最低賃金が給料を決める時代

小規模事業者の賃金アップという現象

最低賃金は年々上がり続けている

最低賃金という言葉を、誰でも一度は聞いたことがあると思います。今ではいろいろな役所にポスターも貼ってあり、完全に市民権を得た感があります。その最低賃金とは、労働者を雇用する際に、最低限支払うべき賃金を時間給で表したものです。

ちなみに、東京都の平成29年10月1日に改定された最低賃金は958円で、過去最高の金額です。私が学生時代に飲食店でアルバイトしていたときの東京都の最低賃金は720円程度で、実際の時給は約900円でした。

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その当時の最低賃金といえば、その存在すら忘れるくらいに低いもので、普通の時給の相場で募集していれば当たり前のように最低賃金を上回っているのが通常でした。当時、最低賃金でアルバイトを募集しても、まず1人も応募がこなかったでしょう。

しかし、最低賃金は年々上がり続け、東京ではとうとう950円を突破し、今後も上がって行く見込みです。いまでは個人経営の飲食店などを中心に、アルバイトの時給を決める際に最低賃金は無視できない存在になっています。

町でアルバイト募集の張り紙を見ていると、最低賃金を10円単位で切り上げて時給を設定しているケースが多いようです(本当は最低賃金そのままで時給を設定したいところでしょうが、それではあからさまだからでしょうか)。たとえば、東京都は958円なので960円、埼玉県の871円のようなケースだと880円といった感じです。

埼玉県のように切り上げ幅が大きいと、雇う側の負担も大きくなります。その前の最低賃金が849円でしたので、時給850円とすると、最低賃金の改定が理由で30円の時給アップです。

月間のアルバイト全員の労働時間合計が200時間とすると、月間で200時間×30円=6,000円、年間で72,000円の給与アップとなり、残業代や労災などの保険料への影響も考えると、雇う側にとっては結構な負担増になります。

最低賃金の計算方法

最低賃金は、1時間当たりいくらといった形で定められていますので、アルバイトのように時給の場合は、そのまま比較できます。しかし、ここまで最低賃金が上がっていますので、月給の場合でも最低賃金を下回っていないか確認の必要がありそうです。

月給制の場合は、まず1か月の所定労働時間を確認します。簡単な例として、週休2日のみ休みの場合は、年間労働日数は365日÷7日×5日=約260日となります。1か月に換算すると260日÷12か月=21.66日となります。1日8時間勤務の場合は、21.66日×8時間=173.33時間となり、これが1か月の所定労働時間です。

実際は就業規則や雇用契約書などに明記されている休日の日数をカウントして所定労働時間を計算します。

あとは、月給を1か月の所定労働時間で割れば、1時間当たりの金額が分かります。たとえば月給18万円、1か月の所定労働時間173.33時間の場合は、1時間当たり1,039円となって、最低賃金をクリアしています。

大企業であれば、初任給が20万円を超えることも珍しくないので、最低賃金を考える場面はありませんが、個人経営のお店などでは、フルタイムで雇うとしても最低賃金を下回らないように月給を設定しているケースもあります。

小規模な事業者を中心に、期せずして(?)官主導による賃金アップが実現しています。生産性向上も叫ばれている中、なるべく業務を効率化して、最低賃金の上昇分は労働の省力化でカバーしなさい、という政府のメッセージなのかとも思ってしまいますが、それはさすがに考えすぎでしょうか。

渋田 貴正

ニュースレター

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渋田 貴正

税理士・司法書士・社会保険労務士

東京大学経済学部卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。