株価急落をもたらした2つの米国発ショック。さらにもう1つのリスクとは?

利上げ観測、貿易戦争懸念に揺れる市場と燻るロシア疑惑

先週の米金融市場はパウエル・ショックとトランプ・ショックの2つの大きな衝撃に飲み込まれて大混乱となりました。ただし、この2つのショックを超える衝撃的なリスクが待ち構えている兆しも見え隠れしています。

一体何が起きているのか、今回はそれぞれのショックのポイントを整理してみました。

パウエル・ショック~株価急落も「我々の仕事ではない」

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は2月27日、下院での議会証言に臨みました。

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公の場に初めて登場したこともあり、どんな発言をするのか関心も高まっていましたが、強気な経済見通しやインフレ目標達成へ自信を示したことから、市場は金融の引き締めに積極的なタカ派寄りのスタンスと受け取ったようです。

同議長は、年3回以上の利上げの可能性について聞かれ、「昨年12月と比べて景気見通しは強まっている」と応じたことから、年4回の利上げの可能性がクローズアップされています。

こうした中、3月1日にはニューヨーク連銀のダドリー総裁が「年4回の利上げでもペースが緩やかだ」と発言したことも利上げペースの加速観測を強めたようです。

議会証言では、株式市場に対するやや冷淡なスタンスも話題となりました。2月5日に就任したパウエル議長はいきなり過去最大の下げ幅となる株価の急落に見舞われましたが、金融市場が荒れていることについて、「大きなリスクではない」との認識を示したからです。

さらに、3月1日の上院での議会証言でも「株価は下がるより上がる方がいいのではないか」との質問に応え、「その通りだが、株式市場で誰かが損するのを止めたり、誰かが得するようにしたりするのは、我々の仕事ではない」と述べています。

「グリーンスパン・プット」という造語に象徴されるように、近年のFRB議長は株式市場にやさしい存在として知られています。パウエル議長が市場からやや距離を置く姿勢を示したことに、これまでの議長との違いを感じたのかもしれません。

トランプ・ショック~貿易戦争に「勝つのは簡単」

一方、トランプ大統領は1日、鉄鋼に25%、アルミ二ウムに10%の関税を課す輸入制限措置を取る方針を明らかにしました。

今回の措置は中国が標的と見られていますが、ロス商務長官が「どの国も例外ではない」との考えを示しているほか、これまでの経緯や実際の貿易活動を踏まえるとピントがずれている恐れがありそうです。

鉄鋼やアルミ産業を米国内に再建することは、大統領選挙中からのトランプ氏の公約であり、中国のみを対象にしても公約の実現にはほど遠いと考えられるからです。

たとえば、鉄鋼の輸入先はカナダが16%で最大、ブラジル、韓国、メキシコが続いており、中国は11番目、全体に占める割合はわずか2%です。

したがって、関税保護による鉄鋼業の復活を本気で目指すのであれば、北米自由貿易協定(NAFTA)離脱も現実的な選択肢となりそうです。

今回の関税措置に対し、中国からは「相応の措置を取り権益を守る」、カナダからも「労働者と企業のために立ち上がる」と報復の声が世界各地から次々と挙がっており、世界的な貿易の停滞が懸念されています。

また、EUは米国からの輸入品に対し25%の報復関税を課すことを検討中としていますが、トランプ大統領はEUが報復した場合には米国も報復関税で対抗するとの考えを示していますので、貿易戦争が過熱する公算も小さくないようです。

トランプ氏は2日、貿易戦争は有用であり「勝つのも簡単」と述べていることもあり、報復合戦となっても一歩も引く構えがないようです。

くすぶるロシア疑惑~モラー氏解任なら政権崩壊の危機も

2月上旬から始まった世界同時株安に話題をさらわれてしまいましたが、ロシア疑惑の捜査も進展しています。

最近では、大統領選挙でトランプ陣営の選対本部長だったポール・マナフォート被告の側近を務めていたリック・ゲイツ被告が2月23日に司法取引に応じたことが注目されています。

トランプ陣営から訴追を受けた4人のうち3人が司法取引に応じており、前米大統領補佐官のフリン被告、外交政策顧問を務めていたパパドプロス被告が既に司法取引に応じています。

モラー特別検察官はトランプ氏周辺の人物に焦点を当てて捜査を進めていますので、司法取引の成立はトランプ氏を含む政権中枢部へと捜査が進むことを匂わせているといえるでしょう。

側近のゲイツ被告が司法取引に応じたことで、司法取引を拒み続けているマナフォート被告の態度に変化があるのかどうかが注目されています。

また、フリン被告の後任に抜擢されたマクマスター大統領補佐官の辞任観測が飛び交っています。同補佐官は2月、ロシアの大統領選への介入は疑いないと主張したことでトランプ大統領との確執が深まったとされており、事実上の解任とみられています。

こうした中、1月下旬にはトランプ大統領が昨年6月、モラー検察官の解任命令をいったん出したものの、その後周囲の説得で思いとどまったとの報道が流れています。モラー氏解任のうわさはくすぶり続けているようです。

モラー氏は大統領選挙へのロシアの関与とトランプ陣営の共謀を捜査していますが、昨年6月にトランプ大統領の司法妨害に関しても捜査していることが明るみに出ています。

モラー氏の解任は、身内である共和党内からも「超えてはならない一線」とされており、解任に踏み切った場合には政権は基盤を失うことになりかねません。

ロシア疑惑は依然としてトランプ政権を大きく揺さぶる可能性を残している模様ですので、引き続き注視が必要となりそうです。

投信1編集部

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