FOLIO代表取締役CEOの甲斐真一郎氏は次のように話す。

「FINOLABには(運営を担う)ISIDの金融ソリューションの知見とネットワークなどもあり、証券会社を作ろうと動く中で、紹介していただいた方から多くのことを教えてもらうことができた。また、FINOLABは様々な技術を持つ人が集まっているので、情報交換・情報収集にもこのネットワークが役立っている」

FINOLABがめざす方向性のひとつである「エコシステム」の面でも大きな役割を果たしているといえそうだ。

FINOLABでは今後も引き続き、スタートアップ会員・企業会員向けサービスを拡充していくという。また、「国内だけではなく世界各国から、金融・経済政策を担う要人や大使館関係者などが毎週のようにこの場を訪れるようにもなった。日本のフィンテックの情報を海外から求められている」(FINOLAB広報)として、海外に向けにもより積極的な発信を図るとする。第1弾として、この2周年を機に、全編英語のオフィシャルムービーを公開。スタートアップが東京でビジネスをローンチする魅力をPRしている。

FINOLABの運営責任者であるISIDの伊藤千恵氏は今後の展望について次のように述べる。

「この1年のフィンテック業界では、(FINOLABの会員である)マネーフォワードやFOLIOなどから明るい話題があった一方で、コインチェックの事件などもあった。フィンテック業界はこれからより厳しい目でも見られていくだろう。しかし、これは(業界関係者のみならず一般にも)注目されることでもある。まさに関係者が一緒に頑張っていくときだ」

伊藤氏も言う通り、良くも悪くもフィンテックには今後も注目が集まるだろう。そのなかで存在感を見せられるのか。どうフィンテック業界を導いていくのか。FINOLABの今後に注目だ。

LIMO編集部