突然降り出した雨、仲間4人に傘1つ。あなたならどうする?

コミュニケーションにおけるこころのあり方

傘を握りしめ、ずぶ濡れで全力疾走する女子大生

どしゃぶりの雨のなか、若い女性がずぶ濡れになって全力疾走しています。手には、傘を握り締めていました。突然、降り出した雨。ずぶ濡れになっている人は他にも大勢いましたが、傘を持っていながらずぶ濡れという人は彼女くらいでしょう。

ずぶぬれの女性は大学生で、仮にA子と呼んでおきます。授業のあと友人の女子大生3人とともに帰宅しようとしていたところに、雨が降り出しました。友人3人は、傘を持っていません。雨宿りのつもりで、学校近くの喫茶店に入りました。

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コンビニも百均ストアもない時代のことです。近くに傘を売っている店もなければ、一度の雨のために傘を買う余裕もありません。新品であれば最低でも1つ1000円はした時代の出来事です。

1つの傘を、4人で平等に利用するための算段

雨は一向にやむ気配がみえません。いつまでも喫茶店に居続けることもできず、どうやって駅まで行くかの算段が始まりました。喫茶店から駅までは徒歩10分ほどの距離。1本の傘に4人全員が入って歩けば、全員がずぶ濡れになります。

B子が言いました。

「じゃんけんをして勝った人がA子の傘に入れてもらい、あとの2人は濡れて行くしかない」

C子は、B子の案に異議を唱えました。

「持ち主のA子が一人でさしていけばいい。傘を持ってこなかった私たちが悪いんだから、濡れて行くしかないよ。じゃんけんで決めるより公平だと思う」

C子の案には、A子が厳として首を縦に振ろうとしませんでした。

全員が濡れない案より、全員で濡れる案を選択

ゲームか推理小説の謎解きであれば模範解答だったかもしれない案を出したのは、D子です。

「まずA子ともう一人が駅まで傘をさして行く。で、一人が喫茶店まで引き返し、もう一人を連れて駅まで行く。もう1回同じことをすれば、全員がずぶ濡れにならずに駅まで行けるわ」

D子の案には「賢い!」という声はあがったものの、聞き流されてしまいました。そのまだるっこさから、非現実的だと判断されたのでしょう。

最終的に採用された案は、全員が傘をささずにずぶ濡れになって駅まで行くことです。提案者は、傘の持ち主であるA子でした。

困ったときは皆で困る”コミュニケーション”

後年、全員で濡れる選択をした理由をA子に尋ねたことがあります。

すると「困ったときは皆で困るほうがいいかなと思ったから」とのことでした。A子は何事にも、器用に立ち回ることのできる人ではありません。欠点もたくさんありますが、現在まで誰一人、悪意を持った評価をA子に向ける人はいません。

コミュニケーションはスキルやテクニックの面から語られることが多いのですが、A子を思い出すたび、しっくりこないものを感じないでもありません。仲間4人に、傘一つ。あなたならどうしますか?

間宮 書子

ニュースレター

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國學院大學法学部卒業。法律系出版社、弁護士事務所勤務を経て、現職に。
ビジネス法務を中心に、ビジネス全般、旅やエンタメなど広く取材・執筆に従事。
現在は埋もれていても100年後に大化け、通説となるようなネタを求めて活動中。