今年に入り管理職に昇格したという人や、そろそろ4月からの役職が決まるころだという人も多いと思います。やる気にあふれている人も、もしかしたら不安を感じているという人もいるかもしれません。たとえば「課長」になると、それまでとは任される仕事も、仕事相手からの目線も変わるものです。

では、実際に課長職になった人は、課長という仕事には何が必要だと感じているのでしょうか。ビジネスパーソンの話を聞きました。

組織に今までと違う立場から入り込む

大手企業の部長を務めるAさんは、今から約10年前に課長に昇進した際、当時の社長から受けたアドバイスが非常に印象的だったと言います。

「社長に『組織に入れ』と言われたんです。それがとても頭に残っています」

課長になる前も後も組織の一員であることには変わりありません。では、なぜ社長はわざわざこのように言ったのでしょうか。このことをAさんは、Aさんなりに分析したといいいます。

「年数を重ねるとジワジワとわかってくることもありました。結局、会社側なんですよね、課長って。課長になる前だって『会社のため』と思って仕事をしてきたわけですが、それとはまったく違う意味で、会社側の人間と周囲に受け止められる。実際、課長になった途端に部下や後輩が厳しくなりましたし(苦笑)。何をするにも『課長なんですから』と言われちゃう」

それまでいた組織の中から「会社側」に弾き飛ばされ、そこからまた組織に戻っていかないといけない。でも、戻っていくためには前とは違う立場で戻っていく必要がある――そうAさんは感じたのだそうです。

「組織の中にいる人が自分を見る目が変わった。だからこれまでは違う立場になって戻らなければならない」

立場の変化とともに意識の切り替えも必要になるのだといえそうです。

自分より「上の立場」だったらどう判断するか、と考える

大手企業から子会社に出向中のBさんは、先に登場したAさんが語った「違う立場」をこのように表現しました。

「自分の役職より、1つあるいは2つ上の役職のつもりで判断することが大切なのだと思います。たとえば自分が課長だったら部長とか担当役員ならどう判断するか、を考えるのです」

このとき、実際の「人」を思い浮かべるのではない、とBさんは強調します。それはつまり、自分の上司の○○さんならどう考えるか、といった忖度をするという意味ではなく、自分がその部署のその立場だったらどのように判断するかということ。似て非なるものです。

また、Bさんは、課長になって数年たった今、「プレーヤーではなくてマネージャーたれ、と最近になってすごく思います」とも語ります。自分が第一線の主役になるわけではなく、主役になるメンバーのマネジメントをすることの重要性。それをいまBさんは感じているようです。

怖くても人に任せ、自分もマネージャーとして成長する

大手企業のグループ会社で課長を務めたCさんは「プレーヤーとして評価された自分とのギャップ」に当初は悩んだといいます。

「課長にはなったけれど、実際にはプレイングマネージャーで、プレーヤーとしての仕事の方がメインだという人も結構多いんじゃないかと思います。自分がやり続けるほうが効率もいいし、周囲もそれを期待しているかも、と思ったこともありました。でもそれって『仕事を囲い込んでしまう人』『後進を育てない人』と紙一重じゃないですか。自分自身を振り返っても、任せてもらったことに対し自分なりに考え、取り組んで出した成果を評価された部分もあるわけです。いまその立場になって本当に身震いしますよ、自分の上司は怖かっただろうなって(笑)」

マネジメントの立場になれば、自分が評価されてきた仕事を部下に譲るというシーンも出てきます。「譲るのは、とても怖いことです。でも、これができなきゃ会社も回らないんですよね。私もまだまだです。みんなそうですからあまり思い詰めなくてもいいと思います。これからはマネージャーとしての成長を目指していこう、というくらいのつもりがいいんじゃないでしょうか」

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回お話を伺った人々は、これまでとは違う立場になり周囲の見る目も変わるなか、戸惑いつつも試行錯誤をしながら自分らしいマネジメントの方法を見つける努力をしているように感じられました。実際にやることは違えど、そのアプローチはこれまで取り組んできた仕事と同じ、ということなのかもしれません。

LIMO編集部